Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

明かされる顛末(2)

2013-10-25 01:00:00 | 雪3年2部(再会~三者対面)


雪と和美は、カフェにて向かい合って座っていた。

苦いコーヒーがだんだんと冷めていく。

和美は昨年雪に対して行った嫌がらせの数々を、その重たい口から語った。




今口にしているのは、薬物混入事件のことが赤山雪にバレて、彼女から脅しに似た警告を受けた時のことだ。

青田先輩にそのことが知られてから、心なしか空いてしまった彼との距離。



やるせない日々を送っていた最中、ある秋の日に出くわした事件について和美は言及し始めた。

大学構内をうろついていた、老女ホームレスに絡まれた時の話だ。




その話を聞いた途端、雪の顔色が変わった。



脳裏に苦い記憶が染みのように広がっていく。

  

雪は話の続きを促した。

真っ直ぐに和美の瞳を見つめながら。



和美はおどおどと瞳を動かしながら、話の続きを口にした。



老女ホームレスに、雪が居残っているはずの校舎へ行くよう促したことを。







それを聞いて、雪は初めとてもじゃないが信じられなかった。

問い詰める声が、思わず掠れた。

「‥あんた、今自分が何言ってるか分かってる‥?」



和美はテーブルの下で、両の拳をぎゅっと握っている。

向かいに座る彼女とは、目を合わせられなかった。

「‥あの時は軽く思ってた‥たとえ行ったところで勉強の邪魔するくらいだろうって‥」



その後和美は、憂さ晴らしと友人と連れ立って行ったバーでもホームレスのことが気がかりでしょうがなかった。

バーのウエイターが手を怪我しているのを見て、思わず席を立って大学に引き返した。





そして道の途中で、青田先輩に会った話をした。

いつもとは違う彼の態度に愕然とした。身体中に冷たい血が巡るようだった。

あの時の驚愕と絶望を、未だに和美は忘れることが出来ない‥。






雪は、刺すような視線で和美を見ていた。

静かに、しかし烈しい炎が瞳の中に揺れる。



しかし雪は不思議なほど冷静だった。

例えば横山の時より‥いや生まれて初めてというほど取り留めのない怒りを感じているというのに、

去年のように不明瞭な点が無いせいか、クリアに怒りの感情だけが心の中にポンと置かれている感覚だった。

「それで‥言いたいことってなんなの?」



和美はあの時青田先輩があなたを助けなかった‥と続けようとするが、

雪はピシャリとその続きを遮った。

今問題は、先輩が自分を助ける助けないの問題ではないと。

「重要なのは、あんたが私にした行為でしょう」



和美はぐっと言い詰まったが、「そうね‥あんな事しちゃいけなかったのに‥」と何とか言葉を繋いだ。



しかし雪は怯まず、物事の本質を突く質問をした。

「あんな事って何?授業時間の変更をその都度知らせなかったこと?プリントすり替えたこと?

横山に変なこと吹き込んだこと?ジュースに薬物混入したこと?ホームレスに自分を襲わせたこと?」




後から後から、和美が雪にした陰湿な嫌がらせが思い出される。

雪は和美の「あんな事」が、これの内のどれに該当するのかと聞いた。言い返そうとする和美の言葉を遮り、

「本当に理解出来ない」と言い放った。尚も言葉を続ける。

「あんたが私を誤解してたことについて、事実じゃないって私は何度も言ったよね?

‥廊下であんたが泣いてる姿を見て以来、少し罪悪感もあった」




なのにあんたは最後まで‥と言って雪は目を伏せた。瞳の中には、怒りだけではない感情が渦巻いている。

そして先ほど和美から言及された「首席」問題が、もう一度雪の怒りに火を付けた。



見栄を張ったり先輩の横に並ぶために、雪は首席の座が欲しかったわけじゃない。

奨学金を貰うためだ。誰にも頼れない彼女は、自分一人で努力しなければいけなかったからだ。



歯を食いしばりそう主張する雪に、和美は焦れたように反論した。

「だから謝ってるじゃない!あたしに非があるってことも十分分かってるわ!

