「おやおや~~?」
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ニヤニヤと笑いながら、健太は佐藤に近付いた。
新品のノートPCに、ベタベタと指紋をくっつける。
「また新品か?ウルトラブック?こりゃ~高かっただろ~?」

そんな健太を前にして、佐藤の顔は見る見る歪んでいった。
その態度に辟易といった表情だ。

健太は嫌がる佐藤に構わず、PCに手を伸ばした。
「これが新しく出たZシリーズかぁ?」

佐藤は曖昧な返事をしながら、一度机の上に出したPCを再びカバンの中に入れた。
その態度に健太が不満を漏らす。
「んだよケチ!見せてもくんねーのか?!」
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佐藤は健太に応えることなく、そのままむっつりと黙り込んだ。
お前が壊すから新しいのを買わなきゃいけなくなるんだろーが
、と怒り心頭だ。
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すると教室に一人の男が入ってきた。
その姿を見て、健太が顔を上げる。
「よぉ、青田!」
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健太が声を掛けると、青田淳は柔らかな笑みを返した。
しかしその表情はいつもより幾らか硬い。
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昨日、淳に食って掛かった健太のことが思い出された。
あの時の健太は怒りの形相で、淳のことを問い詰めた‥。

しかし今日の健太は、にこやかに大きな声で淳に挨拶した。
淳も小さく会釈してそれを返す。
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健太は一つ咳払いをすると、「お前に話がある」と言って、淳の目の前に立った。
「昨日は大人げないとこ見せちまって‥。突然ついカッとしちまってよ」
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健太は居心地悪そうに頭を掻いて、大きな声で笑った。バンバンと淳の肩を叩く。
「先輩らしくなかっただろ?でもお前は分かってくれるよな!こんなこと一度や二度じゃねーし、
俺が結構恵ちゃんのこと気にしてたのも知ってたろーし‥」

頷く淳に向かって、健太はもう一度ハッキリと謝った。
「なんか‥悪かったな!」
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そんな健太に、淳はにこやかに応えた。
「大丈夫ですよ、謝罪なんて」
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健太は再び淳の背中をバンバンと叩きながら言った。
「まぁ、あんま気にすんな!な?」

健太の言葉に、淳は「はい、気にしていません」と言って微笑んだ。
それじゃ、と言って健太に背を向ける。
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健太の顔には笑顔が浮かんではいたが、その胸中はいけ好かない思いでいっぱいだった。
互いに席に着いた後も、健太は淳のスマートな横顔を見ながらむっつりと黙りこんでいた。
先ほど自分が謝罪した後で、淳からの謝罪も聞けると思っていた。
「健太先輩が先に目をつけた恵を奪って申し訳ない」 「先輩を立てなくてすみません」
何か一言だけでも。

新学期に入って、青田淳は赤山雪と付き合っていることが発覚した。
なぜ小西恵を蹴って赤山と付き合っているのか、まだ淳の口から正式に話すら聞いていない‥。
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健太の心に、次第に淳への不信が募っていく。
苛立ちを抱えながら淳を見ていた健太だったが、ふとある物が目に入った。
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それは見慣れない時計だった。
淳がいつもしていたのは、ブルガリだったはずだ。

健太の心がある意図を持って騒ぎ始めた。
彼は心を決めると、一際大きな声で淳に声を掛ける。
「おっ!お前時計変えた?!いや〜かっこいいね。どこのやつ?」
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健太の大声に、教室中の視線が淳の腕時計に注がれた。
沢山の視線を感じながら、健太はこれみよがしにその一言を口にした。
「高いやつなんだろ?な?」

ここで淳が時計のブランドと値段を答えることで、皆の心には嫉妬が湧くはずだ。
それか答えに詰まり、困った顔でも浮かべるか?
何にせよ淳に一泡吹かせたいと思っての、健太の一言だった。

しかし健太の思惑とは外れ、淳は意味深な笑みを浮かべた。
それは皆が淳を取り囲むまでの一瞬の表情だったが、健太をドキリとさせるには有効な時間だった。
「見せて!」 「また買ったん?」

