「志」の英語教育

英語教育実践について日々の雑感を語ります。

スーパー・サブとプロトタイプ

2008-06-20 19:05:46 | 語彙
テストを作るとき、与えられたテキスト中に現れる表現をそのまま使わずに、パラフレーズして作った選択肢を正答にするという方法はよく知られている。この手法の重要度はリスニング試験において更に高くなるように思われる。読み上げられた文の中に出てきた言葉を含む選択肢が正解になるのなら、意味は全く不要で単語レベルの聞き取りテストと変わらなくなるからである。

というわけで、出題者がパラフレーズを用いて選択肢を作る際によく使われる上位語、下位語の概念を授業でちょっとだけ説明した。

例えば、「犬」という言葉について考える。「犬」が属するカテゴリーを考えてみると、「動物」や「ペット」が思い浮かぶ。また、逆に「犬」というカテゴリーに何が属するか考えると、「柴犬」、「ブルドッグ」、「チワワ」などが考えられる。

つまり、これらの語は「ペット」-「犬」-「ブルドッグ」といった階層上に存在していることが分かる。このとき、「ペット」は「犬」の上位語であり、「ブルドッグ」は「犬」の下位語である。もちろん、これらは直線的な関係のみでなく、「ペット」-「犬」の関係と同じく「ペット」-「猫」や「ペット」-「うさぎ」も存在しうる。つまり、ある上位語には複数の下位語が存在するのである。

これを踏まえて次の問題について考えてみる。

選択肢のうち以下の会話の状況を正しく説明しているものを選べ。

A: "What happened, Kate? Why are you crying?"
B: "Oh, Mike. My dog Sparky is killed in a traffic accident. I can't believe it."
1) Kate is sad because her pet is dead.
2) Kate is crying because her dog has run away.
3) Kate is shocked to find the dog killed her pet.
4) Kate can't believe that Sparky is crying.

このように上位語を使えばパラフレーズを用いた正解の選択肢を簡単に作ることができる。

この他に、東京外大で以前よく出題されていた定義を答える英作文でも上位語の考え方は役に立つ。例えば、dictionaryならば

A dictionary is a book that has a list of words and their meaning. などと答えればよい。

多少なりとも受験に役に立つかと思い以上のような話をしたが、そこそこ反応がよかったので、ついでにプロトタイプや習得の順序についても余談として言及。英語ではvegetableのプロトタイプとして、トウモロコシや豆があげられることなどを話しておいた。

TOEIC IP実施します

2008-06-20 00:59:14 | テスト
主に3年生を対象に、夏休み中のTOEIC IP受験者を募った。今の3年生を教えるのは今年が初めてであるし、教えている生徒は学年の半分であることを考慮すれば、30名を超える受験希望者がいるということは志の高さの現れと見ていいだろう。

今の勤務校でTOEIC IPを行うのは今年が3回目。希望者のみの受験とは言え、地元の国立大学で人文系統を学ぶ学生の平均と変わらない校内平均になるのだから決して「高校生には早すぎる」試験ではない。

今までの結果から見ると、いわゆる難関と呼ばれる大学に合格する生徒の多くが600を超える。国公立大文系合格者の下限が400くらいだろうか。東大・京大クラスになれば700を目指したいところ。外大合格者は以外に点数の幅が広い。

海外経験のない生徒の最高点が750前後。ただし、700を超える子は英会話学校に通い続けているなどのプラスαの勉強が効いているケースが多いようだ。海外経験の長い子は900を超えることも珍しくない。

今年の3年生は、模試の偏差値でみると例年より若干高いので、TOEICのスコアがどうなるか興味深い。しかしながら、リスニング力には若干の不安もある。先日のマーク模試では苦戦をした生徒が多いようだ。まあ、今の時点ではそれも仕方ない。十分に指導していないのだから。

センター・リスニング導入後、学年によって結構詰めてリスニングを指導したケースと、それほど早くから練った対策をしなかったケースの両方があるが、最終的に大きな差になって現れることはないように思われる。業者のデータを見てもリスニングの得点分布にさほど大きな散らばりはない。

いずれにせよ、TOEICは生徒が普段体験する種類のテストとは要求される力の質が違うから、対策や実際の受験を通して、より深みのある英語力を身につけてくれることを期待している。