雪と聡美が構内の廊下を歩いていると、不意に健太先輩とすれ違った。
いつもの彼とは違い、幾分ぼんやりとしているようだ。
雪は振り返って彼を呼び止めた。
「先輩!この前は‥てか私のメール見てくれましたか?」
健太先輩はこの間、恵と彼との面会現場に雪が隠れていたことに対して、もう気にしていないと言った。
続けて、恵には俺より青田のほうが似合ってると言って、頭を掻いた。
「恵ちゃんも青田のこと気になってるみたいだし‥お前も青田と仲良くなった甲斐があったな~」
否定する雪だが、健太先輩は授業があるからとそのまま行ってしまった。
どうしてこうなるんだろう‥。
最善策をと考えてきたのに、結局悪い方へ事態は流れてしまっている。
頭を抱え苦悩する雪に、「健太先輩怒ってないだけマシだよ」と聡美は一生懸命フォローした‥。
雪は学校が終わると、急いで地下鉄乗り場まで走った。
実はこの間実家に帰った際、教科書を忘れてきてしまったのだ。
明日も学校があるので、また下宿に帰ってくるつもりの雪は、急いで改札へ向かった。
母親にどの教科書が要るかを電話していると、今日の夜ご飯は焼肉だというので、
晩御飯も食べて下宿に帰ることに決めた。
鼻歌混じりに、雑踏の中を行く。
雪の後ろから、ある人物が付けてきていた。
雪は不穏な視線を感じると、パッと後ろを振り返った。
特に怪しい人影は見えない。
そのまま雪は改札へと向かったが、さすが彼女の感覚は鋭い。
柱の影から、河村亮がその後姿をじっと見ていた。
雪は冷や汗が頬を伝うのを感じていた。
その感覚に、去年横山からストーキングを受けた過去が蘇る。
その後プラットホームへ向かう道すがらも、雪は何度も後ろを振り返った。
忌まわしい横山の記憶を思い出してしまったことにも、嫌な気持ちになってしまう。
亮は雪の後を付けながら、そんな自分を焦れったく感じていた。
「あー‥オレとしたことが何やってんだ‥気になるなら直接聞いてみればいいじゃんかよ!」
亮は意を決すると、早足で彼女の後を追いかける。
雪はぼんやりと電車を待ちながら、音楽でも聞こうとMCプレイヤーを取り出した。
しかし手が滑り、ガシャンと音を立ててそれは地面に落ちてしまう。
慌てて拾おうとしゃがむと、彼女より先に誰かがそれを拾い上げた。
雪がお礼を言おうと顔を上げると、
その男は、真っ直ぐに雪のことを見つめていた。
彼は外国人のような、ハーフのような、独特の雰囲気があった。
雪はその端正さに顔を赤らめながら、たどたどしくお礼を言う。
すると男は、雪に「おい」と声を掛け、ストレートにこう聞いた。
「お前、青田淳とどういう関係?」
雪は一瞬固まったが、最近この質問を受けるのは実は三度目‥。(直美さん達、遠藤さん、そしてこの初対面の男‥)
頭を抱えて悶絶する雪に、亮は不信な目を向けた。
もう一度どういう関係か亮が聞くと、雪はパッと顔を上げて言った。
「そういうあなたはどちら様ですか?!」
亮は少し黙った後、目を合わせずに俺は淳の友達だと言った。
早く質問に答えろと急かす彼に、雪は苛つきを覚える。