淳は皆に見せるように腕時計を掲げながら、ニッコリと笑顔を浮かべて言った。
「これ良いでしょう?雪と露店を見て回ってたんですが、
彼女がサプライズプレゼントでくれたんです」

予想外の淳の発言に、皆驚いて声を上げた。健太も思いも寄らない答えに、思わず驚愕の表情を浮かべる。
「ゲッ!マジかよ!」 「ノロケテロだー!」

教室はザワザワとざわめいた。
淳を取り囲む男子生徒は勿論、それより外に居る皆も淳の方を見ている。
「お前マジ時計好きな〜」

柳の感想は置いといて、皆の反応は上々だった。露店の物なのにそこまで安物っぽく見えない、と皆口々にその時計を褒める。
「値段は重要じゃないから」と言った淳の答えも好感を感じるものだった。

健太は幾分赤面しながら、一人歯噛みしていた。
これでは値段を聞いた自分が、さもしい人間のように思われても仕方ない‥。
謝罪についても、時計の件に関しても、軍配は淳に上がった。
健太は苛立つ気持ちを抱えながら、彼に対しての不信を一層募らせていく‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<軍配>でした。
健太と淳の駆け引きを感じる回でした。
健太レベルの突発的な思惑になど、先輩は引っかからないですね^^;
そして何気に先輩のジーンズ姿って珍しいですね。
次回は<エプロン姿の君>です。
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引き続きキャラ人気投票も行っています~!
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ニヤニヤと笑いながら、健太は佐藤に近付いた。
新品のノートPCに、ベタベタと指紋をくっつける。
「また新品か?ウルトラブック?こりゃ~高かっただろ~?」
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そんな健太を前にして、佐藤の顔は見る見る歪んでいった。
その態度に辟易といった表情だ。
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健太は嫌がる佐藤に構わず、PCに手を伸ばした。
「これが新しく出たZシリーズかぁ?」
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佐藤は曖昧な返事をしながら、一度机の上に出したPCを再びカバンの中に入れた。
その態度に健太が不満を漏らす。
「んだよケチ!見せてもくんねーのか?!」
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佐藤は健太に応えることなく、そのままむっつりと黙り込んだ。
お前が壊すから新しいのを買わなきゃいけなくなるんだろーが
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すると教室に一人の男が入ってきた。
その姿を見て、健太が顔を上げる。
「よぉ、青田!」
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健太が声を掛けると、青田淳は柔らかな笑みを返した。
しかしその表情はいつもより幾らか硬い。
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昨日、淳に食って掛かった健太のことが思い出された。
あの時の健太は怒りの形相で、淳のことを問い詰めた‥。
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しかし今日の健太は、にこやかに大きな声で淳に挨拶した。
淳も小さく会釈してそれを返す。
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健太は一つ咳払いをすると、「お前に話がある」と言って、淳の目の前に立った。
「昨日は大人げないとこ見せちまって‥。突然ついカッとしちまってよ」
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健太は居心地悪そうに頭を掻いて、大きな声で笑った。バンバンと淳の肩を叩く。
「先輩らしくなかっただろ?でもお前は分かってくれるよな!こんなこと一度や二度じゃねーし、
俺が結構恵ちゃんのこと気にしてたのも知ってたろーし‥」
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頷く淳に向かって、健太はもう一度ハッキリと謝った。
「なんか‥悪かったな!」
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そんな健太に、淳はにこやかに応えた。
「大丈夫ですよ、謝罪なんて」
