てんちゃんのビックリ箱

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名古屋フィルハーモニー第512回定期演奏会 

2023-05-17 22:02:48 | 音楽会
 連休明けに久しぶりにオーケストラが聴きたくなって、内容に関係なく探したら表記演奏会のチケットを入手することが出来た。
  
  場所:愛知県芸術劇場 コンサートホール 
  月日:2023年5月12日
  対象:名フィル第512回定期演奏会〈継承されざる個性〉
  [プログラム]
  ・バルトーク:ルーマニア舞曲 Sz.47a, BB 61
  ・バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112, BB 117*
  ・クセナキス:ノモス・ガンマ
  ・ラヴェル:ボレロ
 ​ 指揮者 : 井上道義 
  名古屋フィルハーモニー交響楽団
  バイオリン:服部百音 

<チラシの内容>



 購入した時にぱっと思ったのは、井上道義だからきっと面白い、服部百音さんの顔と演奏に興味で、クセナキスは知らないけれども、ボレロをやるのならば安心という感じだった。「継承シリーズ」の一環ということで、何とかなるでしょっと思っていたら、演奏会2日前に、「継承されざる個性」という副題に気付き、ドキッとした。[されざる]・・・とは?
 演奏会後に、その意味がよくわかった。

第512回定期演奏会〈継承されざる個性〉
場所:愛知県芸術劇場 コンサートホール
[プログラム]
・ バルトーク:ルーマニア舞曲 Sz.47a, BB 61
・バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112, BB 117*
・クセナキス:ノモス・ガンマ
・ラヴェル:ボレロ
指揮者 : 井上道義(指揮) 
バイオリンソリスト:服部百音
オーケストラ:名古屋フィルハーモニー交響楽団

 このプログラムは、井上さんによれば、百音さんがバルトークのヴァイオリン協奏曲を演奏したいとおねだりしたので、最初にバルトークでもややとっつきやすい小品を置き、2曲目に百音ちゃんとダンスを踊り、3曲目はもっと現代的に跳ね返りの曲を置く。最後に万人好みのボレロで口直しをしてもらうという趣向だったそうだ。
 一応我々の席は、前から5列目のやや右側。百音さんが指揮者を見るとき、ちょうど私達を向く場所だった。

<指揮者とソリスト お爺さんと孫のよう>
百音さんのtwitterより
https://twitter.com/HattoriMone?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor




1.バルトーク:ルーマニア舞曲 Sz.47a, BB 61
 バルトークは出身地のハンガリーからルーマニア近辺の民謡の収集に熱心に取り組んだとのことだが、それはブラームスがハンガリーでその地域の曲を調べ、実はジプシーの曲をハンガリーの曲と勘違いし、有名なハンガリー舞曲を作曲したことによる。
 不思議なメロディのソロから入り、東欧の民族音楽風だなと思いつつも、現代音楽ぽいメロディも入り、またいろいろなテンポで確かに舞曲調だなとおもいつつけむに巻かれて数分で終わった。

2.バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112, BB 117*
 1で、バルトークって難しいなと思っていたら、この曲はより大変だった。
 確かに民族音楽風のメロディもあるが、12音階的な音の移動もある曲で、なんだか難しい。
 それよりも指揮者の井上さんの立ち位置のごく近くに、ぶつかりそうに百音さんが立っている。こんな位置関係は初めて見た。曲が始まるととても難しいメロディラインを百音さんがガンガン弾いて、音を井上さんにぶつけてくる。ほとんど井上さんを見ている。
 井上さんは、同様に難しいメロディラインのオケ版を彼女にさあどうぞと返している。
 彼女は確かに技巧的に高く、若さとエネルギーでこの難局を弾きたいと、ランニングパートナーとして、井上さんにお願いしたのだなと思った。
 情緒を狙った曲ではなく、何を意味しているかわからないメロディをヴァイオリンとオケが交換し合って盛り上がる作品だなと思って聴いていると、第3楽章になって百音さんがのってきたのか、井上さんのほうに2~3歩歩み寄り井上さんがぶつかるのっを避けるため後ずさりするというのを3回ほど繰り返した。
 この音楽が終わった時に最も高揚していたのは百音さんで、オケに丁寧に挨拶し、井上さんに軍隊式の敬礼を行った。多分オケと井上さんに支えられて、難曲を弾ききったのがうれしかったのだろう。

