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秋もすっかり深まり、日の入りも早くなった。
その日、雪はレポートを完成させるための場所を探していた。
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静かな場所が良いという雪に、聡美が教育学科の資料室なら、
今の時期教育学科の子たちは教育実習に行っていてあまり人はいないみたいだと教えてくれた。
教室の片隅で、平井和美とその友人もその話を聞いている。
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友人は和美に私達もそっちへ行こうか?と言ったが、
和美はすぐに断った。そして廊下を歩いている青田先輩を見つけ、その一行に付いて行く。
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今日中にレポートを完成させてしまいたい。
長丁場を見込んでコンビニで食料調達をした雪は、肌寒くなってきた季節に思いを馳せながら資料室へと向かった。
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するとこの間和美と言い争っていたホームレスが、
女学生ばかりを狙ってイチャモンをつけているのを見かける。
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まさか自分の顔を覚えてたりしないよね?と不安に思った雪は、
ホームレスに見つからないように裏道を通って行った。
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教育学科の資料室は、聡美の言った通り静かだった。
警備室の警備員もその静けさに居眠りをしているくらいである。
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資料室の中は、端っこの方に座ったのが意味のないくらいガランとしていた。
しかし今の雪にはこの方が都合が良い。
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雪はレポートに集中した。
前学期は奨学金も少ししかもらえなかったので、それを取り返すつもりで気合が入っている。
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静かな環境が功を奏して、レポートは捗った。
気がついたら3時間が経過していて、いつのまにか資料室には雪一人しか残っていなかった。
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休憩もせず根を詰めていた雪は、ふと肩の凝りと眠気を感じて時計を見た。
終電までには帰らないといけないな‥と思った時だった。
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ふいに、誰かの話し声が聞こえた。
それは後ろの資料棚の方からだった。
雪は、恐る恐る振り返る‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/25/08588e5de9f7f54db8c81b9ab915c420.jpg)
いつかの‥確か青田先輩がお金をあげたホームレスだった。
ぶつぶつと、彼女は何かをしきりに呟いている。
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雪が動揺していると、彼女はこちらに向かって右手を上げた。
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割れた瓶を持っている。あれで殴られでもしたらひとたまりもない。
雪に向かって手招きをするホームレスから、逃げ出そうと駆け出した時だった。
「うわっ?!」
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雪は勢い良く椅子に弁慶の泣き所をぶつけてしまい、その痛みにうずくまった。
すると後ろから髪の毛を捕まれ、身動きが取れなくなる。
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「どうして知らん顔するんだ」
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雪は大声で助けを呼んだ。
誰かいませんか、助けて下さい!
その叫びは、しんとした資料室に響くだけ。
ホームレスは尚もブツブツと何かを呟きながら、雪の顔の近くで瓶を振り上げた。
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よろよろとしたその動きに、雪は落ち着いて対処すれば大丈夫だと判断した。
「お、おばさん!」
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雪はホームレスの腕を掴むと、そのまま力を込めて瓶を投げ落とした。
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瓶は手の届かないところまでゴロゴロと転がって行く。
ホームレスがそれに気を取られた隙に、雪は彼女を突き飛ばして入り口へと走った。
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ドン!!
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次の瞬間、雪は誰かにぶつかった。
悲鳴を上げかけたが、顔を上げるとそれは警備員さんだった。
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どうかしたのかと不思議がっている警備員は、次の瞬間資料室に居るホームレスに気がついた。
警備員はホームレスに駆け寄ると、雪に裏門の警備を呼んできてくれと指示を出した。
雪がドアノブに手をかけると、鋭い痛みが走る。
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先ほどの瓶を投げた瞬間に、右掌をざっくりと切ってしまっていた。
恐怖と怒り、そして動揺で雪の足はガクガクと震え出した。
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心臓がドクドクと大きく鼓動を打つのを、ただ混沌とした思いの中で聞いていた‥。
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<雪>巻き込まれた災難(2)へ続きます。
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