韓国語学習のための翻訳で営利目的はありません。
著者 : キム・ホヨン
7)
「そうですね。天気が寒くなるはずなのに・・・そちらはソウル駅に続けているつもりですか?」
「寒くなるから・・・もっとそこにいなければならないでしょう。」
何だろうか?先週あった時より口調が一層安定している。コンビニに来て弁当を食べて社会化がしたのかもしれない。ヨム女史はついでに男に対して気がかりなことを最大限たくさん訊ねることにした。
「一日にこれ一食食べるだけですか?」
「宗教行事が・・・昼食を食べるから・・・讃美歌歌わせて嫌です。」
「歌わせるの、ちょっとそうでしょう。しかし家どこですか?戻るつもりはなかったのですか?」
「・・・わかりません。」
「ではそちらは名前わかるのでしょうか?」
「わかりません。」
「自分の名前もわからないんですか?年齢は?前に何をして暮らしていましたか?」
「わ、わかりません。」
「まあ。」
口を開いたが答えはわからない。これなら黙秘権と何が違うのか?目ざといヨム女史さえ男が本当に自分の名前がわからないのか、わからないふりをしているのか見当がつかなかった。しかし、彼女は諦めないことにした。コミュニケーションをとろうとすればどうしても互いの呼び名を整理しなければならない。
「では私がそちらをどう呼んだらいいですか?」
男が答えの代わりにソウル駅の方に視線を向けた。もどりたいのか?自分が知る唯一の空間へ。その時彼が首を回してヨム女史を正面から見た。
「ドッ・・・コ・・・。」
「ドッコ?」
「ドッコ・・・みんな・・・そう呼びます。」
「姓がドッコですか、名前がドッコですか?」
「そのまま・・・ドッコ。」
ヨム女史はため息をついてうなだれた。」
「わかりました。ドッコさん。毎日忘れずに来るようにしてください。一昨日は遅く来たと言うので心配しました。」
「そ、そう・・・しません・・・気を遣わないでください。」
「人がいつも定刻に来ていて遅かったら気を遣うでしょう。当たり前です。だから、毎日遅くならないように来てください。来てお弁当も食べて今のように運動としてここを清掃して、そうしたらいいじゃないですか。」
「まっ、万一、財布・・・失くしてしまったら・・・話してください。」
「うん?」
「僕がまた探して差し上げます。・・・僕が・・・恩返ししていないですから・・・。」
「ドッコさん、礼儀正しいことがわかったので・・・そちらに助けてもらおうと、わざと財布をなくしてしまおうとか?」
「いいえ・・・失くしてしまったら良くない・・・とにかく・・・助けることがあったら・・・話してください。」
ヨム女史は感心した気持ちと同時に虚脱した気分になった。猫の手でも借りなければならないほど、助けが切実ではない。あるいは彼にも私のコンビニが情けなく見えるのか?彼女はドッコさんをまっすぐに見て会話を締めくくることにした。
「ドッコさん。まず自分を助けて下さい。」
彼が照れくさい表情をしてうなずいた。何、こんなことでいじけるなんて。
「そしてお弁当を食べさせてあげるのはドッコさんを少しでも助けたいからです。それでここで焼酎を飲むのを見逃すことができないんです。」
「・・・」
「お弁当は酒の肴ではなく食事です。ドッコさんがお酒に酔うのを私は助けられません。」
「一本・・・が、飲んだ気がしないので・・・。」
「とにかく!私は原則にそった人間です。この屋外テーブルは私のもので、ここで焼酎は許せないからわかってください。」
ドッコさんが無言で唾を飲み込んだ。引き続いて焼酎瓶に視線を移したので静かに摘まみ上げた。ヨム女史は彼がこれで攻撃でもするのではないか、しばらく緊張した。しかし彼は焼酎瓶を空の弁当箱の上に載せて立ち上がり、のそりのそり分別ごみ箱の方に移動した。ヨム女史は静かに安堵のため息をついた。戻ってきたドッコさんは例のジャンパーから正体不明のチリ紙の塊を取り出し、テーブルを拭いてから彼女にぺこっと挨拶した。
ヨム女史はドッコさんと呼ばれる男の遠く去っていく後ろ姿を見送った。ドッコ。一人で孤独だという意味なのか?あるいは独居人として暮らしてきて、ドッコと呼ばれるようになったのか?名前のように寂しい彼の後ろ姿を彼女はしばらくは気にしないことにした。
「社長さん、すみませんが急に辞めなければならないと思います。」
その日シヒョンとおしゃべりをしてコンビニの夕方の時間を守っていたヨム女史は、出勤したばかりのソンピルさんの言葉に当惑しないわけにはいかなかった。彼は、いくらもない頭髪を手でなでながら、知っている方を通して中小企業の社長の運転手の職を得たと言った。三日以内に出勤しなければならない状況なので、急に仕事を辞めざるを得ないと、人の良い顔に申し訳なさを込めて了解を求めた。
