
雪は先ほど亮から言われた一言に、目を丸くしてしまっていた。
「オレら、ダチだもんな?」と亮は、雪に向かって言ったのだ‥。

そのまま黙っている雪に対し、亮はもう一度聞いた。
「どーした?ダチじゃねーのか?」

当然のようにそう口にする亮を、雪はじっと眺めていた。
雪は幾分驚いていたのだ。亮の口から先にその言葉が飛び出したということに。

しかしやがて雪はニッコリと笑顔を返し、亮からの質問に頷いて見せた。
「いえ‥友達ですよ~?」 「だーよなー?」

亮は続けて、自分達は「友達」なのだからそんなに難しく考える必要は無い、と彼女に言った。
雪は頭を掻きながら、「河村氏は気を使わなくて大丈夫ですよ。この問題はちゃんと先輩と私で解決しますから」と亮に言う。

そう言って笑顔になった雪を見て、亮はホッとした。
彼女の笑顔を見れるこの「友達」という距離が、彼女の傍に居ることの出来る最短距離だ。

亮は暫し雪のことを見つめていたが、不意にとあることを思い出してジャケットのポケットに手を突っ込む。
「あ、そーだ!ではオレ様がお友達にこれをくれてやろう」

ハテナマークを頭に浮かべる雪に、亮は包装紙で包まれたそれを差し出した。
「ほら、受け取れ」

「何ですか?これ」と問う雪に、亮は「見りゃ分かるって」と中身を見ることを促した。
包みの中を覗き込んだ雪は、思わず「へぇ‥」と声を漏らす。


すると亮は、まるで説教するように雪に注意を始めた。
「いや、変な奴がお前を追っかけ回してるみてーだし、お前夜間授業も多いだろ?
こんな武器一つくらいは常備しとくべきだろ。煉瓦で頭かち割る奴もいるこんなポイズンな世の中‥。
変態野郎のことにしてもそうだけどよ、あれ以来例えば防犯ブザーみてーなもんとか‥何か持ち歩いてねーの?」

亮の説教に対して雪は、「考えてみたこともなかった」とキョトンとして言った。
「一応レコーダーは買ったけど」と雪は付け加えたが、
亮は「そんなものはコトが起こってからじゃ何の意味も無い」と言って怒る。

亮は腕組みをしながら、幾分呆れたような表情でこう続けた。
「現に危ない目にも合ってんのに、
用心深くなるどころか輪をかけて無茶しようとするからよぉ‥」

雪は亮からの心配を受け取りながら、少し微妙な表情で彼を見ていた。
その心配の裏にある、彼の本心をなんとなく察しながら。

そしてやがて雪は、素直に「ありがとうございます。使わせてもらいますね」と笑顔で言った。
しかしその言葉を聞いた亮は血相を変える。
「はぁぁ?!使うってなんだ使うって!まず用心しろって言ってんの!
じゃなくてもあんなキ◯ガイ野郎、オレが‥!」

とそこまで言いかけて、亮は口を噤んだ。
先日雪を追い掛け回していたイタチ男に暴行したことを、彼女は知らない‥。

亮は幾分キョドりながら、「い‥いや気をつけろよな。あんな小物野郎‥」と言って言葉を濁した。
雪は亮の言葉の意味がよく分からなかったが、とりあえず頷いて見せる。

そして二人は店に向かって歩き始めた。
横山に対しては自分も対策はしていると言う雪に、亮がもっと威力のある武器を用意しようかと申し出る。
雪は首を横に振ってそれを断ったが、彼の気遣いに感謝した。

二人の間に流れる空気は気安く、そして気取らない温かな雰囲気だった。
雪の心から心配の種を取り除く、それは自分の役目だと亮は思う。

そして亮は、その話題を自分から切り出した。
「あ、それとよ‥淳の野郎はオレが目障りだろーから、
大学でオレと居るとこ見つかれば、またスネて喧嘩して大騒ぎなんじゃねーか?」

目を丸くする雪に、亮は気取らぬ態度で提案した。
「勉強は一人でやることにするわ。わかんねーとこあればそこはまた聞くから」
「え?それは‥」

雪は思わずその否定を口にしかけたが、じきに俯いて亮の提案に頷いた。
「わ‥かりました‥」

そんな雪を見て、亮はニッコリと笑う。
「おう!」

雪は心がチクチクと痛むのを感じた。
私の方が先に話さなきゃって悩んだことを‥

言いにくいことを先に切り出してくれた亮に対して、雪は申し訳無さでいっぱいだ。
しかし亮は気安い態度で接してくれる。
「‥なんかすいません。言い出しっぺは私の方なのに‥」
「あ~いいってばよ。お前グチグチうるせーから、集中しようったって出来なかったからな」