「何の関係でもありません!」
その取り付く島もない答えに、亮は溜息を吐いた。
そして雪のことを、ジロジロと観察し始める。
「まぁ‥そうだよな。ルックス、背丈、ファッションからしても‥ナイもんな」
続けて「淳の奴がこんな低レベルの女を傍に置くはずがない」と言った亮に、さすがに雪もカチンと来た。
「あの!さっきから黙って聞いてりゃあぬけぬけと‥!何なんですか?!」
亮は天を仰ぎながら、納得出来ないながらも感じていた疑問が口を吐いて出た。
「んー‥、でもあいつのニヤニヤしたあの眼差し‥」
「絶対何かあるはずなんだよな‥」
「??」
プラットホームに風が吹き込み、電車の到着を告げるアナウンスがこだまする。
まだ青田先輩との関係を聞いてくる男を、無視して雪は電車に乗り込もうとした。
すると男は「待てよ」と、雪の腕を掴んだ。
雪の脳裏に、横山から受けたストーキングの記憶が鮮烈に蘇る。
その恐怖にも似た衝動を受けて、雪は咄嗟に叫んでいた。
「ぎゃあっ?!何すんのよ!!」
亮は、いきなりのその剣幕に驚きを隠せず、その目を見開いた。
そんな彼の目の前で扉は閉まり、淳と何かしらの関係を持った彼女を乗せて、地下鉄は発車したのだった。
雪は男から見えない席へ座ると、電車が彼を過ぎ去るまで身じろぎせずその身を凍らせた。
突然腕を掴まれたとはいえ、自分でも驚くくらいの大声を出したことが、なんだか恥ずかしい。
けれどあの男は一体何者なんだろう‥。
本当に青田先輩の友達なのか?なんだか変な人みたいだけど‥
雪は電車に揺られながら、彼の残像が瞼の裏に映るのを感じていた。
轟音を上げて過ぎ去る地下鉄を見送りながら、亮は一人プラットホームに佇んでいた。
しかし次の瞬間彼は被っていたキャップを地面に叩きつけると、苛立ちのあまり地団駄を踏む。
「なんだぁあのキ◯ガイ女?!淳とクレイジー同士お似合いじゃねーかよ!」
すると携帯が鳴った。♪卑怯と罵るな~♪との着信とともに表示された名前は、
彼の元職場の同僚だ。
「おい!もう電話してくんなって言っただろ?!オレはもうお前達とは縁を切ったんだよ!」
同僚は亮の言葉を遮って、社長が怒り狂っているということを彼に伝えた。
亮が社長から金を借りた巻き上げたまま姿を消したということで、社長は机をひっくり返す大騒ぎを起こし、
元職場は軽いパニックに陥っているらしいのだ。
亮は、俺が上京したことは社長に伝えるなと同僚に命令すると、もう切るぞと言って電源を切った。
気がかりな同僚の言葉に、亮は小さな胸騒ぎを感じ、黙り込む。
「Hi~! Where are you from?!」
突然亮は、彼を外国人だと勘違いしたバックパッカーに声を掛けられた。
しかし亮は英語が分からないため絡まれていると思い、大騒ぎし始める。
「何ほざいてやがんだ?!失せろコノヤロー!オレはヤンキーじゃねぇぞ!!」
地下鉄の構内に、その大声はしばし響いていたのだった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<ファーストコンタクト>でした!
