チュエボーなチューボーのクラシック中ブログ

人生の半分を過去に生きることがクラシック音楽好きのサダメなんでしょうか?

実現直前までいったシゲティとギーゼキングの日本での共演(1953年)

2015-01-13 22:10:39 | 来日した演奏家

1953年(昭和28年)にシゲティとギーゼキングの二人は偶然、同時に来日していました。

まずヨーゼフ・シゲティ(Joseph Szigeti, 1892-1973)は毎日新聞の招きで1953年2月28日午後2時、ピアニストのカルロ・ブソッティ(Carlo Bussotti, 1922-2002)と共に羽田に到着しました。21年ぶり、(おそらく)3度目の来日です。
3月5日初演奏を皮切りに2か月間各地で演奏会を開きました。

↑ 演奏第一日のシゲティ。3月5日日比谷公会堂。『藝術新潮』1953年4月号。

この1953年3月5日にモスクワでプロコフィエフが亡くなっています。(スターリンの命日でもある)

シゲティはプロコフィエフの大の友人であり、プロコフィエフの追悼のために東響との演奏会での曲目を変更し、故人のヴァイオリン協奏曲第1番を演奏したそうです。追悼にはピッタリの曲!自分が聴衆の一人だったら冒頭から泣いちゃいますね。この日の録音は無いんでしょうか?(演奏日調べ中→4月7日だということが沼辺信一様のコメントで判明しました。ありがとうございました!)


一方、初来日のヴァルター・ギーゼキング(Walter Wilhelm Gieseking, 1895-1956)は読売新聞の招きによりアンナ・マリア夫人とマネージャーのアンドレ・プリア氏を伴い、パリからSAS機で3月13日午後6時10分に羽田に到着し、マンフレート・グルリット氏らの出迎えを受けました。

3月16日の日比谷公会堂が初演奏です。

↑ 『音楽芸術』1953年5月号より

 

そしてなんと、この二人の共演が実現しそうになったそうなんです。(ブソッティさんの立場は。。?)


以下、音楽之友1953年6月号の記事です。

「シゲティ、ギーゼキングの両氏が"世紀の二重奏"の名の下に九分通り実現するところまで行きながら、あと一息というところで壊れ、全国ファンを失望させた。

二人の巨匠は、もともと国籍を異にしているが旧知の仲、25年前ニューヨークで共演して以来絶えて顔合わせの機会がなかったが、たまたま日本で落ち合ったので、この企画が持ち上がったものである。

朝日麦酒社長の山本為三郎氏(1893-1966、1955年に東響の理事長に就任)が、最初から非常に熱を入れて交渉した結果、初め難色を示したシゲティ氏も承諾し、曲目もベートーヴェン作曲「クロイツェル・ソナタ」他と決まった。10日夜日比谷公会堂からラジオ東京が中継、中部日本、新日本放送にも流すこととなり、宣伝の手はずもすべて整い、切符やポスターも出来上がって、発表するばかりになっていたところへ、シゲティ氏は毎日新聞を通じて、出演を断ってきた。理由は各地の演奏旅行で非常に疲れたこと、練習の時間がないことの二つである。その裏には両氏を招いた毎日、読売両新聞社の複雑な事情がありと一部で取り沙汰されている。」


。。。世紀の二重奏が実現しなかったのは残念ですが、偶然同時に来日しているからって共演が企画され実現直前までいったこと自体が驚きです。

 

↑ ブダペストのシゲティとバルトーク(Szigeti, Bartók)



2 コメント

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シゲティのプロコフィエフ追悼演奏 (沼辺信一)
2015-02-15 23:29:10
はじめまして。たまたま手元にシゲティの1953年来日時プログラム冊子があり、そこに曲目変更の紙片が挟まっていたので、プロコフィエフ追悼演奏の日付が判明しました。それは4月7日の日比谷公会堂でのコンサート、東京交響楽団との共演です。
当日はメンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」に続いて、バッハのト短調協奏曲(「本邦初演」とある)、ベートーヴェンの「ロマンス」ト長調、メンデルスゾーンの協奏曲が予定に組まれていたのですが、バッハに代えて「1953年3月4日他界せるセルゲイ、プロコフィエフ氏追悼の為めに」彼の協奏曲第一番ニ長調が演奏されたのでした。
シゲティ来日時の実況録音は残念ながら残されていないようです。
Re: シゲティのプロコフィエフ追悼演奏 (チュエボー)
2015-02-16 12:40:18
沼辺信一さま
貴重な情報ありがとうございます!
4月7日のバッハの協奏曲、しかも日本初演からの曲目変更だったとは。
録音がないのは残念ですが、きっと入魂の素晴らしい演奏だったんでしょうね。
それにしても大変価値のありそうなプログラム+曲目変更予告、うらやましいです。
ブログも読ませていただきます!

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