そこまでしてあたしだって平気なはずないでしょう?ずっと苦しかった。本当よ!」




苦しげに瞳を閉じ、声を張り上げる和美に対して、雪はやはり冷静だった。

「なのに、」と彼女の急所を最短で突く。

「今まで謝りに来もせずに、一体何してたの」



「今日偶然会ったついでに謝ったかと思えば、その次は留学?」

心の底から沸々と怒りが湧き上がり、雪は形相を変えて和美に凄んだ。

和美は雪から目を逸らすと、「だからこうして謝ってるじゃない」と反論した。



尚も先輩が雪を見捨てたことについて言及しようとする。

雪は和美の目の前で、バッと手のひらを広げて見せた。



思わぬ雪の行動に、和美が思わず息を呑む。

「この傷跡が見える?」



雪の手のひらには、老女ホームレスから受けた傷が未だに残っていた。

手のひらだったから良かったようなものの、これが頭だったら、ましてや顔だったらどうするつもりかと冷静に問い詰める。

「あんたがやったことは普通の人が出来る限度を超えてる。やっていいことと悪いことがあるでしょう」



苦虫を噛み潰したような表情の和美に、雪は切々と訴えた。

「なのに散々見て見ぬふりをした挙句、今日みたいに偶然会ったついでに謝って済ますつもりだったわけ?」



和美の顔に、だんだんと不満が現れてくる。

真に反省していない証拠だ。危機感や罪悪感だって、雪が認識している事態の重さとはまるで比例していない。

「本当に自分勝手な人間だね。首席にもなりたい、男にもがめつい、

嫌いな子はどうにかして痛めつけてやりたい、謝って楽になりたい、けど罪は認めたくない!」




そこまで言われて、和美はうんざりという風に溜息を吐いた。

「あ~もう分かったわよ。本当にすいませんでした!これ以上どうしろって言うの?」



和美は面倒くさそうに、このまま動かないでいてあげるから好きにすればと言った。

殴るなり侮辱するなり、雪の思うがままにと。



雪はそんな和美を見て、心が怒りの炎を燃やしたまま冷たい氷で包まれていくような、

言いようのない虚しさが募っていくのを感じた。

「あんた本当に、私に対して一つも悪いと思ってないんだね」



そう言うなり、雪は立ち上がった。和美が身構える。

しかし雪はそのまま席を立とうと椅子を正した。「なによ?好きにしていいってば」と言う和美に、そっけなく言い放つ。

「ううん、あんたに指一本触れたくない。これ以上相手にしてる時間が勿体無いわ」



言いたいことを全て言った和美は、さぞ清々しく留学に行けるのだろう。そう雪が言い捨てる。

「そんな言い方することないじゃない?! あたしがいつ‥」



反論する和美に、雪は侮蔑の視線を送った。

「なに? 違った?」






眉間にシワを寄せ、雪はフゥと長い息を吐いた。



そして最後の通告を、和美に向かって抑揚のない口調で行った。

「それじゃ、あんたとはもう関わりたくないから。二度と私の前に現れないで



そして雪は席を立った。

呆然とした和美を、一人残して。



和美の口から、思わず乾いた笑いが漏れる。

脳裏に浮かぶのは、重なる二人の姿だった。

      



和美はもう一度あの事件の後を反芻する。

助けてとすがったが来てくれなかった青田先輩との問答の後、一人で校舎に向かった時のことを。

先輩は言った。

二度と俺に近づくなと。



それは先ほどの赤山雪と、言葉も表情もやはり重なった。

二度と私の前に現れないで





和美は帰路を辿りながら、プライドを傷つけられた憤懣を抱えた。

人を馬鹿にするにもほどがあるわ。似たもの同士お似合いじゃないの



赤山雪のあの反応からすると、あのホームレス事件の詳細をまだ青田先輩から聞かされていないのだろう。

和美は意図的に言わなかった。

先輩が警備員を呼び、赤山雪を助けたという事実も、そして彼がパブリックイメージとは全くかけ離れた、

冷淡で狡猾な人間だということも。



あの事件の後、和美は一日として学校で心落ち着ける日なんて無かった。

時が経てば経つほど、この地獄のような日々が一体いつまで続くのかという恐怖に耐えられなくなった。


赤山は一人被害者ヅラしているが、精神的苦痛の被害を被ったのはむしろ自分だと、和美は今までの心労を思い返した。

犯した罪の軽重は置いておいて、依然として赤山雪のことが嫌いだ。

だから‥。




彼女のことも、彼のことも、和美は嫌悪感を持ってこの事件を終わらせると決めた。

青田先輩が卒業する一年後まで、和美はここから姿を消す。



振り返って見上げた大学の校舎は、あらゆる思い出を閉じ込めてこの場に聳え立っていた。

和美は様々な思いを抱えながら、校舎から背を向けた。

自分の意志で、ヒールの音を響かせながら‥。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<明かされる顛末(2)>でした。

過去記事と交えて記事を書いてみました。

和美視点の3話はこちら↓

<和美>その真実(1)
<和美>その真実(2)
<和美>その真実(3)


次回は<彼への不信(1)>です。


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17 Comments

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Unknown (りんご)
2013-10-25 22:15:08
Yukkanenシ、アニョハシムニカ…!