<百音さんの井上さんへの敬礼>
百音さんのtwitterより
https://twitter.com/HattoriMone?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor





3.クセナキス:ノモス・ガンマ
 クセナキスは建築家出身の現代音楽家で、孤高の作曲家であるとのこと。ノモス・ガンマは本来はアリーナ同心円状にオケメンバーと聴衆を配置し、アリーナのいろんな所から音が出てくる状況で演奏する曲である。海外の演奏状況をyoutubeで見ると、アリーナにオケメンバーとその2~3倍の聴衆を並べ、その中央で指揮者が指揮をしている。
 それを、通常のコンサート会場で実施するのは難しいと、ステージの上で同心円状に楽団員を配置して演奏するようにしている。そのステージを観客席から見ることとなる。これは寧ろ我々のようなステージ近くよりも離れた2階席や3階席のほうが有利。ステージ近くでは、後ろを向いた楽団員のお尻、そして指揮者は人ごみの向こうに挙げられた手しか見えなかった。

 始まるとさすが現代音楽。でもやっていることはよくわかる。ステージ上が音を発生する空間となり、いろんな位置から、リズムや音が飛びだしてくる。もし聴衆として同心円に入っていれば、さながら音の森の中で、遠くからメロディが流れたり、いきなり後ろのパーカッションが轟音をならしたり・・・ そういった音の受けわたしを感じるだけでも楽しいだろうな。
 進行は8つのパーカッションで、それが合奏したり、カノンの様にずれて動いたりしていて、パーカッションを追っかけるだけでも面白い。メロディの意味を考えるよりも存在だけで楽しくなる。

<ノモス・ガンマのステージの状況>
井上さんのHPより
https://www.michiyoshi-inoue.com/2023/05/_512_1.html#blog



4.ラヴェル:ボレロ
 クセナキスのそのままのステージ構成で、ボレロを演奏する。
 ボレロはそのオケの金管の実力がでるので、たいへん。約40年前のフィルの情けないころのことを思い出しながら聴いた。一応だいぶ実力は上がったけれども、やはり怪しいところもある。ソロの演奏で曲自身がポピュラーすぎるから、演奏者は大変だ。
 今回のステージ構成は、ボレロ演奏でも魅力ある事がわかった。やはり音がそこかしこに飛ぶと楽しい。
 そして確かに、なんだかわからない曲の後に、このシンプルで盛り上がる曲をおいたら聴衆にとってだけでなくオケメンバーにとっても耳なおしい、口直し、腕なおしになったことだろう。

5.おわりに
 〈継承されざる個性〉という言葉がよくわかった。バルトークやクセナキスのひと癖ある個性は、継承が難しいし、ラベルのアイデアも継承が難しい。
 井上道義は来年引退するようだが、彼のウィットに富んだ個性も継承が難しい。でも日本の音楽に携わるひとが皆で協力して、継承してもらいたい。
 

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2 コメント

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コンサート (takan32)
2023-05-21 07:30:57
てんちゃんへ、私のブログにいいね!をありがとうございます。
ヴァイオリンの曲をどれにするかをソリストと一緒に考えたり、ソリストの意向を尊重して選曲することもあるんですね。
いい一日になったと思います。(^ ^)
返信する
カンサンさん (てんちゃん)
2023-06-02 00:29:45
コメントありがとうございます。

なかなか面白い一味違ったコンサートでよかったとおもいます。
ただ、後半にああいった設営をする場合は、前列は全体が見えにくくなるので不利です。そして遠くのほうが、全体を見通せて得なはずです。だから例えば全席同じ金額にするとか、考えたらいいのではと思います。
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