
「夏暦」52号を紹介する。「かれき」と読む。
王紅花さんの個人誌で年三回刊。全4頁。個人誌の大先輩である。
表紙の絵は松平修文氏。短歌「目を閉ぢて」30首と
小文「ペンネーム「王紅花」騒動記」が載っている。
歳末の庭に物干し竿ぶつけガスボンベ鐘のごとく鳴りたり(「目を閉ぢて」)
<ガスボンベ>はプロパンガスのボンベ。彼女が聞いた鐘はいかなる音か。
小文「ペンネーム「王紅花」騒動記」を自戒しつつ興味深く読んだ。
あるメディアの文化欄の短歌コーナーに、先日刊行された
王紅花歌集『窓を打つ蝶』が紹介されたという。
執筆者は長年コーナーを担当する歌人であり
王紅花自身も大変ありがたく思ったそうだ。
ところが
「作者は上海出身の料理人で、国の違いを超えた夫婦愛」云々と書かれていたという。
知らない人が読めば「ふうん、そうなんだ」と思う他ないだろう。
しかし、「王紅花」はペンネームであり
王紅花は根っからの日本人である。彼女の抗議を受けて
次回の誌面に訂正文が掲載されたそうだが、それで済む話ではない。
とはいえ出てしまった記事は取り返しがつかない。
王紅花は
「執筆者は「王紅花」をネット検索し、アニメのキャラクターの「王紅花」と勘違いしたのだろう」
と推測する。
私も検索してみると・・・
王紅花とは、『アリス・ギア・アイギス』のキャラクター。
上海シャードからやってきた中華料理の天才少女。
伯父が経営する池袋の高級中華料理店「紅龍苑」で働いている。
紅花が店先で売る「アタシの中華まん」は大好評。・・・・
とあった。しかし、これを歌人・王紅花と取り違えることなどあるか!
実際あったのだからビックリである。
王紅花は1970年から、このペンネームで短歌と向き合っているし、
主な短歌辞典を捲れば彼女は載っている。(私は載っていない)
私は王紅花歌集『窓を打つ蝶』が紹介された、あるメディアの
文化欄の短歌コーナーを読んでいないので執筆した歌人が誰か
知らないが、あまりにもお粗末だと呆れるしかなかった。