田園調布の山荘

「和を以て貴しとなす」・・ 日本人の気質はこの言葉[平和愛好]に象徴されていると思われる。この観点から現代を透視したい。

農業も漁業も規模拡大せよと、馬鹿な経済学のおしえ

2009年03月14日 10時48分15秒 | 時評

農業が儲からないのは、規模が小さいからだという理由づけがもう何十年もなされている。日本は地形が急峻だし、猫の額のような土地にしがみついて農業をやってきた。こんなもの世界に比べればままごとのようなものだ、こんな農業は辞めてもらって、大企業に勤めよう、大企業じゃなくても農業以外に食べていく産業はいくらでもある、世界を相手にしたら日本は頑張れるのだから・・・というようなことが叫ばれ続けている。
儲かるはずの大産業は今深刻な不況の下にあり、失業者がたくさん出ている。農業をやっていれば、最低自分の食べるものは自分で生産出来るから、餓死することはないが、どんなハイテク産業でも儲からなくなったら失業し、この失業は下手をすると飢え死にに至る可能性もある。こんな事態が今世界を覆っている不況といわれるものの内容である。工業というものは機械の効率に依存する産業だから、労働力と原材料さえあれば形の上では規模拡大は容易である。勿論規模拡大は市場からお金を還流させて拡大再生産という道を通じてなされるわけであるが、この拡大はどこまでも無限に可能なのかといえば、市場がそれに連れて拡大しなければあり得ないわけで、いずれかは過剰生産という壁にぶつかり、市場からお金を還流出来なくなる。その時大きな企業は内部留保も大きくしなければ自分の体重を支えることが出来なくなる。今、大銀行も大メーカーもそんな状況になってきている。拡大再生産を資本の運動法則だ。今の経済学の教えは、利益とは拡大再生産をすることを唯一の方途として生まれる。成長の理論である。成長がなければ利益を生み出せないのである。けれども拡大再生産になじまないものに基礎をおいて拡大再生産をしようとするのだから問題が起こるのである。個人労働力は拡大再生産ができない。再生産の一形態である出産は今出産に要するエネルギーの分配がないために生産が停滞している。少子高齢化である。水や空気は拡大再生産はおろか量産もできない。緑も土もそうだ。機械を動かす動力、たとえば石炭や石油はそれを得るために動力を使うという矛盾の中にあり、動力の原料たる化石資源にはそれを取り出すまでに厳しい制約、エネルギー原単位の上昇が立ちはだかる。しかし一企業から見れば、相手を倒すという競争の中で、これらを無理矢理確保するという競争を行うのである。戦争の本質的な原因と背景はこうしたエネルギーの収奪にある。そして経済学は以上の資源を無尽蔵と盲信するか入手難となることを意識の外に置いている。
生産とはエネルギーの移転行為である。このエネルギーの移動は不可逆なものであり、エネルギー保存の法則は生産が無限に行われることを絶対に許さない。生産物が市場に出る場合、通貨と交換されるが通貨とは生産に要したあらゆるエネルギーの累積に対する信用であるという見方も出来る。すなわち現在の通貨不安の根源はエネルギー不安にあり、拡大再生産の起動が壊れたことにことの本質があると考えられる。農業や漁業などの生物生産は反応を無限に加速する方途を持たない。自然が行う生物化学反応はそうしたものである。そうすると農林漁業の拡大再生産は規模を水平に拡大し、土地を収奪することの中でしか実現することは出来ない。しかし農地や海洋の面積は規模の限界がある。別の表現を使えば水や空気は無尽蔵に取り込めない。農林水産業は自然環境の中で基本的な生産が行われる。この二点を動かすわけにはいかない。閉鎖系の中で、換言すれば工業的に、農林技術または水産技術が選択され、はじめて収量を増大する方途を見つける。しかし、それは又エネルギーの法則の束縛を受ける。これを跳ね返す技術開発が梃子になるわけであるが、そんなものが果たして見つかるのか?


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