大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

GM、医療保険の提供を中止

2019年09月20日 | 経済

 ワシントンポストによれば、GMはストライキを理由に労働者への医療保険の提供を中止した。

 アメリカの医療費はきわめて高額なため、医療保険がなければ医療機関にかかることは難しい。

 アメリカには、企業提供の医療保険の資格を一時的にみたさなくなった労働者に暫定的に医療保険を提供するCOBRAという法律がある(1986年成立)。

 しかし、COBRAの提供を受けるにはふつう医療保険料の支払いが必要となる。

 私がしるかぎり、ビッグ3でおこなわれたストライキ期間中、医療保険の適用が中止されたのはこれがはじめて。GM側の強硬姿勢がみてとれる。

 このブログでさきに書いたように、UAW首脳への汚職捜査を遅らせるというのがストライキの背景にあるなら、GMの強硬姿勢もあってストライキはおもいのほか長期化する可能性がでてきたようにも思われる。 

 推移を引き続き注視していきたい。

PS:ストライキの前、GMはUAWに対し、労働者が支払う医療保険料(日本とことなり企業ごとに負担割合は異なる)を現在の総コストの4%から15%に引き上げることを提案。UAWから拒絶されている。

 

2019/9/23追記

   2019/9/22(日)、民主党の大統領候補バイデン氏、ウォーレン氏、サンダース氏がストライキ中のGM工場前でおこなわれているUAWのピケットに参加した

2019/9/28追記

 ストライキがはじまってから11日目の2019/9/26(木)、GMは各方面からの批判をうけスト中も医療保険を提供すると発表した。 

 

(関係論文)

2013年,「高度経済成長末期におけるアメリカ3大自動車メーカーの経営状況と労使関係」,『立命館産業社会論集』第49巻第3号, pp.1-12

2009年,「フォード自動車における労働条件引き下げの実態とその影響:2009年におこなわれた労働協約の改訂を中心にして」,『立命館大学産業社会論集』,第45巻第2号, pp. 1-14


アメリカ企業、新役員の40%が女性に

2019年09月18日 | 経済

 欧米で女性の役員への登用が進んでいる。

 ウォールストリートジャーナルによれば、2019年第2四半期、ラッセル3000(米上場企業トップ3000社)の取締役会における女性比率は前四半期より1%増加して20%に上昇した。

 また同紙によれば、S&P500で唯一女性役員がいなかったCopart社は2019年7月、女性を役員に登用。これでS&P500で女性役員がいない会社は皆無となった。

 WSJ紙によれば、2019年第2四半期に登用された役員の42%は女性で、これからも役員にしめる女性比率は上昇がつづきそう。

 

カリフォルニア州、女性役員の義務化の期限迫る (2019/8/14)

アメリカ最大の自動車メーカーGM、取締役会の過半数が女性に: 自動車メーカーで初 (2019/4/19)

ドイツ、監査役会の30%以上を女性にすることを義務づけ (2015/3/8)

日本の金融機関でも女性トップが誕生 (2014/3/12)

女性初の銀行トップ(CEO)が誕生 (2013/1/5)


UAW、GMでストライキに突入

2019年09月16日 | 日記

 2019年9月15日(日)、UAW(全米自動車労組)GM全工場でストライキに突入した。

 ブログで紹介しているように現在、UAW役員の汚職捜査が進展している。

 デトロイト・ニュース(2019/9/12)は、UAW現会長ガーリー・ジョーンズ氏と同前会長デニス・ウイリアムズ氏も捜査対象になっているとしている(両氏の自宅は先日、家宅捜査をうけている)。

 労使関係の研究者ジェーン・スローター氏は、こうした疑惑を打ち消そうとしてUAWがストライキに打って出る可能性を指摘していたが、そのとおりになった。

 私自身20年以上にわたってUAWの動向を詳しくみてきたが、交渉がはじまったばかりのこの時期にストライキに入る理由はほかにどうしてもみつけることができない(争点が定かでなく、交渉が行き詰まったわけでもない)。

