これが私の生きる道

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サド侯爵夫人

2012年03月07日 18時35分07秒 | 演劇
昨日は舞台「サド侯爵夫人」を観劇に行ってきました。
プレビュー公演という位置付けで
お客さんを入れての興行としては初日です。
席はプレセールを利用してセンター席の3列目という
ベストな場所でした。

あらすじ
サド侯爵夫人の母のところに、悪女とカマトトぶった女が訪れる。
SM変態行為が発覚し、追われる身になったサドのことについて相談に乗るために、
彼女たちは来たのだ。
するといつもは、この事件のショックで城に引き篭もっていた夫人が現れる。
夫人が去った後、行方不明だった彼女の妹も現れ、
サドと同行、姉も承知していた、ということを母に継げる。
そして事態は思わぬ方向に……。

蒼井優他出演者が豪華な割には、入場料が安かったので
上演時間も2時間程度と予想していたら
まさかの3時間30分で
休憩が2回もありました。
休憩1回は今までも経験ありますが
それを抜かしても3時間近い舞台です。

原作は三島由紀夫の戯曲ですが、未読です。
サド侯爵はお判りでしょうが、
サディズムの語源になった人です。
人の氏名が名前の由来になることって結構ありますが
それに見合った名前で良かったですね、
これが緊張感に欠ける、
例えばパミュ侯爵だったらパミュズムとかいっても
あまりサドのイメージじゃなくなっちゃいますもんね。

観終わってまず感じたことはなにしろセリフが多いこと。
ルネ(サド侯爵夫人)役の蒼井優と
モントルイユ夫人(ルネの母親)役の白石加代子さんの
二人だけのセリフだけで優に1時間分以上はあったように感じます。
一人一人が一回に話す文事体が長く、
このセリフも多さこそがサドだと思いました。
自分が蒼井優の関係者だったらとてもじゃないけど
観ていられない位、嫌な緊張感すらありました。

出演者は6名しかおらず全て女優さんで
みなさん自力がある方々ばかりでした。
白石さんは初めておめかけしましたが
セリフ回しや訝しげな表情がとても上手く
笑いも一番取っていました。
サン・フォン伯爵夫人役の麻実れいさんも
噂には聞いていましたが、
さすがの貫禄で出番こそあまり多くありませんでしたが
(途中で死んでしまうので)
印象にとても残りました。

もう一人の夫人役(シミアーヌ男爵夫人)の神野三鈴さんは
開始前はあまり期待していなかった方でしたが
緊張した話をほぐす天然さをうまく表現していて
さすがここにキャスティングされるだけあるなぁと思いました。
ルネの妹役(アンネ)の美波には結構期待していて
テレビドラマの中でも雰囲気のある女優さんというイメージで
そんなに感極まるようなシーンでもないのに
涙を流していて、すごいなぁと思いました。
出番があまり多くなったのが残念です。

メイドのシャルロット役に町田マリーさんで、
もちろん目当ての一つだったんですが
なにしろ出番が少ない、このメンバーじゃ仕方ないのですが。
マリーさんの良さが出るような役柄でもなく
今日来ていたお客さんもおそらくマリーさんのこと知らないんじゃないかなぁ、
4月からの毛皮族の方に期待してます。
そして主役の蒼井優は先にも書きましたけど
ほとんど出ずっぱりで、しかもセリフ量が尋常じゃなく
さすがに噛んでしまうことがありました。
でもCMとか映画とかやりたい仕事だけ選んで楽にいけるのに
この仕事をわざわざ引き受けたのは本当に感服いたします。

肝心の中身ですが、SM行為で捕まったサド侯爵とルネを
別れさせたいと母親が思うのは自然で
ルネは主役ですけど、ちょっとこの人、強情だなぁって思いました。
ちょうど今話題のオセロ中島みたいに
あらゆる説得にも耳を貸さないで洗脳されている雰囲気すらあります。
でも数十年経って、サドが出所してくるとなった段で
修道院に出家するって言い出します。
これまた理解しがたい行為で、
じゃあ今までは何だったんだと、
母親ならずとも普通はそう感じます。

もちろん劇中でそれに至るまでの説明をルネはしますが
これも屁理屈みたいなもので実際にされたら
怒りすら抱きかねません。
というか登場人物がみんな、最終的には
サドの行為を何か高尚なものと捉えるようになってしまい
あれだけ娘と別れさせようとしていた母親までも
動乱の時代にはああいう(SM行為等)奇抜な行動が持て囃される、
と同情したりします。

しかし最後にサドが戻ってきて、
その様子が、デブって着ているものもみすぼらしく
以前の面影は全然残っておらず
唯一エラそうな口調だけが変わっていないと知るや否や
ルネは愕然としてしまいます。
ルネの中で拵えていたサドのファンタジーが崩壊するのです。

これは人間界にも言えることで
とかく人間は高貴な魂を持っているから
他の動物とは違うとか
何か自分たちを特別な存在と捉えがちですが
サド侯爵がただのスケベ変態オヤジだったとのと同様、
人間もただの一動物に過ぎないというメタファーを感じました。
(あくまで自分の解釈です)

昨日、初日で楽日になったらどんな舞台になっているか
興味があります。
お時間のある方にはおススメです。

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