著者 : アンソニー・ドーア
生年 : 1973年
出身地 : 米国オハイオ州
出版年 : 2014年
受賞歴 : 2015年ピュリツァー賞
邦訳出版年 : 2016年
邦訳出版社 : (株)新潮社
訳者 : 藤井光
☆☆感想☆☆
ドイツの少年とフランスの少女の過去と現在が交互に語られていく。ドイツの少年ヴェルナーは炭鉱の町で両親を亡くし、妹ユッタと二人で孤児院で育つ。拾ったラジオを修理してドイツだけではなく、ヨーロッパ中の電波を拾えるようになる。そしてフランス語の子供むけの科学の講義を聞き科学に強い関心を持つ。一方フランスの少女マリー=ロールは幼い日に視力を失い、パリの自然史博物館に勤める父親の下で育つ。父はマリー=ロールが町を歩けるように町の模型を作ってくれる。第二次世界大戦の最中に、16歳のヴェルナーは優秀さを買われて、18歳にされ技術兵となる。ロシア、ウクライナを経てフランスのブルターニュ地方のサン・マロという町に送り込まれ、アメリカ軍の爆撃で地下に閉じ込めれれている。一方マリー=ロールもパリから離れ大叔父の住むサン・マロの町に避難してきている。マリー=ロールの父親は博物館から秘宝のブルーダイアモンド「炎の海」を託されてきている。しかし本物か偽物かはわからない。同じものが4つあり、それぞれ別な地方に送られているからだ。「炎の海」は所有者には永遠の命を与え、その周囲の人々をことごとく死に至らしめるといういわくつきの宝石。
ヴェルナーが入学した国家政治教育学校は入学試験からナチス精神が貫かれている。
君の祖父はどこの出身か。君の父親の目は何色か。母親はオフィスで勤務したことがあるか。
血統に関する百十個の質問のうち、ヴェルナーが正確に答えられるのは十六しかない。残りは、
当てずっぽうで答える。
母親の出身地はどこか。
『どこだったか』という選択肢はない。彼は『ドイツ』と書く。
父親の出身地はどこか。
ドイツ。
母親はどの言語を話すか。
ドイツ語。
エティエンヌ マリー=ロールの大叔父。第一次世界大戦から帰還して家に引きこもっている。
ラジオ、ステレオ、無線が好きだ。
マネック夫人 エティエンヌの家の家政婦。
エレナ先生 孤児院の院長。アルザス出身の修道女で孤児たちにフランス語でも話す。
フレデリック ヴェルナーの学友。鳥好き。
ハウプトン 科学技術の教官。ヴェルナーの優秀さを気に入って特別補講を毎日行う。
フォルクハイマー ヴェルナーの上級生。戦友にもなる。
ユッタ ヴェルナーの妹。短波のフランス語放送を聞きナチスの宣伝を信じない。
フォン・ルンペル上級曹長 「炎の海」を捜している。
本書がアメリカ人が記したことに驚いたが、小説の醍醐味である豊かな想像力の世界を堪能することができた。最後になっていろいろな謎が解き明かされる。なぜドイツの少年とフランスの少女が出会ったのか。「炎の海」はどうなったのか。