マーク・ラッペ氏が書いた『皮膚 美と健康の最前線』(川口啓明・菊地昌子:訳、大月書店:1999年刊)という本をご紹介しています。今回は第4回目です。
◆皮膚の機能
皮膚は、外界との縁(ふち)をつくりだし、外界の情報を収集する重要な感覚器官です。表皮のすぐ下にはマイスネル小体という、かゆみと軽い接触の感覚を受けもつ神経があり、真皮ふかくにはパチニ小体という圧力を感じる神経と、ルフィーニ小体とクラウゼ小体という温度を感じる神経があるそうです。
この皮膚の感覚がいかに大切かは、ハンセン病の患者を見ると分かるそうです。ハンセン病患者は、指が欠け落ちて腕や足が棍棒状になることが多いのですが、これは病気によって手足の皮膚の神経を失うことが多く、痛みを全く感じなくなるためにヤケドなどで指を失ってしまうのだそうです。
その他の重要な機能として、体温を一定に保つ機能があります。皮膚は、体温を保つ断熱材であると同時に、発汗によって熱くなりすぎた体温を下げる体熱の熱交換システムでもあります。この発汗機能は、ホットヨガをやっているとよく分かるのですが、単に体温を下げるだけでなく、有害なものを体外に排泄するのにも有効です。
また、皮膚は耐水性の覆いであり、細菌やカビの侵入を防ぐ防御壁でもあります。皮膚の強さは、ケラチンというタンパク質に由来します。ケラチンは、毛や爪の主成分であり、サイの角もケラチンでできています。
表皮細胞は、細胞が基底細胞層から上方に移動するにしたがって多くのケラチンを合成するようになり、最終的に角質層のいちばん上の層ではほとんどケラチンだけが残るそうで、このタンパク質の丈夫でかたいシートによって我々の体は保護されているわけです。
さらに、皮膚には太陽光の紫外線による損傷を修復したり、傷を治すという機能があります。ただし、大きな傷の場合は、かならず痕(あと)が残りますが、これは正常な表皮や真皮となるべきところに線維芽細胞とよばれる特殊な細胞が集まった結果だそうです。
ところが、胎児の場合は、損傷や切開手術を受けてもまったく痕が残らないそうで、サイトカインとよばれる炎症を引き起こす物質が少ないことが理由だそうです。将来、サイトカインの過剰生産を抑えることによって、大人でも痕が残らないような治療が可能になるかも知れませんね。
また、皮膚には光を透過するという重要な機能があります。これは、十分な太陽光を浴びてビタミンDを合成しなければ、骨に適切な石灰沈着が起こらず、クル病になってしまうからです。なお、皮膚が合成するのはビタミンDそのものではなく、その前駆体だそうです。
年をとると骨が弱くなるのは、外出が減って太陽光を浴びる時間が少なくなり、同時に小腸によるカルシウムの吸収や皮膚のビタミンDの合成能力が低下するためです。
太陽光は、睡眠と覚醒のサイクルを調節するのにも必要不可欠です。
人間には、両目以外にもう一つ光を感じる器官があります。それは、松果腺といって、脳の奥深くにある神秘的な器官で、「第三の目」ともよばれています。
この松果腺まで太陽光を透過させることにより、睡眠サイクルを調節したり、代謝を季節によって調整したりしているそうで、一日一回は太陽光を浴びることで生活のリズムを正しく保つことができるそうです。
次回は、皮膚吸収についてのお話です。
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