雪が構内を歩いていると、青田先輩が声を掛けて来た。
手には先日雪が恵に貸した本を持っている。
雪はお礼を言うと、本を受け取った。彼が髪の毛を切ったことに内心気がつきながら。
そのままニコニコと雪の前に立っている先輩に、
雪はどうかしたんですかと声をかける。
「俺、何か変わったと思わない?」
雪は最初彼が何を言っているのか分からなかったが、もしかしてと思い言ってみた。
「か‥髪?髪が短く‥」「うんうん!当たり!」
変じゃないかなぁと髪の毛を触りながら雪を見る先輩に、
雪はまさか嫌味じゃないよな‥と訝しげに思いながら、彼の髪型を褒めた。
(彼女は髪の毛にコンプレックスがあるので、サラサラヘアの彼が髪の毛について言及する事にことの外敏感だ)
「とっても似合ってますよ!先輩は格好いいから何だって‥」
まぁ嘘ではないが、とりあえずリップサービス‥と思いつつ、雪はにこやかに言った。
「え?本当に?」
雪の予想に反して、青田先輩は真顔で返して来た。
リップサービスという心の声が聞こえたんじゃないかと思うような反応に、雪はたじろぎながら尚の事褒める。
「あー‥、ありがと」
掴みにくい彼の見せるその表情は、多分照れてる時のもの。
雪はムズムズしながら、「本当のことを言ったまでです‥」と太鼓を叩いた。
遠藤修が廊下を歩いていると、ふと前に赤山雪が居るのが目に入った。
彼女のサインが必要な書類が事務室にあり、折を見て呼びだそうと思っていたところだったので、
遠藤は早速声を掛ける。
すると壁の影に隠れていて見えなかった、彼女が談笑していた相手と目が合った。
青田淳‥。
遠藤はビクッと身体が強張るのを感じた。
遠藤は青田淳から視線を外し、雪に事務室に寄るよう言うと、そのまま早足で去って行った。
雪は先輩にお先に失礼しますと言うと、早足の遠藤を小走りで追う。
雪の心に、モヤモヤとしたものが膨れ上がった。
なんだろう今の‥。
雪の鋭敏さが、先ほどの遠藤と先輩の間にあった変な空気を察知していた。
見ないフリ見ないフリ‥。気にしない気にしない‥。
雪はその背中を追いながら、必死に頭をもたげるものを振り切ろうとした。
事務室では、遠藤がブラインドの隙間から窓の外を窺っていた。
雪は就活キャンプ参加申込書の不参加欄にチェックを入れると、そのまま事務室を出ようとした。
すると、遠藤が声を掛ける。
「お前、青田と仲良いのか?」
雪はなぜこの人にそんなことを聞かれるのか甚だ疑問だったが、
作り笑いを浮かべると、たまに話す程度だと答えた。
雪が事務室から出て行くと、遠藤は再びブラインドの隙間から窓の外を見た。
事務室の丁度下のあたりに、青田淳の姿が見える。
にこやかに、通りかかった後輩達に挨拶をしていた。
遠藤は彼の笑顔を見ながら、あの忌まわしい記憶を思い出していた。
何を考えてやがるんだ‥
遠藤は青田淳の姿を見つめながら、心の中がざわめくのを感じた。
また何か企んでいるんだろうか、また自分を脅迫してきやしないか‥。
前を見つめる青田淳であったが、次の瞬間遠藤と目が合った。
遠藤は弾けるように窓から身を離すと、高鳴る心臓の音を聞きながら俯いた。
ブラインドの締められた事務室は暗く、彼の心の中も暗雲が立ち込めていくような気がした。
お気に入りの歌を口ずさみながら建物から出てきた雪は、彼の姿に気が付いた。
目が合うと、先輩は笑って雪に手を振る。
「ここで何してるんですか?」「もうそろそろ出てくるかと思って待ってたんだ」
裏門か正門かと聞く先輩に、雪は正門と答えた。
しかしやはり彼の行動の真意は掴めず、なんだかぎくしゃくしてしまう。
すると偶然、健太先輩と佐藤広隆が雪たちの傍を通りがかった。
この間喧嘩をした二人だが、和解のために飲みに行くと言う。
雪は健太先輩に恵のことを切り出そうかと思ったが、その雰囲気に結局口を噤んだ。
次授業で会った時言うしかないな‥と去って行く健太先輩の後ろ姿を見ていた雪だが、
次の瞬間、青田先輩が大きな声を出した。
「雪ちゃん!足元に何かいる‥!」「ぎゃあっ?!」
叫びながら、バタバタとその場で足を動かした雪だが、その足元には何も居なかった。
雪が呆気に取られていると、青田先輩は無邪気な笑い声を上げた。
