1,閉伊川河口水門 2,宮古湾のディレクション 3,鍬ヶ崎の防災施設
(前ページからつづく)
──(1)~(7)まで鍬ヶ崎地区のあるべき防災施設の<例>を書いてきた。トータルな宮古湾沿岸津波防災グランドデザインの一環としては(その前に述べた閉伊川、津軽石川の遡上放水活用、湾岸陸上平地への津波浸水の容認とともに)(2)の龍神崎地区防波堤群に破壊力の封殺や分散化に期待を寄せて言及しているが、湾レベルでも、もっともっと効果的な発想が望まれる。
さて、鍬ヶ崎地区のこれら諸施設については(4)の防潮堤を除いて,それらの連携が本題となる。各施設とその連携で津波の加速度(=G)が弱められ、市街地に侵入した時はほとんど破壊力のない水かさだけという狙いはご理解いただけると思う。湾レベルと同様に鍬ヶ崎地区でも、もっともっと効果的な発想が求められている。昔といっても震災前ちょうど今から一年前の事である、鍬ヶ崎防潮堤の住民説明会のとき鍬ヶ崎住民から港外の「外郭施設案」が提案されたが、主催者の県と市によって一蹴され、陸上に防潮堤をつくる案に賛同を求められた(岩手日報2010.12.16)。いまでも口惜しい思いがする。検証されなければならないが、私もディフェンスラインは高い方が効果的だと思う。
最後にこの構想の一番本質的な点、一番大切な点について述べておきたい。それは前項の「2、宮古湾のディレクション」において示唆してきた事であるが、この鍬ヶ崎防災構想がごく自然で、景観的にも、納得できるという事である。その意味ではこの構想には新しいものはとくになく、既存施設の強化・集中化を図り、施設の機能を徹底して引き出すという事である。つまり実用ハードの改修・修繕であった。実用の防波堤と、実用のふ頭と、実用の岸壁を津波減速用に強固にして、なおそのスクラムを合理的に結ぶ工夫。足りないところは二重にしたり、部分的に補強する工夫をすればいいのである。もともと鍬ヶ崎へは漁業を中心にいろいろな実業のために、人々は集まり定住してきた。岸壁も堤防もふ頭も、もともとは実用の用で作ってきたものである。景観と自然と集落は一体のものである。予知も避難も防災もその流れの中にあるべきである。