雪は一人、家路をトボトボと辿っていた。
寝不足と精神的疲労で、ゲッソリとやつれた顔をして。
雪は俯いて歩きながら、もう一日が終わろうとしている今を嘆く。
ほらね‥。大学来なかったじゃん‥。連絡も無いじゃん‥。
携帯には相変わらず電話もメールも来ていない。
雪はイライラした気持ちをぶつけるように、道端に転がっている空き缶を蹴っ飛ばした。
一日中集中出来なかった‥先輩のことだけ悶々と考えて‥。
頭の中がメチャクチャだよ!何考えてるか教えることすら出来ないってか?!あぁ本当にご立派だこと!
今日は大学に来ると言っていた彼は結局現れず、連絡も未だに無い。
雪は沈黙した携帯を何度も見て、廊下に彼の姿を探して、授業もろくに頭に入らなかった‥。
雪はウサを晴らすように、よく拗ねる彼についての文句を言いながら歩く。
「もう!!スネ夫!スネスネスネ夫!!」
その後携帯が震え、雪はすぐにポケットからそれを取り出して見るも、それはくだらない出会い系メールだった。
こうして雪は一日中彼からの連絡を待ちわびて、振り回されている‥。
少しのことで気持ちが上がって、下がって、背を向けた彼の心情を想像して、分からなくて、また落ち込んで‥。
雪は深く溜息を吐く。
恋愛って本当に疲れる‥。
以前萌菜から、「そんなに神経質でどうやって恋愛をするっていうの?」と言われたことがある。
沈黙する彼の前で自分は、ずっと彼のことを考えて気を揉める‥。
ふと雪が顔を上げると、店の近くに亮が立っているのが見えた。
誰かをじっと待っている。
亮は雪に気がつくと、彼女の方へすぐさま駆け寄って来た。
「ダメージお前、昨日店にも顔出さず何してんだよテメー!」「あ‥それは‥」
雪は口ごもりながら、昨日のことを思い出す。
そうだよね‥昨日は河村氏の目の前であんなことに‥謝るの忘れてた‥。
血相を変えてこちらに向かってくる亮を見て、雪は自分が亮の前で淳と揉めたことと、店までサボってしまったことに、
腹を立てているんだと思った。雪は俯きながら、モゴモゴと小さな声で弁解する。
「昨日は‥遅くまでゴチャゴチャ考えてて‥すいませ‥」
「おい、お前らあの後出てって喧嘩したんだろ?どうなったんだ?!」
雪はその亮の言葉が予想外で、思わず顔を上げた。彼は腹を立てているのではなく、雪のことを心配していたのだ。
「くそっ‥なんか申し訳なくてよ。オレのせいだろ?現場見なくても、何があったかくらい分かるっつーの。アイツ心が狭ぇからよ‥。
おまえらの喧嘩の真っ最中に、無駄にオレがメールとか電話したらもっと揉めるかと思って、しなかったんだよ」
亮は雪のことを心配するばかりか、二人がもっと揉めないよう気を使っていたのだった。
その細やかな気配りを知って、思わず雪は少し赤面する。
そのまま黙っている雪に、亮は幾分意地悪い表情を浮かべてこう質問した。
「どーしたよ?オレと遊んでるとでも思われたか?」
亮のその一言に、雪はなんと返して良いか迷って口ごもった。
しかし亮は両腕を大きく開きながら、首を横に振るジェスチャーでそれを否定する。
「んだよ!オレらが浮気でもしたか?変な関係でもねーじゃんか。
やましいことなんて何もねぇだろ?」
亮は雪の気持ちを軽くしようと、更に話を続けた。
「アイツなんて高校の時彼女がいても、女の子とホイホイ遊んでたんだからよ。静香とだって‥」
そこまで言いかけて、亮は慌てて口を噤んだ。
淳のプレイボーイ伝説に、雪が白目で沈黙している‥。
亮はゴメンと謝りつつ、自分の口をグーで殴った。余計なことを言ってしまったと、彼は反省しながら雪に向き合う。
雪は息を吐きながら、亮に向けて口を開いた。
「河村氏は何も悪くないですよ。私のせいですから‥」
自分の責任だと口にする雪を見て、亮は昔自分が彼女に対してとっていた態度を思い出した。
”オレが持ってやるよ”と頼まれてないのにテキストを持ち、自分に気を向けさせようとしたり(勿論淳への復讐が目的だ)
”愛嬌を振りまくれ”とウソのアドバスをしたり、一人では死にたくねぇ‥!と淳に一泡吹かせたくて上京したり‥。
雪から責められても仕方が無い自分の過去‥。
亮は急に彼女に対して申し訳なくなり、取り繕うように明るい態度で彼女に話し掛けた。
「おいダメージ!そんなに凹むなって!