あってるかな?使い方

和美と青田淳の心もようは、Yukkanenさん記事で、深く理解出来てきてシックリキテルかんじですが、この内容事態があんまりシックリコナイんですよ~…。

和美がした
・授業時間の変更をその都度知らせなかったこと
・プリントすり替えたこと
・横山に変なこと吹き込んだこと

これらは、嫌なやつ~!だけど、嫌いな子への嫌がらせの話しとして受け入れられます。

・ジュースに薬物混入したこと
この辺りから、非現実的でピンとコナイ。恐ろしい…恐ろしい子!
そしてミンスもよくバレずにすり変えた!笑

・ホームレスに自分を襲わせたこと
まさかこんな事になると考えてなかったし、襲わせたわけでもないし…。結果的に襲われてしまったけど。

学校でホームレスに空き瓶で襲われるというのがピンとこないのか、なんなのか。
雪があんな捨てゼリフはくのがピンとこない…。
お国の違い?私が事を重く考えてないのかな。

和美も、ちょっと、ちょっとではないのか…度がすぎた嫌がらせをしてしまって、ずっとやり過ぎたって思ってたわけで。だからと言って切り出せず…。こっちの気持ちもわかると言いますか。悪いのは和美だけど、辛かった部分もあるよなーと。
そして青さんの解釈へ…。

ホームレス事件が、なんかシックリコナイんですねーきっと。
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お邪魔します。 (どんぐり)
2013-10-25 22:15:32
さかなさん、皆さま、あらためましてよろしくお願いします。

実は私、この和美と雪ちゃんの回は何度も読み返していました。
冷静に冴え渡った雪ちゃん、ひとりよがりな和美の言い分、反省のない和美に自らを諦めた、辛くて厳しい話でした。でもなぜか何度も読み返してしまって…。
「この世界、みんなどこかで紙一重のところを生きている」という危なっかしさを描いているところがチートラの魅力の一つである、と、青さんがおっしゃいました。
あぁこれが、何回も読み直した理由だったのだと納得しました。 

ところで、雪ちゃん以外の人は青田先輩の別人格には気づいていないのでしょうか…。
柳先輩は解っていそうですが…。
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高い授業料 ()
2013-10-26 10:42:20
この回、ソルちゃんにはこれだけキツいことを言うだけの理由があったし、言ってもよかったと思うんですが、読んでてどんどん辛くなっていきます。いくら責めても、ソルちゃんの心は晴れない。ナムジュヨンにしてみても、いくら責められてもそれでスッキリすることはない。

(そこで黙っておけばいいものを、開き直ってみせてしまうところが、ナムジュヨンの未熟さです。)

ただ、この場面の最後になればなるほど、ナムジュヨンのほうに肩入れしたくなってしまいましたね。

たぶん、お嬢様進学校では成績トップ、女王様扱いで過ごしてきて、誰もが憧れる名門大に進学。そこでユジョンに一目惚れして、思い描いたのは「キャンパスのベストカップルとなって羨望の眼差しを浴びること」だったのでしょう。それがうまくいかないことで、「自分が世界の中心ではない」ことに気づいていかないといけないところを、ソルちゃんを事の元凶扱いしだしたことが、つまづきの始まりだったのかも知れませんね。

結果として、「人を嫌っても嫌われることなんて想像したこともなかったお姫様」は、これ以上ないほど人に嫌われる経験をしたわけです。このままフェードアウトしてしまえば、物語上はただの負け組脇役になってしまいますけど、この痛い経験を糧に、人生観を改めて一回り成長して帰ってこないかなー、と思います。