「ぷははは!イタズラだよ!」
「イ‥イタズラ‥?」
目を丸くした雪に、先輩はやりすぎたかと謝って来た。
雪は事態が飲み込めずにいたが、とりあえずわざと明るく笑って見せる。
すると先輩はまた笑顔になり、こんなことするのは初めてだと無邪気に笑った。
よりによってなぜ私にこんなことを‥。雪は掴めない彼に戸惑った。
「イタズラってすごい面白いのな」「‥先輩はやめた方がいいかと‥」
「なんで?」「んー‥、何か違う気が‥」
「どんな風に?」「いや、なんとなく‥」
「あれ?虫がついてる‥」「もう騙されませんよ‥」
二人が構内を歩く様子を、ベンチに座った男が新聞で顔を隠しながらこっそり見ていた。
その後姿が見えなくなると、男は新聞を下ろして舌打ちする。
「‥チャラチャラしやがって‥」
亮は苛つきを感じていた。
女を前にしてあんな無邪気に笑う淳は、初めて見た、と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
雪が事務室の建物から出てきた時に歌っていた歌はコレです↓
Maroon 5 - This Love MUSIC VIDEO
作者さんがMaroon5のファンらしいですね!
今回髪の毛を切った先輩ですが、前回写メ撮った時に「先輩の前髪屋根みたい」って雪が言ったからでしょうね(笑)
次回は<接触>です。
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手には先日雪が恵に貸した本を持っている。
雪はお礼を言うと、本を受け取った。彼が髪の毛を切ったことに内心気がつきながら。
そのままニコニコと雪の前に立っている先輩に、
雪はどうかしたんですかと声をかける。
「俺、何か変わったと思わない?」
雪は最初彼が何を言っているのか分からなかったが、もしかしてと思い言ってみた。
「か‥髪?髪が短く‥」「うんうん!当たり!」
変じゃないかなぁと髪の毛を触りながら雪を見る先輩に、
雪はまさか嫌味じゃないよな‥と訝しげに思いながら、彼の髪型を褒めた。
(彼女は髪の毛にコンプレックスがあるので、サラサラヘアの彼が髪の毛について言及する事にことの外敏感だ)
「とっても似合ってますよ!先輩は格好いいから何だって‥」
まぁ嘘ではないが、とりあえずリップサービス‥と思いつつ、雪はにこやかに言った。
「え?本当に?」
雪の予想に反して、青田先輩は真顔で返して来た。
リップサービスという心の声が聞こえたんじゃないかと思うような反応に、雪はたじろぎながら尚の事褒める。
「あー‥、ありがと」
掴みにくい彼の見せるその表情は、多分照れてる時のもの。
雪はムズムズしながら、「本当のことを言ったまでです‥」と太鼓を叩いた。
遠藤修が廊下を歩いていると、ふと前に赤山雪が居るのが目に入った。
彼女のサインが必要な書類が事務室にあり、折を見て呼びだそうと思っていたところだったので、
遠藤は早速声を掛ける。
すると壁の影に隠れていて見えなかった、彼女が談笑していた相手と目が合った。
青田淳‥。
遠藤はビクッと身体が強張るのを感じた。
遠藤は青田淳から視線を外し、雪に事務室に寄るよう言うと、そのまま早足で去って行った。
雪は先輩にお先に失礼しますと言うと、早足の遠藤を小走りで追う。
雪の心に、モヤモヤとしたものが膨れ上がった。
なんだろう今の‥。
雪の鋭敏さが、先ほどの遠藤と先輩の間にあった変な空気を察知していた。
見ないフリ見ないフリ‥。気にしない気にしない‥。
雪はその背中を追いながら、必死に頭をもたげるものを振り切ろうとした。
事務室では、遠藤がブラインドの隙間から窓の外を窺っていた。
雪は就活キャンプ参加申込書の不参加欄にチェックを入れると、そのまま事務室を出ようとした。
すると、遠藤が声を掛ける。
「お前、青田と仲良いのか?」
雪はなぜこの人にそんなことを聞かれるのか甚だ疑問だったが、
作り笑いを浮かべると、たまに話す程度だと答えた。
雪が事務室から出て行くと、遠藤は再びブラインドの隙間から窓の外を見た。
事務室の丁度下のあたりに、青田淳の姿が見える。
にこやかに、通りかかった後輩達に挨拶をしていた。