お前の彼氏もお前の人間関係をコントロール出来るわけじゃねーじゃん?お前の人生なんだからよ!」
亮はそう言ってくれるが、雪は自分からそれに頷くのに躊躇いを感じた。そんな雪に、亮は言葉を続ける。
「それじゃお前と会わねーために店辞めるか?大学にピアノも弾きに行くなって?んなの嫌だぜー」
そして亮はこう口に出した。雪と亮をくくる、絶対的なその関係を。
「オレら、ダチだもんな?」
それは奇しくも、亮から雪への二度目の問いかけだった。
「じゃあオレは?お前の友達?」
夏休み後半の塾での一コマ。
あの時雪は急に言い出した亮のその一言に、目を剥いて聞き返した。
「えっ?!」
そして今回も雪は目を剥いて固まった。
しかし前回の時とは少し異なる感情が、胸の中を揺蕩っている‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<恋愛と友情(1)>でした。
亮‥いい奴‥(T T)
心から雪のことを心配してくれている‥。手に入れたいわけじゃなく、彼女の幸せを願って‥。
そんな亮が自分から言い出した「オレらダチだもんな?」‥。
次回はその台詞から始まります。
<恋愛と友情(2)>です。
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寝不足と精神的疲労で、ゲッソリとやつれた顔をして。
雪は俯いて歩きながら、もう一日が終わろうとしている今を嘆く。
ほらね‥。大学来なかったじゃん‥。連絡も無いじゃん‥。
携帯には相変わらず電話もメールも来ていない。
雪はイライラした気持ちをぶつけるように、道端に転がっている空き缶を蹴っ飛ばした。
一日中集中出来なかった‥先輩のことだけ悶々と考えて‥。
頭の中がメチャクチャだよ!何考えてるか教えることすら出来ないってか?!あぁ本当にご立派だこと!
今日は大学に来ると言っていた彼は結局現れず、連絡も未だに無い。
雪は沈黙した携帯を何度も見て、廊下に彼の姿を探して、授業もろくに頭に入らなかった‥。
雪はウサを晴らすように、よく拗ねる彼についての文句を言いながら歩く。
「もう!!スネ夫!スネスネスネ夫!!」
その後携帯が震え、雪はすぐにポケットからそれを取り出して見るも、それはくだらない出会い系メールだった。
こうして雪は一日中彼からの連絡を待ちわびて、振り回されている‥。
少しのことで気持ちが上がって、下がって、背を向けた彼の心情を想像して、分からなくて、また落ち込んで‥。
雪は深く溜息を吐く。
恋愛って本当に疲れる‥。
以前萌菜から、「そんなに神経質でどうやって恋愛をするっていうの?」と言われたことがある。
沈黙する彼の前で自分は、ずっと彼のことを考えて気を揉める‥。
ふと雪が顔を上げると、店の近くに亮が立っているのが見えた。
誰かをじっと待っている。
亮は雪に気がつくと、彼女の方へすぐさま駆け寄って来た。
「ダメージお前、昨日店にも顔出さず何してんだよテメー!」「あ‥それは‥」
雪は口ごもりながら、昨日のことを思い出す。
そうだよね‥昨日は河村氏の目の前であんなことに‥謝るの忘れてた‥。
血相を変えてこちらに向かってくる亮を見て、雪は自分が亮の前で淳と揉めたことと、店までサボってしまったことに、
腹を立てているんだと思った。雪は俯きながら、モゴモゴと小さな声で弁解する。
「昨日は‥遅くまでゴチャゴチャ考えてて‥すいませ‥」
「おい、お前らあの後出てって喧嘩したんだろ?どうなったんだ?!」
雪はその亮の言葉が予想外で、思わず顔を上げた。彼は腹を立てているのではなく、雪のことを心配していたのだ。
「くそっ‥なんか申し訳なくてよ。オレのせいだろ?現場見なくても、何があったかくらい分かるっつーの。アイツ心が狭ぇからよ‥。
おまえらの喧嘩の真っ最中に、無駄にオレがメールとか電話したらもっと揉めるかと思って、しなかったんだよ」
亮は雪のことを心配するばかりか、二人がもっと揉めないよう気を使っていたのだった。
その細やかな気配りを知って、思わず雪は少し赤面する。
そのまま黙っている雪に、亮は幾分意地悪い表情を浮かべてこう質問した。
「どーしたよ?オレと遊んでるとでも思われたか?」
亮のその一言に、雪はなんと返して良いか迷って口ごもった。
