河北新報 こども新聞 週刊かほピョンプレス 9月17日号
時空をかき乱す巨大ブラックホール 宇宙に重力波を放つ
こどもにもわかりやすい解説です。
こちらは、公益社団法人 日本天文学会 インターネット天文学辞典から
重力波 じゅうりょくは
英 語 gravitational wave
説 明
一般相対性理論などの相対論的な重力理論一般に予言される重力場の波動的振動。一般相対性理論
では、重力波は物質の四重極モーメント以上の高次モーメントの時間変化から放射される横波で、
その伝播速度は光速度に等しい。プラスモードとクロスモードと呼ばれる2つの偏光があり、 振動
方向は45度違っている。1984年にパルサー連星PSR1913+16 における重力波放射による公転軌道周期
の減少が観測され、 その減少率が一般相対性理論の予言と一致することから、重力波の存在は間接的
に証明された。
重力波は電磁波を用いた通常の天文学的手段では観測できないブラックホールの形成過程、宇宙初期
など超強重力場中における天体現象を 観測する唯一の手段であり、アメリカ、ヨーロッパ、日本、
インドなどで大型レーザー干渉計を用いた重力波検出器(重力波望遠鏡ともいう)が建設された、
あるいは建設中である。
このうちアメリカで建設されたLIGO (Laser Interferometer Gravitational-WaveObservatory)で、2015年
9月14日、400メガパーセク(400 Mpc=13億光年)の彼方で太陽質量の約36倍と29倍の二重ブラック
ホール連星が合体して太陽質量の62倍のブラックホールができた時の重力波が初めて直接検出された。
その後2017年8月までに二重ブラックホール連星の合体に伴う重力波が3回観測された。これらの重力波
の発生源は、検出の年月日をつけてGW150914、GW151226、GW170104、GW170814と呼ばれている。
この4回の重力波の発生源となった連星をなすブラックホールの質量は太陽質量の20倍を超えるものが多く、
また合体後のブラックホールの質量はどれも太陽質量の20倍以上、最大のものは62倍である。さらに、
2019年5月21日にはそれまでの記録を大幅に超える事象(GW190521)が観測された。GW190521では、
太陽質量の85倍と66倍のブラックホールが合体して142倍のブラックホールが生成され、太陽質量の約8倍
に相当するエネルギーが重力波として放出された。従来X線で観測されている天の川銀河(銀河系)内の
ブラックホールは太陽質量の10倍以下のものがほとんどなので、このような大質量のブラックホールの
形成過程についても謎が生じている。
2017年8月17日に観測された5例目の重力波(GW170817)は二重ブラックホール連星の合体ではなく二重
中性子星連星の合体によるものであった。銀河系から40メガパーセク(40 Mpc=1.3億光年)という近距離
にある銀河NGC4993で、二つの中性子星が合体して重力波が発生してキロノバという大爆発が起きたことが
すべての波長の電磁波で観測された。この観測から、キロノバでr過程により実際に金属(重元素)が合成
されたことがほぼ確実と考えられるようになった。
その後も重力波の観測は進み、2021年までに観測された重力波は90例に達した。今後観測例が増えることを
想定して、名称にはGW200322_091133のように観測時刻もつけるようになった。
重力波イベントの検出記録(LIGO-Virgo-KAGRA Collaboration)
https://www.ligo.org/detections.php
2020年3月までに検出された重力波イベントのカタログ
https://www.ligo.org/detections/O3bcatalog.php
★国立天文台水沢の本間希樹教授が角田市スペースタワー・コスモハウスでの講演会の時、
「重力波とブラックホール」について質問しようと思っていましたが、司会自ら質問するよりも
会場に来られたお客さんに機会を与えようと思っていたところです。
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