そんなわけで、このラストシーンは、私にナムジュヨンへのちょっとした期待を残させるものでした。
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出身校のイメージ ()
2013-10-26 10:48:16
余談ですが、ナムジュヨンがお嬢様女子高だとすると、ホンソルは都市圏近郊の公立共学校出身、って感じですね。

横浜雙葉と県立湘南、とか、神戸女学院と加古川東、とか、そんな感じでしょうか(笑)。

ああそう考えると、ユジョンやペク姉弟は、成蹊とか行ってそう…。
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ふんふん (Yukkanen)
2013-10-26 17:17:59
なるほどなるほど。りんごさんの戸惑いも、どんぐりさんが何度も読み返してしまったのも、共感出来ます。
以前作者さんインタビューで、チートラは19禁(日本では成人指定は18禁ですが韓国では19禁です)漫画ではないので、色々な事柄の程度がそれぞれぬるくなってる、みたいな記事を読みました。
勿論性的描写もそうですが、ホームレス事件の程度も作者さんが最初練ったストーリーよりヌルいということです。だから、和美に対して雪がめっちゃ怒ってるのも、本来はもっと酷い出来事が雪の身に起こったから、と考えるとシックリクルクルです。例えばホームレスがおばあさんじゃなくて、コンビニのとこで絡んでた男で雪が犯されかけるとか‥。
もしそんな出来事が起こってたなら、和美がけしかけたのも許せないでしょうし、先輩が助けようとしなかったのも彼への不信を煽るには十分ですよね。

あと青さんがおっしゃってた「自分が世界の中心ではない、ということを知る和美」というのもシックリクルクルです。
これも作者さんのインタビューで読みましたが、和美は見た目こそ大人っぽいですが、「チートラの登場人物の中で一番幼い」らしいです。
淳も精神的なところが幼いのは一緒ですが、和美はやることが小学生か!と突っ込みたいほど子供だし、下剤事件にしてもツメが甘いですね。
そのへんも作者さんインタビューを読んでると認識が変わってくるかなぁと思います。
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Unknown (りんご)
2013-10-26 20:45:44
Yukkanenシ…!

チョ~シックリクルぅーっ!!(山本高広風で)

Yukkanenさんの例え話みたいなもっとすごい事件だったとするなら、雪と和美の思いや言動すべてが納得っ!
はぁー。そういうことでしたか~。
カムサハムニダー!

どんぐりさん、私は全くの読みっぱなしだったところを何度も読まれているなんて。
青さんさすがでした。未熟なお姫様と既に解釈を。

みなさんすごいのな。ほんと。
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キターー! (Yukkanen)
2013-10-28 00:48:52
なんと‥山本高広‥笑
なつかしい(^^)

納得して頂けたみたいで良かったです~
程度がぬるいのは主にホームレス事件と横山のストーカー事件らしいですね。それを知ると、雪があれだけ横山を毛嫌いするのも頷けます。
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え! (かに)
2013-10-28 21:19:22
ストーカー事件もぬるい表現になってるんですか?!
連載再開後の先輩、ピンチ度数がまたあがってしまった…!!

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Unknown (どんぐり)
2013-10-28 22:45:15
ストーカー事件があれでヌルいとは・・・  あれ以上の状況を想像するとゾゾっとします。
私もりんごさんのように ”ここがこうだからシックリコナイ” と具体的に表現してみたいです。
そして、青さんの記事を読み、とてもすっきりしました。(やっぱり漠然とした物言いで言いたいことがよくわからない…) 深く読み解いてみたいです!」
何より、この場面のようにあまり愉快でないことでも、じっくり一緒に考える機会を与えてくださるこのブログに感謝です!そして仲間に加えてくださった皆さまにも!

返信する
Unknown (りんご)
2013-10-28 23:18:58
どんぐりさん、私は具体的だったんですか。よかった。
ほら、私いつも残念な文章で、端折り過ぎてたり、ムダに長かったりその他もろもろ…。それでも、Yukkanenさん、みなさん受けてくださるんですよ~。すごいですねーここ。

ちなみに、ちょびこさんとこも読まれましたか?わたしのツボはどうですか~。私はやっぱりあそこ萌えポイントなんですねぇ。そこじゃなくてもいいんで、イケてる先輩を取り上げて下さい…!
最近、私の中でも青田淳は残念な人になっております。先輩派のteaさんもお留守ですし…。
青田淳イケメン応援隊頑張ろうの会…!
ぜひ盛り上げましょ~
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