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健太は再び淳の背中をバンバンと叩きながら言った。
「まぁ、あんま気にすんな!な?」
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健太の言葉に、淳は「はい、気にしていません」と言って微笑んだ。
それじゃ、と言って健太に背を向ける。
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健太の顔には笑顔が浮かんではいたが、その胸中はいけ好かない思いでいっぱいだった。
互いに席に着いた後も、健太は淳のスマートな横顔を見ながらむっつりと黙りこんでいた。
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先ほど自分が謝罪した後で、淳からの謝罪も聞けると思っていた。
「健太先輩が先に目をつけた恵を奪って申し訳ない」 「先輩を立てなくてすみません」
何か一言だけでも。
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新学期に入って、青田淳は赤山雪と付き合っていることが発覚した。
なぜ小西恵を蹴って赤山と付き合っているのか、まだ淳の口から正式に話すら聞いていない‥。
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淳がいつもしていたのは、ブルガリだったはずだ。
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ここで淳が時計のブランドと値段を答えることで、皆の心には嫉妬が湧くはずだ。
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しかし健太の思惑とは外れ、淳は意味深な笑みを浮かべた。
それは皆が淳を取り囲むまでの一瞬の表情だったが、健太をドキリとさせるには有効な時間だった。
「見せて!」 「また買ったん?」
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淳は皆に見せるように腕時計を掲げながら、ニッコリと笑顔を浮かべて言った。
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「ゲッ!マジかよ!」 「ノロケテロだー!」
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教室はザワザワとざわめいた。
淳を取り囲む男子生徒は勿論、それより外に居る皆も淳の方を見ている。
「お前マジ時計好きな〜」
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柳の感想は置いといて、皆の反応は上々だった。露店の物なのにそこまで安物っぽく見えない、と皆口々にその時計を褒める。
「値段は重要じゃないから」と言った淳の答えも好感を感じるものだった。
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健太は幾分赤面しながら、一人歯噛みしていた。
これでは値段を聞いた自分が、さもしい人間のように思われても仕方ない‥。
謝罪についても、時計の件に関しても、軍配は淳に上がった。
健太は苛立つ気持ちを抱えながら、彼に対しての不信を一層募らせていく‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<軍配>でした。
健太と淳の駆け引きを感じる回でした。
健太レベルの突発的な思惑になど、先輩は引っかからないですね^^;
そして何気に先輩のジーンズ姿って珍しいですね。
次回は<エプロン姿の君>です。
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ご解析が別に間違っているわけではありませんが、
健太に対する先輩の態度がどのように変わっているか分かっていただきたいので、ちょっとだけ説明させていただきます。
健太の 「まぁ、あんま気にすんな!な?」
に対する先輩の返答は、「そうします」というよりは、
「(すでに)そうしていました」のほうに近いです。
これはさすがに健太じゃなくてもむっとしますよね。(笑)
あと細かいですが、気になった訳です。
1.「赤山の奇襲攻撃だ!」
これは赤山の攻撃ではありません。。。
彼女持ってない人への淳のノロケ奇襲攻撃ということになるわけでして...ま、どっちでも変わりはないとおもいますけどね。
2.露店の物は安物が多いのに
→露店の売り物なのにそこまで安っぽくは見えないんだな。
だと思います。^^;
ありがとうございます~!