遠藤は彼の笑顔を見ながら、あの忌まわしい記憶を思い出していた。
何を考えてやがるんだ‥
遠藤は青田淳の姿を見つめながら、心の中がざわめくのを感じた。
また何か企んでいるんだろうか、また自分を脅迫してきやしないか‥。
前を見つめる青田淳であったが、次の瞬間遠藤と目が合った。
遠藤は弾けるように窓から身を離すと、高鳴る心臓の音を聞きながら俯いた。
ブラインドの締められた事務室は暗く、彼の心の中も暗雲が立ち込めていくような気がした。
お気に入りの歌を口ずさみながら建物から出てきた雪は、彼の姿に気が付いた。
目が合うと、先輩は笑って雪に手を振る。
「ここで何してるんですか?」「もうそろそろ出てくるかと思って待ってたんだ」
裏門か正門かと聞く先輩に、雪は正門と答えた。
しかしやはり彼の行動の真意は掴めず、なんだかぎくしゃくしてしまう。
すると偶然、健太先輩と佐藤広隆が雪たちの傍を通りがかった。
この間喧嘩をした二人だが、和解のために飲みに行くと言う。
雪は健太先輩に恵のことを切り出そうかと思ったが、その雰囲気に結局口を噤んだ。
次授業で会った時言うしかないな‥と去って行く健太先輩の後ろ姿を見ていた雪だが、
次の瞬間、青田先輩が大きな声を出した。
「雪ちゃん!足元に何かいる‥!」「ぎゃあっ?!」
叫びながら、バタバタとその場で足を動かした雪だが、その足元には何も居なかった。
雪が呆気に取られていると、青田先輩は無邪気な笑い声を上げた。
「ぷははは!イタズラだよ!」
「イ‥イタズラ‥?」
目を丸くした雪に、先輩はやりすぎたかと謝って来た。
雪は事態が飲み込めずにいたが、とりあえずわざと明るく笑って見せる。
すると先輩はまた笑顔になり、こんなことするのは初めてだと無邪気に笑った。
よりによってなぜ私にこんなことを‥。雪は掴めない彼に戸惑った。
「イタズラってすごい面白いのな」「‥先輩はやめた方がいいかと‥」
「なんで?」「んー‥、何か違う気が‥」
「どんな風に?」「いや、なんとなく‥」
「あれ?虫がついてる‥」「もう騙されませんよ‥」
二人が構内を歩く様子を、ベンチに座った男が新聞で顔を隠しながらこっそり見ていた。
その後姿が見えなくなると、男は新聞を下ろして舌打ちする。
「‥チャラチャラしやがって‥」
亮は苛つきを感じていた。
女を前にしてあんな無邪気に笑う淳は、初めて見た、と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
雪が事務室の建物から出てきた時に歌っていた歌はコレです↓
Maroon 5 - This Love MUSIC VIDEO
作者さんがMaroon5のファンらしいですね!
今回髪の毛を切った先輩ですが、前回写メ撮った時に「先輩の前髪屋根みたい」って雪が言ったからでしょうね(笑)
次回は<接触>です。
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なんで雪ちゃんに聞くのかなぁ…ていうより、そもそもなんでこんなシーンを入れるんだろって思ってました。髪切ったくらいでいちいち自分から女の子にどう?とか聞くなんて気色悪すぎるぜ青田淳!て。
おまけに雪ちゃんは髪の話題に関しては、コンプレックスゆえにとっても敏感だから、前に自分が先輩にスネオって言ったコト忘れてるみたいだし。笑
師匠、さすがです。パチパチ
ではここで問題です。
先輩は、なんで、生まれて初めてのイタズラを、雪ちゃんにしたんでしょー。
スネオヘアー発言への恨みから?リップサービスって言った心の声が聞こえたから?
この時点で、彼はかなり雪ちゃんに心を開いてるんですかね。河村さんも、誰かといてあんなに楽しそうに笑う淳の姿はあまりに珍しいからか、何度か回想してますもんね。
この時の先輩、すごくいいです。
このまま、心を開ける相手に出会って素直になって生きていく…という流れになるかと思いきや、これはまだまだほんの一片でしかないんですよね。
髪型の件、今回もスッキリさせていただきました、あー!爽快な月曜日♪
日本語版、更新もされましたしねー(o^^o)
ここのイタズラの描写、ちょっと浮いてますよね!
