佳き酒を飲む

2008-01-06 02:37:46 | 徒然に


元旦の御神酒は、車で年賀に行くために飲めなかった
酒飲みは美味しい料理を酒なしで食べるというのは
とっても寂しいものである

元々、飲めない長兄の家では車でなくても、飲んでも美味しくはない
まあ、酒を飲まない人にすれば、なんで酒なんて飲んで
意識を麻痺させ、無様な酔態を見せなければいけないのかと、言う

人って面白いもので普段はいわゆる「しがらみ」のなかで
楷書の様な生き様をしている

酒乱になる人は可哀想だし迷惑だが、
「知らずにいるもう一人の自分」をあぶり出すのが酒なのではないか?
そんな風に思っている
まあ、いって見れは「草書体」のような、崩れた中の美意識なのであろう

人の前に酔態をさらす
それを恥と思わないお互いの関係から、本当の信頼関係が生まれてくるような気がする
飲まない人は体質的に飲めないのは判る
私の弟などは、ビール一杯で失神してしまう

私も若い頃はビール一杯で心臓はドキドキ、顔は真っ赤になって
その夜は蕁麻疹が体中に出来て、それは辛いものであった

ただ、仕事柄、客先が設けてくれた料亭での宴席での付き合いがあり
私は飲めませんでは、その頃の風潮で、仕事もぎくしゃくしたものになってしまう

アパートに隣り合わせた飲んべえの同期の(彼は途中入社で年もいっていて)
俺が特訓してあげるの言葉で、毎晩ビール二本をノルマでの特訓が始まった
蕁麻疹は出る、だから抗ヒスタミン剤を寝る前に飲んでも
布団で圧迫する背中には大きな蕁麻疹がしばらく出た

一週間が過ぎると、顔は赤くなるけれど蕁麻疹は出なくなった
ビールの苦さもそれなりに体が受け付けて、喉を通るときの炭酸の刺激に
美味いと感じられるようになった

さて、ビールは卒業レベル
次は日本酒である
茶碗酒の冷やを飲んで、胃がむかついては、トイレに走る
肝臓がアルコールを受け入れ始めたのか
日本酒も卒業

次は焼酎である
やはり冷やの焼酎のコップを、するめをかじりながら飲む
焼酎の臭さに辟易しながらも、これは「酒修行」なのだと言い聞かせて
少しずつ胃に流し込む

一ヶ月たち、少しは付き合い酒が飲めるようになった

そして、料亭での宴席でも、
「おい、酒が飲めるようになったな」
「やっと、一人前の大人の仲間入りだな」
等と、接待先のアタマのはげ上がった親父達に認められるようになった

それまではタクシーに無理矢理乗せられて、「僕は早くお帰り」と相手にされず
二次会は課長が付き合いをしていたが
高級クラブに、お付き合いさせて貰った

そして、数々の「大人の遊びこころ」を教えられた
そうして、仕事も円滑に運び、それなりの信頼を取引先から得られるようになった

「男は、如何に粋に酔態」を見せられるか?
そんなことを教えてくれた取引先のオヤジたちであった

ただまあ、時折羽目を外して飲んだ後の2日酔いの時は
なんで酒なんて飲むんだろうと、自問して慚愧に堪えないこともある

酒の効用は、「馬鹿を見せ合う男の裸の付き合いなのだ」

そんなことを思いながら、美味い日本酒を飲む
まあ、これは飲んべえの「合理化」の常套手段なのかも知れない