ジョン・アーヴィング
読書感想335 また会う日まで
著者 : ジョン・アーヴィング
生年 : 1942年
出身地 : アメリカ、ニューハンプシャー州
出版年 : 2004年
邦訳出版年: 2007年
邦訳出版社: (株)新潮社
訳者 : 小川高義
☆☆感想☆☆☆
幼いジャックは母のアリスに連れられて、アリスとジャックを捨てて逃げた父のウィリアムを追ってトロントから北欧の町々を巡る。ウィリアムは教会のオルガニストで、アリスは腕のいい刺青師。ウィリアムの体にはその土地の刺青師によってバッハやヘンデルの楽譜が彫り込まれている。父を追いかけることをあきらめたアリスはトロントに落ち着き、ジャックは父が働いていた元の女子校の小学校に入学する。父と恋人関係だった先生もいる。アリスはいろいろな人の助けで住まいを得て刺青の店を開き、ジャックも教育を受けることができている。ジャックはその女子校で演劇に目覚め、女装役を演じる。次の全寮制の男子中学校レディングではレスリングを始める。そのレスリングチームについてつぎのように述べている。
――劣等であることが、このチームの強みだった。劣等意識が熱っぽい努力と結びついて、チームの根性が出来上がっている。 このチームは負けをこわがらない。――
含蓄のある言葉だ。
30年後ジャックは再び父を探そうとかつて巡った北欧の町を訪れる。
母の言葉と幼児の記憶を確かめる旅になる。
自分のルーツ、父親は何年たっても大きな影を作っているからこそ、明らかにしたくなる気持ちは共感できる。それを子供の一生に課すのは周りが悪い。不思議な物語だが、学生時代の話が生き生きしていて面白い。