<2009年1月30日に書いた以下の記事を復刻します>
昔から「死の商人」という言葉がある。嫌な言葉だ。死の商人とは、軍需品を製造・販売して大儲けをする資本家や会社のことだが、彼らにとっては戦争、ないしは戦争の危機がないと商売にならない。 したがって、いつでもこの世を戦争状態に持っていこうとする。要するに“ハゲタカ”のような連中なのだ。
「死の商人」の定義はこのくらいにして、オルタナティブ通信の今日の記事によると、アメリカの軍需産業の兵器販売総額は2008年度で、公式には340億ドル、闇取引を含めると2700億ドル余り(約27兆円)に達するという。 この売上高は対前年度比で45%増という物凄いもので、大不況に喘ぐ他の産業を尻目に好景気を謳歌しているのだ。正にアメリカ最大の成長産業なのである。
アメリカに限らず、世界の多くの国は兵器を輸出しては儲けてきた。それは世界中に戦争や内乱などが起こるためであり、また 軍需産業は意図的に戦争を引き起こそうと努力する。よく「軍産複合体」という言葉を聞くが、これは軍需産業と軍部・政府が結託して戦争への準備、あるいは戦争の誘発を進める体制のことである。(少なくとも私はそう理解している。)
世の中が不景気になると、戦争でも起こせといった機運になることがある。今のアメリカがそうなのかどうかは知らないが、軍需産業が大好況ということはそういう面があるのかもしれない。アメリカはイラクから撤兵の方針だが、逆にアフガニスタンへの軍事介入は強めるようだ。それはオバマ大統領の就任演説からも窺えることで、軍需産業はこれからアフガンで大儲けしようとしている。いや、すでにアフガン地域で売上げを急伸させているという。
同じくオルタナティブ通信で興味深い記事を見つけた。 日本がアメリカから購入しているパトリオット・ミサイルはレイセオン社製だが、その経営者はチェイニー前副大統領である。一方、北朝鮮の核ミサイル開発を行なっているのはイスラエルのアイゼンベルグ社だが、その経営者もチェイニー氏なのである。 ほんまかいなと思ってしまうが、日本と北朝鮮がもし戦争寸前の状態になったら(そんなことは考えたくないが)、双方がミサイルを増強するから、儲かるのはチェイニー氏が経営する会社になるという“仕組み”である。これこそ「死の商人」の典型である。 チェイニー前副大統領はこれまで、湾岸戦争やイラク戦争などで大儲けしてきたが、そのことに触れるのは止めよう。(余談だがアメリカには、アジア人同士を戦争させて疲弊させ、その間に“漁夫の利”を占めようという戦略があることも付言しておく)
日本も戦後間もなく、朝鮮戦争が起きたため「朝鮮特需」で経済が復興した経験を持っている。別に日本が武器を輸出したわけではないが、戦争に絡むいろいろな需要が起き、どん底の経済状態から一気に回復への道を進むことができた。
そう考えると、嫌な言い方だが戦争も“ビジネス・商売”なのだ。アメリカの年間軍事予算は約50兆円、日本の防衛費の10倍ほどの巨額のものだが、米軍需産業はその恩恵にあずかるだけでなく、世界中に兵器を輸出して大儲けしている。
戦争は良くない、戦争は止めようと言っても、世界の経済構造がそうなっているのだ。したがって、どこで戦争が起きてもおかしくない。それが現実なのだ。
はたして、人類はこうした「戦争経済構造」からいつ脱却できるのだろうか。人類が戦争を行なう限り、死の商人は決して無くならないだろう。(2009年1月30日)