亮は「てか英語は蓮の方がお前よりデキるし」と言って笑った。
「なんですって?!」と雪の顔が思わず引き攣る‥。

そして雪と亮は、再びいつもの憎まれ口を叩きながら共に歩いた。二人肩を並べながら。
「てかこの顔で英語まで出来た日にゃあ、パーフェクトすぎて困っちまうな~!
今まではこの顔で英語が出来ねぇってとこのギャップが、多くの女をキュン死させてきたってのによぉ」
「なーに言ってんだか‥」

そして亮は雪に向かって、再度夜の帰路には気をつけろと念を押す。
連絡すれば、蓮か雪の父親が迎えに来るからと。

「友達」という距離を保って、亮は雪の隣を歩く。
雪はそんな彼の横顔をチラリと見ながら、共に初冬の夜道を歩く。

心の中に、様々な感情が浮かび上がって来た。
河村氏にも、先輩にも、申し訳ない気持ちが募る夜だ。
恋愛でも、友情でも、家族でも、関係がほつれた場合、繋ぎ合わせることは本当に難しい。

そしてその関係のほつれを間違えて縫い付ければ、
どれだけ大きな代償を払わなければならないか、痛いほど分かってる。

その圧迫感とその重みを、私はずっと感じてきたから‥

雪は家に帰って、じっと携帯を眺めていた。
未だに彼からの連絡は無い。雪は無言で携帯を見る。

彼との関係のほつれは、どうやったら縫い付けることが出来るのか。
そして自分が思うその方向に縫い付けることが、果たして正解なのだろうか‥。
沈黙する携帯を眺めながら、雪は再び悶々と一人で思いに耽っていた‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<恋愛と友情(2)>でした。
この<恋愛と友情(1)(2)>で亮さんの株急上昇‥。
言い出しにくいことを先回りして言うこの優しさ!ふざけながらも雪ちゃんを心配するこの優しさ!
亮派の皆様の太鼓の音が聞こえるようです‥。いい男ですね、亮‥。
さて次回は‥<イタチの弁解>です。
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先輩派なのに…先輩派なのにっ………………!!!!!
河村氏。惚れちまうだろうがっっっ!!!!!!U+261C黙れ
最初は復讐心でなんかトゲトゲしてた
亮さんが、こんな気遣いするイケメンだったとは!(最初からイケメンでしたが)
笑顔見られるなら友達という関係でも構わない、てああた、、、!
こんな感じで先輩のポイズンっ気も抜いてほしー
無理かっ!orz
そんな呪いの顔文字があったとは…!笑
使わない様に気をつけますw
亮さんほんとに急激に中身までイケメン…!
最初の方は2人の男から~って感じでしたが、絶対亮さんとは恋仲になる訳が…と思っていたのにこの状況っ!
面白くなってきましたー☆
てかここで雪ちゃんがうっすら感じ取った亮さんの隠された本心とは、自分に向けられた恋愛感情の事なのでしょうか?確かに、心配してくれて申し訳ない、ありがとうだけの気持ちじゃない複雑な表情で亮さんを見ていますよね。。私としては、そこら辺感じ取ってるならやはり少し亮さんと距離を取ってあげてほしいなぁって思います。(安定の先輩派)
まぁ勉強会もやめようと自分から言おうとしていたというところで、雪ちゃんの誠実な気持ちがうかがえますが~まっすくで優しい気持ちが時には意図しないところで誰かを傷つけることもある。でも、それは悪い事ではないですよね。うーん、もどかしいっ!
とにかく早く先輩に会って話をしてあげて~今夜の本家が待ち遠しいです´`
間違いなく誤解を生みます。怖ろしい…。
電話か店がよかったのではなかろうか。
(あれを使うのは対横山のみにして欲しい。先輩には使わないでね・・・)
で、皆さんの温かいコメントに水を差します。すみません。(←確信犯)
亮とは「友情」で、先輩とは「恋愛」???
亮とは「友情」ということに(言葉上)しておいてもいいでしょう。でも先輩とは?
「恋愛って疲れる」と雪ちゃん言ってましたけれど、雪ちゃん本当に「恋愛」だと思っているのでしょうか?
「恋愛」として付き合い始めたのだとしても、今の雪ちゃんに先輩は重くて負担で、「恋愛」という言葉にただ縛られているだけなように思います。だいいち、相手のことを好きでなければ「恋愛」ではありませんよね?
