チュエボーなチューボーのクラシック中ブログ

人生の半分を過去に生きることがクラシック音楽好きのサダメなんでしょうか?

【追悼】一種特殊な感情を喚起する音楽(西村朗)

2023-09-18 21:36:00 | 何様クラシック

【西村朗氏は2023年9月7日にお亡くなりになりました】

西村朗・吉松隆『クラシック大作曲家診断』(学習研究社)は8時間の対談をまとめた本らしいですが、楽しくて一気に読んでしまいました。

この本で一番感心・同意したのは西村氏の「一種特殊な感情を喚起するものを持っているボロディンのような音楽と、全然それを持っていない音楽とがあることに気がついた。」という発言です。

自分でも何となくそのようなものが感じられる音楽があるなー、とは無意識に思っていたのかもしれませんが、文字にされて初めてハッキリしました!


西村氏はそのような感情を呼び起こす音楽の例としてボロディンの「ダッタン人の踊り」、「中央アジアの草原にて」(すごく賛成)、シューベルトの未完成交響曲、軍隊行進曲(第1曲)の中間部、シベリウスの「トゥオネラの白鳥」、「悲しきワルツ」、「フィンランディア」、ベートーヴェン第7交響曲のアレグレットを挙げられています。また、モーツァルトにはほとんど感じられないと付け加えられています。

この「感情」というのは、ボクとしては「幼少の頃何かを初めて見聞きした印象、普段は忘れてる懐かしさ、何かを思い出しそうになって気が遠くなる」に近いような気がします。
悲しいとか楽しいとは関係なく、別の世界に連れていってくれてフワーッと落ち着かせてくれるような音楽の瞬間。

こういう特別の感情を呼び覚ます音楽って、そうじゃない音楽とどこが違うんでしょうね?

音階?転調?聴く人のDNAや経験によっても違ってくるんでしょうか(自分は軍隊行進曲の中間部を聴いても「一種特殊な感情」にはなりません)

自分にとってそんな感情にしてくれる部分を持つ曲は例えばこんな曲です↓


特にスラブ系の作曲家の作品に多いと思いました。

・シューマンの「ミルテの花」等の歌曲や「クライスレリアーナ」などの初期のピアノ独奏曲

・ブラームスのドイツ・レクイエム、ピアノ協奏曲第2番第1楽章、交響曲第4番第2楽章、晩年のピアノ曲

・ブルックナーの交響曲第6番第2楽章

・ボロディンの弦楽四重奏曲第2番第1楽章、日本人のために遺してくれたかのような未完の第3交響曲。緩除楽章が聴きたかった。(これはもうグラズノフ作品と言ってもいいのではないでしょうか)

・グラズノフの交響曲全般、特に第1番

・プロコフィエフ交響曲第4番(改訂版)1,2楽章(相当ヤバい)

・プッチーニのラ・ボエーム、トスカの一部(どうしてなんだか全くわからない~)

・ドヴォルザークの交響曲第8番第4楽章、チェロ協奏曲

・ヤナーチェク「草陰の小径にて」

・フィンジのチェロ協奏曲

その他、クラシック音楽に限らず、ビーチ・ボーイズのPet Soundsとか「あります」(小保方さんの声で)。


...西村さんの音楽を聴いてみます!一種特殊な感情になってストレス解消したい~

(2014年3月30日の記事を修正しました)


ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番冒頭のベートーヴェン引用

2021-04-01 23:54:01 | 何様クラシック

【8年前の記事を修正しました】

ベートーヴェンの幻想曲ト短調 Op.77の冒頭聴いたらビビったわ。

ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番冒頭のパクリじゃん(逆)

ショスタコ作品はこの曲に限らず引用の嵐だそうですけど、ここではアタマからやってるわけですね。

↑ ベートーヴェン

↑ ショスタコーヴィチ


マーラー交響曲第8番「千人」とショパンの幻想即興曲

2018-10-03 21:04:05 | 何様クラシック

【2014年10月27日の記事に画像を追加しました】

第九合唱に入門してから少し経ちますが調子に乗って生意気にもマーラー千人も唄わせてもらってます。8番は一番好きじゃなかったのに一番好きになりました。

ところでマーラーの第1部、Kalmusの楽譜で練習番号13バス、Tu Paraclitus(守護者であるあなた?)ってどこかで聴いたことがあるメロディーだなーって思ったらショパンの幻想即興曲(作品66)でした。

↑ マーラー

↑ ショパン



どっちも4分の4拍子で「ソーラソドレミーソー」。最初と最後の「ソー」はマーラーではソプラノとアルトもやっています。

マーラーがショパンのメロディーを知らなかったとは到底思えないので何らかの意味を込めての引用なのでは?


ショスタコーヴィチ「幻の」弦楽四重奏曲2曲(1960~1962)

2016-10-31 22:27:07 | 何様クラシック

NMLでショスタコーヴィチ「未完の弦楽四重奏曲」からの1楽章を初めて聴いてビビりました。こんな個性丸出しの曲を何故今まで知らなかったのかと。ちょっと得した気分。

2003年にショスタコーヴィチ・アーカイブから発見された草稿(“Quartet No. 9/I” と題されたAllegretto楽章。結局は交響曲第13番のものとなる作品番号113がとりあえず与えられている。変ホ長調)をもとにロシアの作曲家、Roman Ledenyovが補筆完成。2005年1月17日にボロディン弦楽四重奏団によって初演されました。