亮の着メロはこれらしいです↓
CAN - Spring days of my life, Music Camp 20020202
亮と雪の初対面でしたね。高校時代は淳とのことを散々聞かれてウンザリだった亮が、今度は雪にしつこく聞くという‥。
今回は日本語版未掲載分もあり、漫画の流れを少し変えて記事を書きました。ご了承下さいませ。。
次回は<彼の周囲>です。
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いつもの彼とは違い、幾分ぼんやりとしているようだ。
雪は振り返って彼を呼び止めた。
「先輩!この前は‥てか私のメール見てくれましたか?」
健太先輩はこの間、恵と彼との面会現場に雪が隠れていたことに対して、もう気にしていないと言った。
続けて、恵には俺より青田のほうが似合ってると言って、頭を掻いた。
「恵ちゃんも青田のこと気になってるみたいだし‥お前も青田と仲良くなった甲斐があったな~」
否定する雪だが、健太先輩は授業があるからとそのまま行ってしまった。
どうしてこうなるんだろう‥。
最善策をと考えてきたのに、結局悪い方へ事態は流れてしまっている。
頭を抱え苦悩する雪に、「健太先輩怒ってないだけマシだよ」と聡美は一生懸命フォローした‥。
雪は学校が終わると、急いで地下鉄乗り場まで走った。
実はこの間実家に帰った際、教科書を忘れてきてしまったのだ。
明日も学校があるので、また下宿に帰ってくるつもりの雪は、急いで改札へ向かった。
母親にどの教科書が要るかを電話していると、今日の夜ご飯は焼肉だというので、
晩御飯も食べて下宿に帰ることに決めた。
鼻歌混じりに、雑踏の中を行く。
雪の後ろから、ある人物が付けてきていた。
雪は不穏な視線を感じると、パッと後ろを振り返った。
特に怪しい人影は見えない。
そのまま雪は改札へと向かったが、さすが彼女の感覚は鋭い。
柱の影から、河村亮がその後姿をじっと見ていた。
雪は冷や汗が頬を伝うのを感じていた。
その感覚に、去年横山からストーキングを受けた過去が蘇る。
その後プラットホームへ向かう道すがらも、雪は何度も後ろを振り返った。
忌まわしい横山の記憶を思い出してしまったことにも、嫌な気持ちになってしまう。
亮は雪の後を付けながら、そんな自分を焦れったく感じていた。
「あー‥オレとしたことが何やってんだ‥気になるなら直接聞いてみればいいじゃんかよ!」
亮は意を決すると、早足で彼女の後を追いかける。
雪はぼんやりと電車を待ちながら、音楽でも聞こうとMCプレイヤーを取り出した。
しかし手が滑り、ガシャンと音を立ててそれは地面に落ちてしまう。
慌てて拾おうとしゃがむと、彼女より先に誰かがそれを拾い上げた。
雪がお礼を言おうと顔を上げると、
その男は、真っ直ぐに雪のことを見つめていた。
彼は外国人のような、ハーフのような、独特の雰囲気があった。
雪はその端正さに顔を赤らめながら、たどたどしくお礼を言う。
すると男は、雪に「おい」と声を掛け、ストレートにこう聞いた。
「お前、青田淳とどういう関係?」
雪は一瞬固まったが、最近この質問を受けるのは実は三度目‥。(直美さん達、遠藤さん、そしてこの初対面の男‥)
頭を抱えて悶絶する雪に、亮は不信な目を向けた。
もう一度どういう関係か亮が聞くと、雪はパッと顔を上げて言った。
「そういうあなたはどちら様ですか?!」
亮は少し黙った後、目を合わせずに俺は淳の友達だと言った。
早く質問に答えろと急かす彼に、雪は苛つきを覚える。
「何の関係でもありません!」
その取り付く島もない答えに、亮は溜息を吐いた。
そして雪のことを、ジロジロと観察し始める。
「まぁ‥そうだよな。ルックス、背丈、ファッションからしても‥ナイもんな」
続けて「淳の奴がこんな低レベルの女を傍に置くはずがない」と言った亮に、さすがに雪もカチンと来た。
「あの!さっきから黙って聞いてりゃあぬけぬけと‥!何なんですか?!」
亮は天を仰ぎながら、納得出来ないながらも感じていた疑問が口を吐いて出た。
「んー‥、でもあいつのニヤニヤしたあの眼差し‥」
「絶対何かあるはずなんだよな‥」
「??」
