マーク・ラッペ氏が書いた『皮膚 美と健康の最前線』(川口啓明・菊地昌子:訳、大月書店:1999年刊)という本をご紹介しています。今回は第14回目です。
◆皮膚のゆくすえ
ヤケドで皮膚の40%以上を損傷すれば、これまでは致命的でしたが、現在では他人から提供された皮膚組織やブタの皮膚組織などを移植することによって、患者は生きのびることができます。
また、人工的に皮膚組織をつくりだす技術も開発されていて、ヤケドの治療だけでなく、美容整形手術や化粧品の安全性試験に用いられています。
美容の分野では、皮膚の着色した部分に高エネルギーの光を吸収させて破壊するレーザー療法によって、着色したアザ(母斑)やタトゥー(入れ墨)を劇的に除去することができるようになりました。
しかし、皮膚病変は体内ふかくの病気をしばしば反映しているので、美容的な処置を考える前に、皮膚病変が体内の異常を示していないか注意することが大切だそうです。
将来、乾癬などの皮膚病は、酵母やその他の微生物にたいして皮膚の免疫力を強化する特効性ワクチンによって治療できるようになるそうで、医学は進歩しているのですが、過去の間違った治療法がいまだに続いている場合もあります。
病気の治療に抗生物質やステロイドホルモン、放射線などを用いる場合はまだありますが、皮膚の感染症を治療するために抗生物質を使用することはさけるべきだし、ステロイドホルモンや放射線などを用いて皮膚症状だけをなくそうとしてはいけないとマーク・ラッペ氏は警告しています。
皮膚の見当違いの治療法には長い歴史があり、子どもの頭部白癬(シラクモ)の治療にX線を照射するようなこともおこなわれたそうです。その結果、白癬が「なおった」子どもに甲状腺ガンと脳腫瘍が生じたそうで、このことは忘れてはならないと思います。
今後、皮膚の病気としてもっとも注意すべきものは皮膚ガンでしょう。
オーストラリアでは、ものすごい勢いで皮膚ガンによる死亡者数が増えているそうで、国をあげて皮膚ガン予防キャンペーンをやっているそうです。
なお、皮膚ガン対策として早期発見を主張する人がいますが、皮膚ガンは予防できるので、マーク・ラッペ氏はこのような主張は間違っていると考えています。
彼は、将来は遺伝子工学による人工メラニンの開発や、皮膚のDNA修復を促進する医薬品や抗酸化剤の開発によって、紫外線から皮膚を守ることが重要になると予想しています。
彼の見解によると、人間の環境破壊が原因でしだいに外界は敵意を増してきていて、われわれへの攻撃を強めているそうです。そして、このような攻撃の矢面に立っているのは皮膚であり、われわれが環境破壊をやめなければ、代わりにわれわれの皮膚が破壊されていくと警告しています。
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皮膚は身体的な健康だけでなく精神的な健康も支えているので、マーク・ラッペ氏はこの本の最後で、「皮膚が病んでいれば、精神も病んでいる。」と断言しています。日頃、われわれは顔以外の皮膚を軽視しがちですが、もう少し愛情をもって自分の皮膚を見守ってやる必要がありそうですね。
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