大学1年の時に一般教養で民俗学を履修した。
一発目の授業で先生が
「この中で地方出身者の人挙手して」
と言ったので素直に挙手したところいきなり当てられ、出身県を尋ねられた。
これも素直に「群馬です」と答えたところ、「君んちは古い家系?」と尋ねられ、「まあ割と」と答えた。
すると先生は黒板にサラサラと略図を描き、
「君んち、大体こんな感じでしょ?
まず家の北西に防風林、その手前に家神様の祠、これは多分お稲荷さんかな、そしてその反対、南東の方角にひょっとしたら馬頭観音を祀った碑があるかも。
違う?」
と。
完璧だった。
教室は激しくざわついた。
先生は教室が静まるのを待ち、
「皆さんは民俗学なんて得体の知れない、役に立たない学問だと思ってるかもしれないけど、こういう事ができるのが民俗学という学問です。
これから1年間、よろしくお願いします」
と微笑んだ。
未だにこれは最高の自己紹介であり最高の授業の始め方だったと思っている。
なんで馬頭観音かと言うと、群馬で古い家は大体養蚕農家だったことが多いからです(馬頭観音は家畜の守り神。蚕も立派な家畜の一種)
ついでに言うと、防風林を構成する樹種の中に桑が多いこともピタリと言い当てられました。
まあ普通に樫、ナラ、楠なんかも多かったですが、これは多分養蚕を始める前、ほんと大昔に植樹した物だと思います。
それとはちょっと離れたところに、桑や桐みたいな利用価値の高そうな木をまとめて植樹してありました。
樫は常緑なので乾燥する冬場でも燃えづらく防風防火林に向き、楠は立ち枯れしにくく虫に強く大木になり香にも用いられるので「魔除け」的な意味も強いです、ナラも強く水を自身に貯める木なので防火に、そして家具を作れる綺麗な木で、綺麗な木炭が作れ茶の湯に欠かせません