 ちなみに、これまでの交渉でGMは以下の提案をおこなっている。

1) 8000ドル(85万円:1ドル=105円)の協約締結一時金を支給する。

2) 賃上げをおこなう(金額はこれから交渉)。

3) 利益分配制度(純利益に自動連動してボーナスを支給する仕組み)を改善する。

4) 医療保険の負担は現状維持(新たな負担はもとめない)。

5) 4州8工場などに総額70億ドル(7.3千億円:1ドル=105円)を投資して雇用を守る。

6) デトロイト・ハムトラック工場に電動トラック、ローズタウン工場に電気自動車用バッテリー・セルの生産を割り当てる(雇用を守る)。

 一方、UAWは、賃上げ、雇用確保とならんで、古参労働者と新規採用者の賃金・雇用保障格差の是正、COLA(インフレ率に連動して給与を自動で上げる仕組み)の完全復活などを求めている。

 オートモーティブニュース紙は、販売減速などによりGMには通常より多い77日分の在庫があるとしたうえで、ストライキがおこなわれると1日当たり5千万ドル(50億円)程度の損失が発生するとしている。

 

UAWの元GM担当役員が汚職で有罪認める (2019/9/10)

UAW元役員、FCAからの不正な金品受け取りで懲役刑 (2019/8/6)


8月の米・コアCPI、2008年10月以来の高さ

2019年09月15日 | 経済

 2019年9月17日(火)-18日(水)、米連銀(Fed)の金融政策を決定するFOMC(公開市場委員会)が開催され、0.25%の利下げがおこなわれるとみられている。

 その理由のひとつが低インフレであるが、9月11日(水)に発表されたCPI(消費者物価指数)気になる数字がでた。

 アメリカの8月のCPI前年比1.75%のプラス。FOMCが上限目標とする2%には届かなかった。

 しかし、価格変動の激しいエネルギーと食品を除いたコアCPI前年比2.39%となり、2008年10月以降でもっとも高い数字になった。

 とくに上昇が目立つのが家賃(持ち家含む)医療関係

 利下げが続くと、住宅需要を押し上げ家賃のいっそうの上昇をもたらしそう。

 医療などサービス業は、輸入で代替することができないため、賃金上昇の影響を受けやすい。アメリカでは3%を超える賃金上昇が続いており、医療などサービス業の価格にはこれからも上昇圧力がかかりやすいと思われる。

 エネルギーと食品についても、今後上昇の可能性がある。

 エネルギー価格については、2019年9月12日にIEA(国際エネルギー機関)がアメリカ、ノルウェー、ブラジルなど非OPEC加盟国の生産量が増えているため2020年には原油供給が過剰になるという予想をだした。

 それでも、2018年11月から2019年2月にかけてガソリン価格が大幅低下しているため、(1年前の価格と比較するため)今年の11月から2月ぐらいまでエネルギー関係のインフレ率が上昇することがみこまれる。

 また現在は、米中貿易摩擦により農作物が行き場をうしない大量にアメリカ国内にでまわり、食品価格を低下させている。

 しかし、中国が米国産農作物の輸入を拡大するようなことがあると、食品価格の上昇がみこまれる。実際この数日、中国が米産大豆の購入拡大を決定し、米産大豆価格が上昇するということがおこっている。

 FOMCのあとにおこなわれる会見で、パウエルFRB議長がこうしたインフレ傾向についてどのような見解をしめすのか注目される。


サンフランシスコ、警察の顔認証の利用を禁止

2019年09月13日 | 経済

 少し前の話になるが、2019年5月、サンフランシスコは警察やその他の行政機関が顔認証システムを利用するのを禁止した。

 近年、世界で捜査などの目的での顔認証システムの利用が進んでいる。

 有名なのは中国の顔認証システムであるが、先日の香港のデモでは人々が顔認証カメラで特定されることを恐れて顔をかくしている様子が世界中に報道された。

 アメリカでも被疑者の捜索に顔認証カメラを利用する動きがおこっているが、AIによる人物特定は完ぺきにはほど遠く、誤認逮捕や冤罪をひきおこすとの批判がでている。

 人々の日常をその気になればいくらでも監視できてしまうのは怖い。

 こうしたなか、ITで世界の最先端企業が集中するサンフランシスコは警察などが顔認証システムを利用するのを禁止することを決定した。

 ニューヨークタイムズによれば、同様の規制がオークランド(カリフォルニア州)やサマービル(マサチューセッツ州ボストン郊外)などでも考えられている。

 オリンピックを契機に、日本でも顔認証システムの導入が進みそうだが、日本ではあまり批判をきかない。プライバシーをどのように保護していくのか、気になるところである。