
著者 崎谷満<o:p></o:p>
生年 1954年<o:p></o:p>
経歴 京都大学大学院博士課程修了、医学博士。その後長崎大学、京<o:p></o:p>
都大学での研究を経て1997年からCCC研究所所長に就任。<o:p></o:p>
初版出版年 2005年<o:p></o:p>
出版社 勉誠出版(株)<o:p></o:p>
価格 3,500円(税別)<o:p></o:p>
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感想<o:p></o:p>
日本列島に住む人々はどのような「ヒト集団」から成り立っているのか。それを生物学的な方法で明らかにしたのが本書である。その方法の一つは成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-Ⅰ)の感染分布であり、もう一つはDNA多型分析である。HTLV-Ⅰでは母乳による垂直感染によって世代を越えてウイルスキャリア(保因者)が持続していく。DNA多型分析では母系遺伝を識別するミトコンドリアがあるが、本書では父系遺伝を識別するY染色体の多型分析を行っている。<o:p></o:p>
成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-Ⅰ)のキャリアは西九州や南九州、琉球諸島やアイヌの人々の間に高頻度に現れているだけでなく四国、山陰、東北にも広がっている。<o:p></o:p>
そして日本列島のヒトのY染色体の型は5系統に分かれるが、そのうち最大グループと思われるD2系統が成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-Ⅰ)のキャリア分布に重なる。このD2系統のヒトが後期旧石器時代に日本に移ってきて、新石器時代に縄文人になった先住民族だと考えられている。<o:p></o:p>
日本の近隣諸国にはこの成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-Ⅰ)もY染色体のD2系統も低頻度かまるで見られない。世界的に見てもD2系統の最大集積地は日本だ。<o:p></o:p>
またアイヌの人々と琉球諸島の間では全く異なる系統、南方型と北方型に分かれるので、共通性が薄い。<o:p></o:p>
また、言語が必ずしも人種と一致しないことを、トルコの例などから解き明かしている。トルコではDNA多型構成はヨーロッパ系のギリシャに近いのに、1.3%しかいないヒト集団のトルコ語が支配している。DNA多型分布(ヒト集団)と言語の分布(民族)とは必ずしも相関しない。<o:p></o:p>
実に面白い本だった。世界的に調査が進んで人の流れと言語の形成が明らかになることを期待してしまう。(2012.11.30読了)<o:p></o:p>
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