

夕方~
我が家の婆がお世話になっている○○苑に、相棒と出掛けた
ショルダーバッグには、婆へのお土産(着替え)を入れてある
食堂兼広間に車いす族が集い、時間が過ぎるのを待っている
どの顔も、笑いを忘れているのか、表情がやや暗い気がした



ちょっと膨れっ面の婆は、私達が来るのを待っていた様子
4~5日振りでも、待ちぼうけには変わりない(ごめんね)
車椅子を押して、長い廊下を通り部屋へと向かって歩いた
その間も、ブツブツと婆の不満と文句は続いていた


鬼嫁が言うと、「わざわざ買って来てくれたのね」婆は喜んだ
黒地に花柄や何やらかんやら、賑やかな模様が描いてある
婆の好みは難しい 合格した鬼嫁…心の中でガッツポーズ!

「そろそろ、夕飯だから食堂に戻ろう」また長い廊下を歩いた
廊下の壁には、入所者のどれもよく似た似顔絵が並んでいる
送迎の運転手さんが描いてくれたとかで、婆も並ぶのだろう
鉛筆のデッサン


婆の定位置の、向かいの席には93歳のおじいさんがいます
見た目には全然お若いその方の顔に、縦の皺はありません
にこにこと微笑み、よくお話をされます どう見ても70歳代~
夢は【元気になって、もう一度家に戻って生活したい】らしい
「それは無理な願いかも知れないけれど、夢は捨てたくない」
おじいさんはそう言うと、また静かに微笑んで見せた

「ここで生活するからには、クヨクヨしたらいかんよ 努力すれ
ば、かなわない身体もきっと元気になる 何もしなければ
尚一層~衰えが増す 望みを捨てず、一緒に頑張りましょう」
そして、自分なりの日々のリハビリの仕方を、教えてくれた
だからお若いんだ 目標があるから、負けてられんのよね
「あなたはまだお若い 私よりも一回りも若い 元気出して」
婆ときたら、罰が悪そうに下を向いていた あらら~だわ

重みのある有難い言葉だが、婆は相変わらず下を向いていた
もっと笑え~と言うその人に、ちょっと不満だったのか?
それでも、教えて貰った体操


先輩の意見は有難いものだ ねぇ~婆ちゃん

奥様を今年の2月に亡くされて、当時は落ち込んでいたけれど、ここに来て一念発起!
≪自分の身体は自分で守るぞ≫ 今は、運動と歌を歌う事、そしてみんなとお喋りをすること
それが生き甲斐よ~と仰っていた (これぞ日本男児! おじいちゃんカッコイイ)
「何もしないで時間を過ごすのは勿体無い ここで一緒に頑張りましょう」有難いお言葉です
能楽の翁のお面そっくりに、優しい顔で微笑まれました どうもありがとうございます



=お断わり:画像と本文は関係ありません=