大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米下院、新型コロナ感染者の救済法案を可決

2020年03月14日 | 経済

 アメリカで新型コロナウイルスの感染が拡大し続けている。

 2020年3月12日(木)の午後4時の時点で、1629人の感染者が確認されている(ダイヤモンド・プリンセスおよび武漢からチャーター機で帰国した人除く)。

 これをうけ米議会は先週、新型コロナ対策のため83億ドル(9兆円:1ドル=110円)の緊急予算を承認(おもに医療支援のための費用)。

 さらに米下院は2020年3月13日(金)の深夜、新型コロナウイルスに感染した人を経済的に救済するための法案を364対40で可決した

 そのおもな内容はつぎのとおり

1)新型コロナウイルスの検査を誰でも無料で受けられるようにする(無保険者含む)

2)労働者が新型コロナウイルスに感染して隔離、治療をうける場合、あるいは新型コロナウイルスに感染した家族を介護する場合、企業は14日の病欠休暇を与え、そのあいだ通常の賃金の2/3以上を支払わなければならない

3)新型コロナウイルスのため学校が閉鎖され、そのため保護者が休業しなければならくなった場合も上の規定を適用する

4)アメリカの労働者は、病気、介護、育児などを理由として1年あたり12週間の無給休暇を取ることができる(家族医療休暇法)。今回、従業員500人未満の企業ではたらく人が新型コロナウイルスに感染した場合、12週間まで通常賃金の2/3の手当を支給することにする(1年間)。

5)企業に対しては、企業が労働者に支払った休業手当と同額を税額控除(税金を減額)する。

6)現在、3600万人のひとが貧困のため政府から食費援助(フードスタンププログラム)を受けている。食糧援助を受け続けるには扶養家族がない場合で週20時間以上の就労が必要などの条件があるが、これを一時的に無効にする。

 この法律は来週、上院で可決される予定になっている。

2020/3/19追記

 2020年3月18日、米上院は90対8で上記の法案を可決。同日、トランプ大統領が署名し法案が成立した。


GM、画期的なバッテリーを開発

2020年03月05日 | 経済

 2020年3月4日(水)、GMは今後5年間に電気自動車自動運転200億ドル(2.2兆円:1㌦=110円)を投資するとともに、来年に韓国のLG化学と共同で開発した画期的なバッテリーを搭載した電動自動車を発売すると発表した

 GMが明らかにした新型バッテリー航続距離は400マイル(640キロ)とガソリン自動車とほぼ同じ。

 生産コストも、ガソリンエンジンを下まわるキロワット時100ドル以下とされている。

 電気自動車はガソリンエンジンにくらべモーターの構造は簡単(低コスト)であるが、バッテリーの価格が高いため、ガソリン自動車より価格が高くなっていた。新型バッテリーはこの価格差を解消すると期待されている。

 GMはオハイオ州にあるLG化学との合弁企業(投資額は23億ドル=2500億円)で新型バッテリーを生産する。

 新型バッテリーは来年発売されるハマー EVをかわきりに、シボレーSUV、ビューイックSUV、キャディラックなど高価格帯の自動車に順次搭載される予定となっている。

 電気自動車がガソリン自動車と同じ値段になれば、補助金がなくても電気自動車を求める人が増えるに違いない。

 ハマーEVの売れ行きがどうなるか注目したい。


ゴールドマンサックス、2020年の米企業利益予想を下方修正

2020年03月02日 | 経済

 アメリカで新型コロナウイルスの影響で企業利益の予想を引き下げるうごきがでてきた。

 新型コロナウイルスの感染拡大により世界中で、①外出をひかえることによる消費の低迷、②中国からの部品輸入の停止による生産停滞、③中国への輸出減少、④それらをうけての投資抑制、がおこりつつある。

 このため、アメリカではこれまでは今年の企業利益が前年比10%程度上昇するとの予想が多かったが、新型コロナウイルスの影響で予想を引き下げるうごきがでてきた。

 たとえばニューヨークタイムズによると、強気でしられるゴールドマンサックスは2020年のS&P500企業利益を前年比6%プラスから0%に引き下げた。 

 パウエルFRB議長は2月28日(金)に3月に利下げすることを強くにおわす発言をしているが、利下げをしても感染をおそれた外出の手控えを減らすことはできないし、部品供給を回復させることもできない。

 一番効果がある経済対策は、利下げや景気刺激でなく新型コロナウイルスの感染拡大をとめることだとする意見はアメリカでも少なくない。

 アメリカで新型コロナウイルス対策は、大統領選挙の大きな争点にもなりつつあり、この対応に間違えるとトランプ大統領の再選がなくなる可能性がでてきた。

 アメリカ経済の動向に引き続き注意していきたい。