なるほどなるほど、あの淳の態度は確信犯だったのですね!もういい加減健太に嫌気がさしてるのか(笑)
奇襲攻撃、了解です 笑
ノロケの方でしたか~。韓国ではこういう言い回しをするってことですかね。勉強になります~^^
あの「値段が重要じゃない」というセリフは淳のセリフで合っていたでしょうか?
吹き出しがマルだと誰のセリフか分かりづらいので苦労しています‥^^;
またよろしくお願いします~~!!
たなっしーと申します。
去年の暮れにチーズイントラップにハマり、こちら様のブログを毎日読んでます^_^
アプリでは現在と過去がごちゃごちゃしていて全然ストーリーがわからなかったのですが(それでも引き込まれるのがチーズイントラップの凄さ)分かりやすい解説でより楽しめました!
続きが気になって本家の絵だけ見て楽しんでます笑
関係ないですが、静香と恵ちゃんが美術関係で関わりを持ちそうな気がします。
これからもよろしくお願いします(*^_^*)
それ、面白いです…!気づかなかった~
スケッチブックに青田淳を描いた2人つながり~!
本家の恵はその絵が発端で大変なことになってますね~!
驚きの予想でしたので取り急ぎすぎました~。
いくら噂&思い込みがあったとしても、この人の言うことで合っている事ってあるのでしょうか?
我儘いっぱいのプライド丸見えだから、私でもひっかけられそう・・・。
>「これ良いでしょう? 雪と露店を見て回ってたんですが、
彼女がサプライズプレゼントでくれたんです」 (←“雪”って呼び捨て!萌-!)
健太先輩はまんまとひっかかるし、雪と仲のいいところは強調できるし、値段よりも大切なものがあると言っていい人になれるし、健太先輩をさもしいヤツに仕立てられるし・・・。
健太先輩なんてメじゃないですね。コロコロ転がって面白いほど。さすが先輩・・・。
雪ちゃんからもらった露店の時計。(6000円でしたっけ?)
先輩が身に着けると、何でも高級に見えそうです。
は、きっと淳先輩の言葉だと思います!(そう思いたいです!)
そして、先ほどのコメ(↑)ではいかにも計算ずくな感じで書いてしまいましたけど、
「値段が問題じゃない」というのは、先輩の本心だと思いますっ!
えっ淳性格悪いですか。むしろいい加減うんざりもするだろうなか、嫌味を混ぜつつ笑顔で返すあたり
すごいっと思ってしまいました。
それにしても健太先輩・・年齢多分30になってますよね
当初設定29歳だったんで・・
何もしないくせに偉そうにするだけはいっちょまえだわ、
みんなの前で淳をさらし者にしようとするわ、
挙句あっさり反撃されて即死・・・いいとこなし。。
たなっしーさん、面白い予想ですね。
惠と静香の絡み・・なんだかとっても恐ろしいし会話が成立するのかって感じですが。。
こうやってチートラは絡み合って影響しあうところがありますよね。絵をやってるっていうのが伏線な気が。
どんぐりさん
淳はこうやってみると思ってる以上に雪ちゃんを好きそうですよね。結構みんなの前でのろけてるし・・
これは図らずもですけどね。
それにブルガリの時計って、たくさん持っててもお母さんからもらったものだからって、いつも着けてましたよね。
雪ちゃんからもらったのを着けるようになるって結構大きいのかもしれませんね。
あ~しかし結局本体がよければ何をつけてもいいってことですね。
ノロケテロ・・日の当たらない生活を送っている学生には悶絶ものですな・・
ふ◯っしーを彷彿とさせるHN,たなっしーさん^^
はじめまして~!ようこそいらっしゃいました!
本当本当、チートラの魅力って「わけわかんないけど面白い!」ってとこですよね~!私もそこから怒涛のごとくハマり、ブログまで立ち上げることに‥^^;
これからよろしくお願いします~♪
りんごさん
静香と恵はそれぞれ淳の画を描いてますよね~!
二人が対比になり、光と影になっているという回の記事をこの間書きました~^^楽しみにしていて下さいね~
どんぐりさん
先輩ってばどこまで頭が切れるの?!とこの健太先輩とのやり取りで思いましたよね~。
ここまで頭がいいから更に孤高度に拍車がかかっちゃうんでしょうね。お馬鹿なら人生楽しかったかもしれない‥先輩‥(T T)
「値段が問題じゃない」は先の回でも出てきますよね、雪ちゃんがライオン人形を失くした時に。
これも伏線になってるんかなぁ、とここと照らし合わせて思いました。う~ん。。
むくげさん
淳は健太にウンザリでしょうね‥。今期からインターンだし、もう会うこともないと思っているからこんな態度に出てるんだと思います。
しかし先輩の精神構造って、考えれば考えるほど不思議すぎて悩みます。
きっと彼の”好き”は一般人のそれとは大きく違いそうな気がします。相手を思っている気持ちというよりも、自己愛に近い感じ?でしょうか。
しかし時計のこともそうですが、雪が淳にとってすごく特別な存在だということは、確かだと思います。
るるるさん
良かった‥!安心しました。
ありがとうです~~^^