著者 : ジョン・アービング<o:p></o:p>
生年 : 1942年<o:p></o:p>
出身 : アメリカ合衆国ニューハンプシャー州<o:p></o:p>
出版年 : 2009年<o:p></o:p>
邦訳出版年 : 2011年<o:p></o:p>
邦訳出版社 : (株)新潮社<o:p></o:p>
翻訳家 : 小竹由美子<o:p></o:p>
感想<o:p></o:p>
アメリカ合衆国のニューイングランド地方に位置するニューハンプシャー州。その森林地帯での事故から物語が始まる。樵たちが木材を伐採し、川に丸太を流して輸送する方法を取っていた時代、50年以上も前のことだ。渡り労働者としてやってきた少年が乗っていた丸太から足を滑らせ、雪解けの増水した川に落ち、溺死してしまったのだ。実の父親のようにその少年の世話をしていた樵のケッチャムと、事故を目撃したコックのドミニク・バチャガルポと12歳の息子ダニエルは、その少年の死体がたどりつく先デッドウーマンダムにケッチャムと一緒に行く約束をする。そのデッドウーマンダムは10年前ダニエルの母親ロージーの遺体が流されて発見されたところだ。ロージーも流れてきた丸太の衝撃で割れた氷の隙間に落ちたのだ。母親が落ちた時、ドミニクとケッチャムは酔っぱらっていて、ロージーを助けることができなかった。また丸太は少年のドミニクの足を折りびっこにして、樵の道をあきらめさせたのだ。父子はデッドウーマンダムで少年の遺体を発見し、わずかな手がかりから少年の家族に会うためにボストンに向かう。あとのことはケッチャムにすべて頼んで伐採集落を永遠に去る。なぜなら熊が家の中に入り込むという話を聞かされていたダニエルが、いつも世話をしてもらっていたインディアン・ジェーンの髪を下して父親の上にかぶさっている姿を見て、熊だと思って撲殺してしまったからだ。ジェーンの同棲相手の保安官カールは変質的で暴力的な男なので、ドミニクとジェーンが愛人関係であったことがわかったら、絶対に殺されるという確信をもって父子は50年に及ぶ逃亡生活を始める。<o:p></o:p>
ニューハンプシャーの森林地帯の雰囲気が開拓時代のアメリカを思わせるものがある。ケッチャムは無学文盲だが力が強く頼りになる男だ。伐採していないときは熊狩りや鹿狩りをしている。満身創痍の熊狩り犬とか、熊肉の燻製とか、鹿肉のステーキとか、常に銃を離さない生活とか。父と子が暮らすボストンとかトロントとかの都会の生活と対照的だ。ケッチャムにせよ、ドミニクにせよ、ダニエルにせよ、それぞれが自分の職業が好きで向上心に富み、年齢に関係なく続けているというが素晴しい。ドミニクの料理の腕が上がるにつれて、美味しそうな料理が次から次に出てくる。ストーリーも面白いが脇道も面白い。<o:p></o:p>