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福井でコンカベナトール:特別展「スペイン奇跡の恐竜たち」その2


コンカヴェナトルの実物化石のエリアは照明が暗めだったが、これはスペイン側の指示で照明も抑え、温度、湿度とも低めに保っているということである。セキュリティ面も含め厳密な管理ができる国として信頼してもらっているわけなので、致し方ない。尺骨の羽軸こぶのような微妙な構造は、適切な方向からの照明で初めて見えるようなものなので、撮影は難しい。撮影の角度を工夫して一応撮れたが、論文や図録の写真の方が明確である。頭骨も真上から見ることはできないので、鼻骨の4個の孔などは図録の写真の方がはっきりわかる。



ところで、特徴の一つである後眼窩骨の大きな突起は、ホロタイプでは眼窩の上部を一部覆うように垂れ下がっている。復元キャストでもその通りに作ってあるが、これは圧力による変形で、元々はもっと側方に向かって張り出していたということはないだろうか。他のカルカロドントサウルス類にみられる「ひさし状」のsupraorbital shelfはそうなっている。マプサウルスでは眼瞼骨palpebralが水平よりも少し下がった「ひさし状」になっている(ギガノトサウルスの記事に書いてある)。それならば眼に入る直射光の眩しさを防ぐためと理解できるのではないか。と思っていたら荒木さんの公式フィギュアでは、ややそれに近い感じに作られているようにも見える。同じようなことを考慮されたのかもしれない。



奇跡の恐竜たる所以の一つが、皮膚などの軟組織の痕跡である。後肢の指には爪と肉球(肉趾)の跡がはっきりと観察できる。第5中足骨の脇には大きめのウロコの痕跡が残っていて、誰の目にも明らかなほどである。



また尾椎の先端部分は、体の他の部分とは上下が逆になっているが、これは最初の頃に反対側からクリーニングしたためであるという。その先端部分の腹側には、大きなウロコの跡がはっきりと保存されている。しっぽが羽毛でふさふさではなくて、本当によかった。



現在研究中で、今回の図録にも載っていない最新情報として、この肋骨の内側の腹腔内に何らかの動物の尾椎がある、という。その種類や消化された跡があるかどうかなどを含めて研究しているとのことであった。
 下顎は失われたわけではなく、まだ母岩に埋まっている状態ということである。なぜクリーニングされていないのかよくわからないが、技術的あるいは時間的な問題だろうか。スペインではフル記載を目指して今まさに研究中で、数年以内にはモノグラフが出版されるだろうということである。
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