『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想293  検事の本懐

2021-01-14 23:20:03 | 小説(日本)

読書感想293  検事の本懐

著者    :  柚月裕子

出身地   :  岩手県

生年    :  1968年

受賞    :  2013年 第15回大藪春彦賞

出版年   :  2012年

出版社   :  (株)KADOKAWA 角川文庫

☆☆感想☆☆

佐方貞人シリーズの中の1冊になる。まだ20代の若い検事佐方貞人の活躍を描くものである。佐方検事は東京から新幹線で2時間ぐらいの東北の米崎市の検事局に赴任してきた。

5話の短編から構成されている。

第1話 樹を見る

連続放火事件をめぐるもの。県警内部のライバル関係の刑事部長と所轄の警察署長の話も絡めている。

第2話 罪を押す

出所したばかりの男が時計の万引きをしたかどで捕まる。自白もし目撃者もいるが、佐方検事はホシではないと主張する。

第3話 恩を返す

広島の高校時代のクラスメート弥生から佐方にSOSの電話がかかってくる。弥生は結婚を控えて深刻な脅迫を受けている。佐方検事の過去も明らかになっていく。

第4話 拳を握る

東京地検特捜部で与党議員の贈収賄事件を調査するために、全国の地検から検事と検察事務官が応援に駆り出された。その中に佐方検事もいた。

第5話 本懐を知る

佐方検事の父親、佐方陽世の12年前の事件をニュース週刊誌の記者が調べ始める。誰も語らない真実に迫る。

 佐方検事のあくまでも真実を明らかにし、愚直なまでに亡き人との約束を守りぬくという、ぶれない姿勢がさわやかな読後感を与える。しかし、自分の利益のためには動かないというのはいいけれど、えん罪をかぶる必要もないだろう。「男はだまって」といった古風な倫理観に縛られているようで苦しいだろうと思ってしまう。今時の高校生風ではなく、ちょっと古風で子供らしい佐方と弥生の花火をしに行く場面は、広島弁も生きていて、とても楽しい場面になっている。昭和の高校生といったところか。

  「なん?」

  弥生が先を促す。

  佐方は読みかけの本を読みながら、つぶやいた。

  「花火しょうか」

  弥生は耳を疑った。普段より口数が少ないことから、弥生の気持ちが沈んでい

  ることをさっしたのだろう。佐方は読みかけの本を閉じて、弥生を見た。

  「千鳥川の河原で、みんなようしとるじゃろ」

  ・・・・・・・

  玩具屋を出ると、揚げ物も売る近くの肉屋に寄った。

  「ここのコロッケ、揚げたては絶品じゃ」

  佐方はふたつ買うと、ひとつを弥生に差し出した。

 


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1 コメント

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広島弁 (nishinayuu)
2021-01-15 00:04:28
文字で見るとちょっとじじ臭いような……。ほほえましいですね。
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