しかし亮は両腕を大きく開きながら、首を横に振るジェスチャーでそれを否定する。
「んだよ!オレらが浮気でもしたか?変な関係でもねーじゃんか。
やましいことなんて何もねぇだろ?」
亮は雪の気持ちを軽くしようと、更に話を続けた。
「アイツなんて高校の時彼女がいても、女の子とホイホイ遊んでたんだからよ。静香とだって‥」
そこまで言いかけて、亮は慌てて口を噤んだ。
淳のプレイボーイ伝説に、雪が白目で沈黙している‥。
亮はゴメンと謝りつつ、自分の口をグーで殴った。余計なことを言ってしまったと、彼は反省しながら雪に向き合う。
雪は息を吐きながら、亮に向けて口を開いた。
「河村氏は何も悪くないですよ。私のせいですから‥」
自分の責任だと口にする雪を見て、亮は昔自分が彼女に対してとっていた態度を思い出した。
”オレが持ってやるよ”と頼まれてないのにテキストを持ち、自分に気を向けさせようとしたり(勿論淳への復讐が目的だ)
”愛嬌を振りまくれ”とウソのアドバスをしたり、一人では死にたくねぇ‥!と淳に一泡吹かせたくて上京したり‥。
雪から責められても仕方が無い自分の過去‥。
亮は急に彼女に対して申し訳なくなり、取り繕うように明るい態度で彼女に話し掛けた。
「おいダメージ!そんなに凹むなって!
お前の彼氏もお前の人間関係をコントロール出来るわけじゃねーじゃん?お前の人生なんだからよ!」
亮はそう言ってくれるが、雪は自分からそれに頷くのに躊躇いを感じた。そんな雪に、亮は言葉を続ける。
「それじゃお前と会わねーために店辞めるか?大学にピアノも弾きに行くなって?んなの嫌だぜー」
そして亮はこう口に出した。雪と亮をくくる、絶対的なその関係を。
「オレら、ダチだもんな?」
それは奇しくも、亮から雪への二度目の問いかけだった。
「じゃあオレは?お前の友達?」
夏休み後半の塾での一コマ。
あの時雪は急に言い出した亮のその一言に、目を剥いて聞き返した。
「えっ?!」
そして今回も雪は目を剥いて固まった。
しかし前回の時とは少し異なる感情が、胸の中を揺蕩っている‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<恋愛と友情(1)>でした。
亮‥いい奴‥(T T)
心から雪のことを心配してくれている‥。手に入れたいわけじゃなく、彼女の幸せを願って‥。
そんな亮が自分から言い出した「オレらダチだもんな?」‥。
次回はその台詞から始まります。
<恋愛と友情(2)>です。
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こんなの見たら亮の株爆上がり、亮を応援せざるを得ないではないですか~!
雪ちゃん、悪いことは言わない、亮にしておくんだ!(笑)
亮は本当になんだかんだ文句いったり軽口叩いたりしつつも、姉のことや大事な人のことをちゃんと考えている心が優しい奴ですよね。
ありがとうございます。
なんて、いい奴なんだ。
しかし、なんだか
俺らダチだもんな!て台詞
少し寂しく聞こえますね。
無理に恋心?を殺してるのでしょうか。
味方認定した人にはとことん優しく。
亮株ストップ高!
本当にどうして彼はここまで優しい男に育ってるんでしょうか‥不思議です。静香がああいう風だから余計に^^;
ちくわさん
いい奴ですよね‥。
「オレらダチだもんな?」の台詞含め、次回の亮さんもかなりいい奴ですので、そこにご注目を‥!
めぐさん
確かに仲間に優しい‥というか情に厚い感じがしますな、亮君は‥。友達になりたい!
とてもわかりやすくまとめてあって驚きです…!
自分では思いつかなかった接点をつなげてくださったり
また最初からじっくり理解しながら読むことができました☆
本当にありがとうございます(^^)!
やっと追いついたのでこれから毎日の楽しみにさせてもらいます♪
それにしても今回の亮さん…!!
ウルっときてしまいました(>_<)
はじめまして!初コメありがとうございます^ ^!
そして早くも呪いの洗礼を受けられましたね‥^_^;
あれは呪いの顔文字といって、アレを入力するとそれ以降の文字が切れてしまうという怖い顔文字なのです‥。
折角ご丁寧なコメを頂いたのに、変なシステムですいません‥!
どうぞまたお越し下さい~!