北海道 十勝の深掘り
全国の読者の皆様に、「北海道十勝ってどんなところ?」の疑問に深掘りしてお伝えしてまいります。
角ない乳牛生まれます
北海道新聞 2021/04/09
シェネテイクス北海道精液開発
切除ストレスを回避
家畜改良事業の一般社団法人ジェネティクス北海道 (札幌)は、角が生えない無角の乳牛が生まれる精液を発売した。精液から生まれた子の能力を証明する検定を受けた種牛の精液の流通は国内初。乳牛の角はけが防止や作業員の安全のために切除されるが、痛みで牛にストレスがかかる。欧州では動物福祉の観点から批判されており、国内でも関心が高まっていることを踏まえて開発した。
乳牛は雌雄に関係なく角を持つが、子牛のうちに刃物や焼きごてで角を取る。
ただ角には神経や血管があり、痛みのストレスで餌を食べられなくなって成長が停滞する牛も多い。
同法人が1日に発売した精液は「エクセルシアGHカイザーET」と「デイベロツプ ミスターP ET」の2頭の種牛のもので、いずれも角が生えない 「無角遺伝子」を持つ。
カイザーの子は必ず無角牛になる。ミスターPの子は50%の確率で無角になり、カイザーに比べ乳質などで能力が高くなる。価格は非公表だが、精液の中心価格帯(千~3千円)と同程度という。
同法人によると、突然変異で無角牛が生まれることは知られていたが。子の乳量が少なく、種牛として使いにくかったという。そこで、同法人は2013年から無角牛を能力の高い牛と交配。カイザーとミスターPは検定で、子の乳量の多さや乳質などで十分に経済性を満たすと証明できた。
無角遺伝子は優性遺伝するため、孫やひ孫の代でも無角牛が誕生する可能性がある。酪晨家の労力削減にもつながり、同法人の藤田功事業推進部長は「人にも牛にも優しい」と話す。
日本も加盟する国際獣疫事務局(OIE)の基準は「無角牛の選択が除角よりも望ましい」としている。
動物福祉に詳しい帯広畜産大の瀬尾哲也准教授は「欧州に比べると日本では動物福祉の理解が遅れているが、一般にも家畜の実情が知られるようになりつつあり、過渡期にある」と話している。 (生田憲)
https://www.genetics-hokkaido.ne.jp/