>河村氏にも、先輩にも、申し訳ない気持ちがする
>その圧迫感とその重みを、私はずっと感じてきたから‥
雪ちゃんに厳しくなってしまいますけれど、雪ちゃんなりに真剣に悩んでいて、それはそれでしっかりしてと応援したくもなりますが、縫い方を間違ったときに払わなければならない代償とその圧迫感と重みとをとうに知っているのならば、自分の気持ちに正直になって、そして自分が裏切り者になる覚悟を持った方がいいと思います。淳と良い関係を保って終わらせるのは無理ですし、亮との友情を捨てるのも無理。淳の孤独が無くならない限り、亮とも淳とも良い関係でいられるというのも無理でしょう? 淳は雪に裏切られたと思っているでしょうし、亮のいうように淳は心が狭いかもしれない。でも、亮との「友情」も大切にしたい、先輩とも楽しいところだけ見ていたい、のでは、皆が遠慮と我慢を持ち続けたまま、代償がますます大きくなるだけです。上辺の付き合いでも良いならば構わないと思いますが・・・。
雪ちゃんが気の毒なのは、初めてまともにお付き合いした彼氏が先輩みたいな複雑なお方だった、と言う点でしょうか?
初めての恋愛ってなかなか上手にできませんよね。経験が浅いから、捨てるところと残すところの区別がうまくできないって言うか。。。特に雪ちゃんは頭でっかちな方だし、先輩に対する恋愛感情も今までは曖昧でしたし。
今こうして先輩との関係で悩む過程で、雪ちゃんが先輩への恋愛感情をしっかりと認識して、とりあえず胡散臭かろうが(スミマセン)何だろうが自分には彼が必要だと思ってくれたらいいなと、私は期待しています。
だいたいこのカップル、二人して頭が固いのがいただけません!恋愛は頭でするものじゃありません~~~!!!
取り乱してスミマセン。
とりあえず今夜の本家更新次第では、私は断然どんぐりさん派となり、雪ちゃんに対して厳しくなると思われます!(キリッ)
それにしても…最新版の先輩。髪がベタついて見えますが大丈夫でしょうか。
お気持ちよーーっっく分かります!笑
この亮さんはズルいですよね~!
イケメンの優しさプライスレス‥。
ちくわさん
いやいや、回を追うごとに老けこむ先輩と違って、
亮さんはどんどんイケメンになってると思いますよ!
というか最初がトゲトゲ+M字という低いところからのスタートという説もあり‥笑
そして「ポイズン」に食いついて頂き嬉しい私‥!
ちくわさんまさか同世代‥?!
さなえさん
呪いの顔文字情報、受け取って頂けて良かったです^^
いや~亮さんは中身までイケメンですね~
きっと恋心の成せる技かもです^^
ゆっけ丼さん
雪ちゃんはほんのり察してそうですよね~亮さんの恋心‥。ダダ漏れですもの‥。
それを感じ取った上での「勉強会中止宣告」だったのかもですが、まぁ亮さんから決定的な言葉を言われるまでは二人は「友達」な訳で‥。(というか今回亮から「友達」宣言ですし‥)
いや~ややこしい。。
りんごさん
確かにこの場面を先輩に見られようものなら、後ろハグ&「あまり近づくなと言っただろう」アゲイン!
でもきっと亮さんは、夜道を歩く雪ちゃんが心配で待ってたんだと思います。優しい‥ホロリ
どんぐりさん
いや~もどかしいですよね。
確かに雪ちゃんは「友情」や「恋愛」という言葉の枠に縛られちゃってるのかな~と思う場面もしばしば‥(でもここぞという時に鈍感力発揮)
言葉や枠組みは違えど、人と人とのコミュニケーションに変わりはないんですけどね。
亮に対するそれよりも先輩に対するそれが圧倒的にできていないというか‥(それは淳のせいも大いにありますが)
ただ亮と淳の確執において、いつも淳だけに「和解」を求めるのが私には解せません。
淳の彼女なら亮にそれを求めるのも一つの筋だと私は思っちゃうんですけどね‥。
いや~難しいですね。。
めぷさん
>だいたいこのカップル、二人して頭が固いのがいただけません!
そうそう!他人の感情の裏を読んでしまうような雪ちゃんタイプは、実は裏表の無い亮や柳(出た)が良いのかも?と実は私も思っていました‥。
そして本家が更新された今、めぷさんは何を思うのか‥ダダーン
姉様
スンキさんの作画が丁寧な時、先輩の髪はサラサラしていて、少し荒れ気味な時はベタついているという統計が出ています(自分調べ)