↑ アレクサンダー弦楽四重奏団の演奏。

このCDの解説書によるとショスタコーヴィチは1960年代初頭に2つの弦楽四重奏曲を完成、もしくはほとんど完成。しかし両方ともボツになってしまいました。

【1つ目】1960年末にはショスタコーヴィチは友人のIsaac Glikmanに「この新しい四重奏曲はロシア風スタイルになるだろう」と語ったが、問題が生じ、数週間後には「第9四重奏曲を完成させたが非常に不満足で健全な自己批判から発作的にオーブンで焼いてしまった」と伝えたそうです。

【2つ目】1962年にショスタコーヴィチはプラウダ誌の記者に「第9四重奏曲を計画している。オモチャと屋外での遊びについての子供の作品で、2週間以内に完成する」と述べたそうです。しかしながら彼の新しい四重奏曲を要望していたベートーヴェン四重奏団のメンバーが出来上がり具合をショスタコーヴィチに伺っても先送りにされ、結局は日の目を見なかった。

1964年の春には「公式の」弦楽四重奏曲第9番が発表されます。だがそれが「ロシア風スタイル」でも「子供の作品」でもなかったため、まったく別系統の作品として後の学者たちを悩ませてしまった。上記2003年に発見された楽章は果たしてどちらの四重奏曲のプランに基づく楽章なのか?

。。。何度かアレクサンダー四重奏団の録音を聴いてみたところ、ショスタコーヴィチにしては表面的な優しさが前面に立っちゃう音楽かもしれないけど自分には全く「子供の作品」に聞こえませんでした。だから消去法では「ロシア風」なんだと思います。もしかしたら全然関係ない作品なのかも(我ながら退屈な結論~)


フォーレの後期室内楽曲 (弦楽四重奏曲)

2016-01-25 20:32:01 | 何様クラシック

【2013年9月11日の記事にフォーレの交響曲ニ短調に関するみみっちー怒りを追加しました】

 

電車に乗ってiPodでフォーレのピアノ五重奏曲第2番を何気なく聴いてたんですが、むっちゃ後悔しました。

こんな泣かせ王の心のこもった音楽を人前で聴いちゃいけなかった!第三楽章はその悲しみとやさしさに涙を堪えられないです

 

作品番号100番台の室内楽を聴いてる間はボクのような性格ヒン曲がった人間でも気持ちよく素直な人格になれる気がしますね~!

しぬ前は時間とお金をかけて地球上のいろんなところを見てまわるよりこれらの哀しくも美しく前向きな音楽たちのうち一曲だけを聴くだけで十分。。

 

後期室内楽曲は全部好きだけど、今の自分が特に気に入っているのがこのピアノ五重奏曲第2番と、ヴァイオリン・ソナタ第2番、それと弦楽四重奏曲です。

 

このうち弦楽四重奏曲はフォーレ最後の、なんと79歳のときの作品!噛めば噛むほど味が出る、スルメ音楽の代表格かも。

この曲も雑念捨てて集中して聴いたら泣くなっていうほうが無理。

ドビュッシー(ラヴェルでしたっけ?)に「フォーレ先生、弦楽四重奏曲を書いておいたほうがいいですよ」って後輩にすすめられて作られたこの曲の、特に中間楽章を聴いているときはベートーヴェン後期を含めたあらゆる弦楽四重奏曲の中でもしかしたら最高かもって。フォーレの室内楽ではベートーヴェンみたいに独りぼっちでなく、つねにフォーレが誰かと対話しているような気が。。フォーレ以外の誰かが確実にいる。

だからかもしれないけどいかに自分が日常のストレスに無意識に悩んでるかに気付かせてくれて、つらかったねって優しく癒してくれます。

本当に良い曲というのは自己主張するだけでなく、聞き手一人ひとりの心の声にも耳を傾けてくれるものなのか。

 

でも最初で最後のピアノなしの室内楽なもんだから、何となくピアノ欠乏感があるんですよね。いつもは当たり前のようにいた大切な人がいないっていうか。。もしかしてフォーレ自身?

実は地上の弦楽四重奏に合わせ天国でフォーレがピアノを弾く図式の五重奏曲第3番なのでは?なんて

 

それにしても70歳台のフランス大作曲家爺と極東のアホな若造が時空を越えてちょっとでも心が通じるなんて、音楽ってすごい~

自分もいつまでも若々しい感性のジジーになりたい!

。。。とか自己満足の世界に浸っていたら

 

ヴァイオリン・ソナタ第2番の第2楽章のテーマは1884年の交響曲ニ短調作品40(廃棄されちゃった、残念!)からの転用だし(チェロ・ソナタ第1番Op. 109のどこかの部分もその交響曲からの転用だそうです)、弦楽四重奏曲第1楽章はヴァイオリン協奏曲ニ短調作品14から取られたものだったんですね。知らないで初めてコンチェルトを聴いたときはビックリ!

これって有名な話らしいけど、ボクは迂闊にも知りませんでした。

なるほど爺さんの割には青春っぽいはずや。。ってか俗物の発想だと良き青春時代を回想してるわけやね。

他の室内楽曲にも若書きの引用があんのかな?

 

でもそんなことに関係なくボクにとって泣かせ王であることには絶対変わりないのです。

Gabriel Fauré (1845-1924) マルセル・プルースト(Marcel Proust, 1871-1922)の写真コレクションより

 

【追記】2016年1月25日夜7時30分からのNHK-FM「ベストオブクラシック」でヤノフスキ/クリーヴランドによる、廃棄されたはずのフォーレ交響曲ニ短調が放送されるんですね。必ず聴かねば!

 

【さらに追記:2016年1月25日20時30分】

怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒

なんか普通にフランクの交響曲が始まったけど!? 早めに帰宅して録音態勢万全で待機してたのに。。。