http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100228/biz1002280252001-n1.htm
2010年2月28日配信
記事の紹介です。
【主張】大西洋クロマグロ 看過できない「絶滅」指定
2010.2.28 02:52
クロマグロ漁業の雲行きが怪しい。3月13日からカタールで始まるワシントン条約締約国会議で、大西洋クロマグロが絶滅の恐れがある動物種の一つとして指定されるかもしれないのだ。
そうなると商業取引は禁止され、日本への輸出は止まる。大西洋でマグロ漁をしてきた日本の延縄(はえなわ)漁船も閉め出される。
太平洋クロマグロは、別種なので規制されないが、クロマグロ全体の漁獲半減につながる。日本にとって看過できない一大事だ。
日本のマグロ消費は、世界で突出している。欧州の国々も捕ってきたが、日本への輸出のための漁獲という性格が強い。そのことは否定できない事実だが、日本は大西洋クロマグロの資源保護に積極的に関与してきている。
漁獲量をもっと多くしたいと主張する声は、これまで欧州諸国に多かった。それが一転して今回の事態である。きっかけは、モナコによる保護の呼びかけだ。
同調する国は、会議が近づくにつれて増え始めた。漁業国のイタリアやフランスも支持に転じ、欧州連合(EU)の欧州委員会が加盟27カ国に、モナコの後押しを呼び掛けた。輸入を続けたい日本にとって、情勢は厳しい。
ここで知っておくべきことがある。大西洋クロマグロが絶滅危惧(きぐ)種に指定されても、大西洋や地中海に面した沿岸国は、領海内で漁ができる。国際商業取引は禁止だが、EU域内での大西洋クロマグロの流通は自由なのだ。
健康志向の和食ブームで、マグロ人気は海外でも高い。今回の動きは、EUによるクロマグロ囲い込みへの一歩としての色合いさえ帯びている。長年、漁業の対象だった魚を、いきなりシーラカンスと同等の扱いにしてしまうのは、あまりにも強引だ。
大西洋クロマグロは、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が漁獲枠を定め、資源管理をしてきた歴史がある。それを無視する動きは、調和を損なう。
モナコの提案が採択された場合、日本は受け入れ「留保」を表明する方針だ。不条理な決定への意思表示としても意味がある。
もっとも日本にも再考すべき点は少なくない。マグロとトロへの一極集中は改めるべきだろう。日本の海には滋味にあふれる魚が数多い。魚食文化の多様性の回復に努めるべきだ。海の幸の利用のお手本を世界の人々に示したい。
記事の紹介終わりです。