コンクールの課題曲は、関係者の間で一番とか三番とか言われています。この悪しき習慣はもう止めにします。
今年の課題曲で一番気に入っているのは、私が好きな宮沢賢治ばりの命名をした栗栖健一氏作曲の『コンサートマーチ「光と風の通り道」』です。 栗栖氏は、「山梨にある金峰山(きんぷさん)に登山したときの思い出が入ってるんですよ。登っていって、2000mくらいを超えたくらいから景色が変わって、そこの光と風がすごく心地よくって。そこから、ですね。この曲名「光と風の通り道」というタイトルにしよう、と」
金峰山は、奥秩父主脈の一つで、花崗岩の五丈岩がそのシンボル。五丈岩に登ると、富士山、北・南アルプス、八ヶ岳の山々が見わたせる360度の大パノラマが楽しめます。
また、富士見平から金峰山には数カ所のシャクナゲの群生地があり、シャクナゲ(6月)が道を覆うのでシャクナゲのトンネルができあがります。
栗栖氏が見た景色はどうだったのでしょう。
宮沢賢治が見た山からの景色を見た作品に〔水よりも濃いなだれの風や〕というのがあります。
山腹の斜面を上から雪崩れるように風が駆け下りてきます。夜明け方の薄明の中で小鳥達が鳴き騒ぎ、あたりは、山の妖精たちの棲家のように神秘的な雰囲気を出している。そうした風景の中に、「妖精たちの棲家のやう」から思い描いて、〈童話風の構想〉あたりの風景もお菓子に喩えられるのである。
〔水よりも濃いなだれの風や〕
水よりも濃いなだれの風や
縦横な鳥のすだきのなかで
ここらはまるで妖精たちの棲家のやう
つめたい霧のジェリイもあれば
桃いろに飛ぶ雲もある
またはひまつの緑茶をつけたカステラや
茶や橄欖の蛇紋岩(サーペンティン)や
青いつりがねにんじんの
花にきらめく一億の露
みやまうゐきゃうの香料から
碧い眼をした蜂のふるふ
蜜やさまざまのエッセンス
オランダ風の金米糖でも
wavellite の牛酪でも
またこめつがは青いザラメでできてゐて
さきにはみんな干した葡萄がついてゐる
青く湛える北上河谷のこどもたち
この青ぞらの淵に立つ
巨きな菓子の塔こそは
白堊紀からの贈物
あらゆる塵やつかれを払ふ
その重心の源である
宮沢賢治は童話が有名だけど、詩は具体的でおもしろい。
部活が試験一週間前で休みなのでボーとしながらこんな事を考えていました。