写メ撮って髪切って上機嫌ってだけでは済ませられない違和感を感じました。
だからここは先輩うんぬんよりも、亮に”楽しそうな淳”を見せるために作者さんが苦肉の策で入れた描写なのかな~と考えてます。
ちょびこさんはどう思われます?!
1 たわいないことでふざける先輩→
雪ちゃんに心を開いてる
そんな一面を引き出す雪ちゃんのかわいさ
先輩の期待を裏切らない反応をする面白い雪ちゃん(まさか抱きつかせようとしたとか…←腐女子的発想w)
先輩はけっこーつまらんコトでぷはぷは笑う
2 初めて試したくだらないイタズラ→
雪ちゃんに心を開いてる
今までこんなコトすらしたコトがなかった哀愁(実はこんなイテズラを仕掛けられる相手をずっと求めていたw)
3 やりすぎたかな、と反省するも、「わぁ~お」と場を繕う雪ちゃんの無理のある態度にソッコー安心してまた浮かれる→
案外単純
雪ちゃんに心を開いている
1、2、3→
カワイイ一面ではあるが、雪ちゃんにとっては不可解かつ違和感を増幅させた行動
4 屈託ない笑顔→
河村さん用
なんなんだ。結局まとまりませんが、4に辿り着くべく1、2、3の要素を盛り込んだかな、と。
長く書いたけど、要は師匠が仰る通り。笑
あと、雪ちゃんがあんなに派手に驚いて、通行人も見て行く中、そういう視線は気にしない先輩、ステキ萌って思いました。ココが横山と違うとこ。笑
おお~!沢山の分析ありがとうございます!
2,の実はずっとこんなイタズラを仕掛ける相手を求めていた、とかいいですね!
日々どんなんにしようかな~とか考える先輩萌えです。
先輩結構笑いの沸点低そうですよね。雪の言動がツボっぽいですしね。
あの「プハハハ」はいいですね。音声で聴いてみたいです(危)
人々からの視線を気にしない先輩、さすがですね。
芸能人的というか、見られるのが当たり前の人生だとああいう余裕が生まれるんですかね。
あ、そういえば最新話の隠されたハングル、今見たら消されてましたよ!やはり誤植だったんですかね。
なんせ柔らか~いシルキータッチな声を想像してるモンですから、動画の声はちと違う…と感じちゃいました。
イメージとしてはブッキー?妻夫木聡があともう15センチ程足が伸びた(のび太)ら、私の中の青田先輩のイメージなんですけどねー、顔も声も。
韓国語版、先ほど確認に行ってまいりました。うーん、消えてる!笑
ほんと、あのイタズラシーンは、
『 U+2022 U+2022 U+2022 』って感じでしたので。
こんな浮かれたとこ見たことないって様子をどうにか作ったというのに納得できます^ ^
ヴォイスウェブトゥーンなるものをご存知ですか…?なんかCDがあるみたいですよね!
それのだったらちらっと声聴けますよ~。
雪ちゃんの声が想像よりかわいらしかったです。やっぱり自由に想像してる方がよいのかな…。
あ、でも、ぷはははは…は聴きたい。笑
あとソラ~も。萌
マルーン5久々聴きました~。
しかしわたし、『てん』と入力すると、テンボルが最初の変換候補にあがるのです…。どんだけテンボル~。笑
Yukkanen さんは、ピーポくんに似てるのですね☆かわいらしい…(*´艸`)
今夜の更新はいよいよ…ですね?!ふふふ。
なるほど!ブッキーですか!
私の中のイメージは向井理さんなんですよね~
それで河村さんが城田優さんです!2人とも身長180オーバーなんで良いですよ!日々妄想しています。(危)
>りんごさん
ボイスウェブトゥーン、youtubeので見ました見ました!先輩の声は及第点ですね(何様)
「プハハハ」は聴けませんが、「ソラ」は一回だけ聴けました!なかなか良いですね(だから何様)
雪の声はもう少し落ち着いてるイメージですけどね~~
作者さん的には、健太先輩と聡美の声が想像通りらしいですよ。
私のPCも「てん」だとテンボル最初の候補ですよ!笑
テンボル普及委員としては嬉しい限りです!(いつの間に)
プロフィール欄こっそり変えたのお気づきでしたか!さすがりんごさん!
ピーポくんがブログ書いてるのを想像していて下さい。。