プラットホームに風が吹き込み、電車の到着を告げるアナウンスがこだまする。
まだ青田先輩との関係を聞いてくる男を、無視して雪は電車に乗り込もうとした。
すると男は「待てよ」と、雪の腕を掴んだ。
雪の脳裏に、横山から受けたストーキングの記憶が鮮烈に蘇る。
その恐怖にも似た衝動を受けて、雪は咄嗟に叫んでいた。
「ぎゃあっ?!何すんのよ!!」
亮は、いきなりのその剣幕に驚きを隠せず、その目を見開いた。
そんな彼の目の前で扉は閉まり、淳と何かしらの関係を持った彼女を乗せて、地下鉄は発車したのだった。
雪は男から見えない席へ座ると、電車が彼を過ぎ去るまで身じろぎせずその身を凍らせた。
突然腕を掴まれたとはいえ、自分でも驚くくらいの大声を出したことが、なんだか恥ずかしい。
けれどあの男は一体何者なんだろう‥。
本当に青田先輩の友達なのか?なんだか変な人みたいだけど‥
雪は電車に揺られながら、彼の残像が瞼の裏に映るのを感じていた。
轟音を上げて過ぎ去る地下鉄を見送りながら、亮は一人プラットホームに佇んでいた。
しかし次の瞬間彼は被っていたキャップを地面に叩きつけると、苛立ちのあまり地団駄を踏む。
「なんだぁあのキ◯ガイ女?!淳とクレイジー同士お似合いじゃねーかよ!」
すると携帯が鳴った。♪卑怯と罵るな~♪との着信とともに表示された名前は、
彼の元職場の同僚だ。
「おい!もう電話してくんなって言っただろ?!オレはもうお前達とは縁を切ったんだよ!」
同僚は亮の言葉を遮って、社長が怒り狂っているということを彼に伝えた。
亮が社長から金を借りた
元職場は軽いパニックに陥っているらしいのだ。
亮は、俺が上京したことは社長に伝えるなと同僚に命令すると、もう切るぞと言って電源を切った。
気がかりな同僚の言葉に、亮は小さな胸騒ぎを感じ、黙り込む。
「Hi~! Where are you from?!」
突然亮は、彼を外国人だと勘違いしたバックパッカーに声を掛けられた。
しかし亮は英語が分からないため絡まれていると思い、大騒ぎし始める。
「何ほざいてやがんだ?!失せろコノヤロー!オレはヤンキーじゃねぇぞ!!」
地下鉄の構内に、その大声はしばし響いていたのだった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<ファーストコンタクト>でした!
亮の着メロはこれらしいです↓
CAN - Spring days of my life, Music Camp 20020202
亮と雪の初対面でしたね。高校時代は淳とのことを散々聞かれてウンザリだった亮が、今度は雪にしつこく聞くという‥。
今回は日本語版未掲載分もあり、漫画の流れを少し変えて記事を書きました。ご了承下さいませ。。
次回は<彼の周囲>です。
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あと、河村さんのあの帽子。。
色といい無地柄といい、作業帽にしか見えないんだが。この帽子にこそ、何かロゴを入れて欲しかった。プリン5トンでもいいから(笑)
これは、さよならイエスタディでしたっけ?TUBEの‥。似てる気がします(^◇^;)
懐かしい。・゜・(ノД`)・゜・。
調べてみたら↓だそうで。
http://www.kankanbou.com/pusan/item/32/catid/8
雪の華は有名ですけどね。まさかチューブがチャゲアス風?に歌われてたとは。
yukkanenさんのおかげで、マンガを通じて韓国の歌謡事情もチョイチョイ分かってきた気がします~♪
韓国でテンボル歌ったらウケるんだろか…
本音ではパクリでなくて安心しました(^◇^;)
yukkanenさん
日本語未掲載部分をいつもありがとうございます。
日本語版で『何だかつながりがわかりにくいなぁ~』って、昔にひっかかった部分がこのブログで本家版を載せていただいた上に解釈付きだからクリアになるので嬉しいですU+1F3B6
知らなかったー!
teaさんちょびこさん、情報ありがとうございます!
しかし本当チャゲアス風ですね。続けてYAHYAHYAHが聞こえてきそうです。
テンボルカラオケ入ってるんですかね。
練習してしまいそう‥。