夜間アルバイトはコンビニで一番大変な時間帯で働き手も探すのが難しかった。過去1年半ソンピルさんが黙々と守ってくれたお陰で、別に気がかりもなく夜を過ごしたから・・・またこの職が空席になった。探せてもすぐ辞めるので、随時穴埋めしなければならない。安定的な夜間アルバイトを手に入れる時まで、これからしばらく穴埋めするのでヨム女史はさっきから頭ががちゃがちゃ鳴るように痛かった。
ヨム女史は、ソンピルさんが再就職でコンビニを去る時喜んで応援してやろうと決心していたことを思い出した。彼女はソンピルさんに今までコンビニの夜をよく守ってくれて心配なく過ごすことができたと祝いの言葉をかけた後、ボーナスを準備したと付け加えた。ソンピルさんは感動した表情をして残りの三日も全力を尽くすと答えた。
「社長さん ちょっと素敵ですね。」
ソンピルさんがチョッキに着替えるために倉庫に行った間にシヒョンが親指を立てて言った。
「シヒョン、あなたも合格さえしたら出勤用の服は私が買ってあげよう。」
「本当ですか?高いもの買ってもいいですか?」
「新入りが高い服を着て出勤したらにらまれる。無難なものを買ってあげる。だから勉強一生懸命しなさい。」
「はい。」
「あっ、いずれにしてもすぐ夜間アルバイトをさがさなければ。あなたの友達の中に遊んでいる子供をちょっと調べて。私も教会の青年会に話しておくつもりだから。」
「私、コミッションをもらうのでしょう?」
「ええ。代わりに探せなかったら、あなたが夜間アルバイトするのよ。」
「それは嫌です!」
「三日以内に人を探せなければ、あなたでなければ、私がしなければ。オ女史は息子のせいでだめで、私達以外にいるの?ではこのおばあさんが夜間にここを守って品物の陳列が全部できるの?どう思う?」
ヨム女史が一席演説をぶつや、シヒョンが曖昧な表情をして目を泳がせた。
「アルバイトを見つけます。遊んでいる子供は多いです。」
「最高に良い社長さんがいると言って。」
「勿論です。」
ヨム女史はあふれる品物の箱を見て、ひとりでにため息が出た。商売も良くないのに何故こんなに発注の欲を出したのか、彼女は自分を恨んで出入口の前に積まれていく箱を運び始めた。配送マネージャーは出入口まで配送してくれる。ここから倉庫まではコンビニの店員が直接運ばなければならない。数回運ぶだけでも足が震えた。ヨム女史は最後の箱を積み上げて去る配送マネージャーの後ろ姿を見てため息をついた。
ソンピルさんが辞めてから1週間、やはり夜間アルバイトは簡単に見つけられなかった。初めの三日は数か月後に入隊を控えた教会の青年会の青年が志願したが、たかが数日働いて両親が反対するというみえみえの嘘を残して逃げてしまった。そいつ、それでは軍隊でどう辛抱するのか心配になったりもしたが、本当はコンビニの夜が一層心配だった。
以後三日間ヨム女史が徹夜で勤務している。シヒョンは「ちょうど」特別講義があって朝からノリャンチンへ行かなければならず、ひたすら申し訳ないと言った。憎たらしい! 本当に一生懸命勉強しているのか、問題でも出して確かめたい気持ちだった。他でもない、歴史の先生出身のヨム女史は公務員試験に出てくる歴史問題は目をつぶっても解くことができ、その分野ではシヒョンを助けてやることもできた。しかし、シヒョンは先生よりは社長さんとしてヨム女史に接したいと、必死で拒絶した。ひょっとすると、シヒョンは勉強よりはコンビニのアルバイトとして小遣いを稼いで時間をつぶしているのかもしれなかった。
また他人の心配をしている。今ただちに夜間アルバイトを探さなければならないのが私の問題だ。昼には息子に電話をかけて怒りだけがこみあげてしまった。息子の奴は1)自分が無職だと思っているのかと言いながら、2)たとえ無職が合っていても自分のような上級労働力がコンビニの夜間アルバイトなんかできないと、3)だからコンビニを売らないで何故苦労をするのか、4)この際、売って自分の新しい事業に投資して休めという、実に助けどころか泣いている人の頬を叩く発言をぶちまけた。ヨム女史は、お前はコンビニでチューインガム一つおごってもらえないだろうと宣言してから電話を切った。そして、ビールを1缶飲み干した後床について眠っていたがアラームの音で起きてシヒョンと交代しにコンビニに来たのだ。息子の奴のせいで酒が増える。信徒としてこれでも良いのだろうか?神様は何故息子と厄介ごとを与えたうえに、酒もお与えになるのだろうか・・・ヨム女史は全く分からなかった。
倉庫へ品物の箱を全部運んで検品までおえてしまうと、夜中の零時を過ぎていた。これから発注した品物を陳列しなければならなかった。それでまたぶっとおしで3時間どんぐりを運ぶリスのように倉庫と陳列台、冷蔵庫の裏側を往復した。終わってしまうと朝の4時。彼女はカウンターに上体をよりかからせたまま、つぶっている目に力をこめてあくびをした。それでも客がいなくて幸いだけれど、そうだったら大変になるところだったと思った。しかし、客がいなくて幸いだという考え、それはどんな方法でも店が滅びる兆候ではないか。