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読書感想99 ものがたり風土記<o:p></o:p>
著者 阿刀田高<o:p></o:p>
生年 1935年<o:p></o:p>
出身地 東京<o:p></o:p>
出版年 2000年<o:p></o:p>
出版社 (株)集英社<o:p></o:p>
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〈感想〉<o:p></o:p>
ここでは、各地の昔話や伝説をその土地の風土や人々と絡めて著している。各地といってもこの本で扱っている地方は、琵琶湖のある滋賀県、俊寛の流された島、硫黄島のある鹿児島県、佐渡島と新潟県、東京である。<o:p></o:p>
昔話と伝説の違いを柳田邦男の言葉を借りて説明している。昔話は動物のようなものでどこにでも移動し、伝説は植物のようなものでその土地に根を張り枝葉をつけていく。<o:p></o:p>
伝説の中で鹿児島県の硫黄島にある安徳天皇潜幸説には驚かされる。安徳天皇は壇ノ浦で死んだのではなく、硫黄島に逃げてきてその血筋が現在まで伝えられているというのだ。安徳天皇の墓所には息子の隆盛親王やその母や家来たちの墓もある。その一族は長浜氏として現在まで35代を数え、島の人々は「天皇さん」と呼ぶ習慣が残っている。往時の都を模した跡もあり、道にはそうした標識まである。平家の落人伝説や安徳天皇生存説も各地にあるが、硫黄島のは念が入っている。<o:p></o:p>
他にも皿屋敷の伝説、安寿と厨子王の物語、鶴の恩返し、源兵衛の首など。皿屋敷の伝説も各地にあるそうだが、彦根藩で実際にあった事件の顛末と、祟りを恐れた人々の供養のようすが描かれている。源兵衛の首では蓮如上人の時代に浄土真宗の信徒だった源兵衛が信仰のために犠牲になった。その首が2か所の寺で拝観できるという真偽を越えた伝説になっている。安寿と厨子王の碑は各地にあるそうだが、佐渡にも安寿塚がある。二人の母親が売られた土地で、安寿は佐渡へ行ったことはなかったのに、事実よりも物語を導く安寿の想いの強さに物語の所縁の土地、佐渡としては母親よりも安寿ということになったのかと著者の感想だ。<o:p></o:p>
土地の人の求めるものに沿って伝説も昔話も変化していくのが面白い。事実よりも想いが重視されているのが伝説や昔話の世界なのだろう。
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