マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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都祁白石・ショッピングセンターたけよしの刺し鯖

2021年04月24日 08時58分08秒 | 民俗あれこれ(売る編)
やや腰痛ぎみだった身体。

気分転換に出かけた行先は、奈良市都祁白石町。

どうしても食べたくなった塩っ辛いサシサバ買い。

お盆の真っ盛りの15日の午後では売り切れも仕方ない。

気になれば、なるほどにうずうずしてくる気持ちを抑えきれなくて・・。

以前も買ったことがある食品売り場は、奈良テレビ放送で繰り返すショッピングセンターたけよしのコマーシャルソング

「♪・・みつけっちゃたねェ~ ゆめ~いっぱい なんでもそろぅ うっ! たけよし~・・♪♪」。

午前9時から夜の8時までが営業時間。

運よく、見つかった「たけよし」の刺しさば。

1パックに1尾売りの480円。

6枚も残っていた和歌山産の刺しさばに歓喜する。

賞味期限は9月13日。

そもそも刺しさばは、保存食なんですわ。

入手した時間帯は、午後5時45分だった。

売り場の棚にあった紛らわしいPOP。



「脂がのった昆布だし塩鯖。北海道産の昆布だしにじっくり漬け込み、まろやかな味に仕上げました」。

その横にあった手書きPOPが「サンマヒラキ」。

益々紛らわしくなるPOP文字。

鯖なの、それとも秋刀魚なの・・。

魚肌の文様でわかる鯖そのもの。

魚形から見ても秋刀魚の開きではない。

これこそ刺しさばである。

自宅に戻ったその夜。

すぐには食べない貴重な逸品。

食べたいと思うときに食卓に・・。

そうは思っていても思い通りにならない家庭の食卓。

口にするのは、私一人だけだ。

袋から取り出した刺しさばを皿に盛る。

我が家ではでかい方になる皿に、丸々一尾の刺しさばを置いた。



記録撮影のために、まずは開いた背中を撮る。

カラカラに乾いた背の部分の文様は、真鯖。

身は厚かったと思える面構えである。

わざわざ買ってきた刺しさば。その理由は、内面の干し具合を観たかったからだ。

15日に取材させていただいた山添村勝原の民家のあり方。

撮らせてもらった刺しさばの映像は、背であった。

背を裏返して身の部分を・・の思いはあっても、そこは遠慮。

なぜなら、同家では供えたその晩にいただく馳走であるから、遠慮した。

私が買って、私が食べる。

実写に、味見をしたい和歌山県産の刺しさば。

まずは、焼きを入れる。

我が家の炊事場コンロは、ガスコンロ。

魚を焼くコンロに入ればいいのだが・・・。

なんとか入れて、火を点ける。

焼きはどれくらいの時間をかけていいのやら。

えいや、っと思う時間で終えた焼き具合。



ぷくぷく焦げの状態。

火を止めた時間が丁度いい。

そして、遠慮なく、裏返した刺しさば。

コンロ焼きに裏返しはどうなのだろうか。

その焼きを見ることなく、箸が勝手に動き出した。

カチコチだと思っていた刺しさば。



柔らかくもないが、ほどほどに箸が入る。

ちょっと掻い出しては口に入れた一口目の味は、想定通り。

思わず口に出る「しょっからーーい!」。



日本酒がすすむ塩辛い味。

塩鯖のレベルではない。

とにかく、しょっーーかっ、らーーい。

塩辛いから、また日本酒を喉に押し込む。

一気に食べるには、勿体ない。

骨と皮は無用。

箸で食べられる身を剥がす。

この作業は、嫌いでもない。

むしろ大好きな作業。

どのような魚であっても、箸を用いて、身を削ぐ。

吉野の杉箸は使いやすい。

竹製の箸も使いやすい。

そのなかでも一番使いやすかったのは、生駒・高山に住まいする職人が作る竹製の割りばしである。

中でも廃材のススダケが一番だった。

二度と手に入らないススダケの箸・・・。

売っていても高いだろうな。

話しを刺しさばに戻そう。

大皿一枚の大きさだった刺しさばも、皮と骨を取り除いたら、身はちょっとに・・。

大半は私の口にちょびちょびいただいたが、ほんの少しだけを残した。

食べさせてあげたい友人たちと出会う日は、9月に入ってからだ。

毎年に訪れる十津川村の滝川。

その上流に広地がある。

そこでいただく昼めしにちょい喰いしてもらい、刺しさば味わってもらおうと魂胆したわけだ。

9月8日、メイン食の準備中に出した一皿。

見たとおり、ほんのちょっとだけの刺しさば。



箸で摘まんで口に入れる。

その味、しょっぱぁーーイ!。

強烈なしょっぱさに、参加者全員が、一様に口走った。

塩っけが強いから夏場に相応しい味。

皿にもったほんのちょびっとが、すっかり消えた。

ちなみに全日本さば連合会会員のSさんが、FBにコメントしてくださった「刺し鯖って、はじめて知りました😂ググッたら、食べたくなりました!」に、今さらであるが、”刺し鯖“をキーに、ネットをぐぐってみたら、あるある・・。

一つは、江戸の地にも「刺鯖」があったそうだ。

江戸文化歴史検定試験にも出題される「刺鯖」と「鯖代献上」。

天保九年(1838)刊の『東都歳時記』に、7月15日の盆に「中元御祝儀。荷飯(はすめし)・刺鯖(さしさば)を時食とす(刺鯖は、その色、青紫のものを上とす。能登産を上品とし、越中これに亜(つ)ぐ)、良賤生身魂(いきみたま)の祝ひ(七月の盆に、亡者の霊魂来るよしを言ひてまつるより移りて、現存の父母兄弟などの生御たまをいわう意なりとぞ)」。

まさに探し求めていた生身魂(いきみたま)・刺し鯖の歴史譚である。

ブロガーの「気ままに江戸♪」さんが、アップしていた記事に救われる江戸文化歴史検定図書の『江戸の祭礼と歳事』の「刺鯖」と「鯖代献上」。

「7月15日、祖霊を敬う行事であるとともに、生きている両親の長寿を祝う“生身魂(いきみたま)”行事もしていた」というのは、奈良県内東部山間地に、今なお継承しているお盆に生きている両親の長寿を祝う「刺し鯖」御供である。

ちなみに、「気ままに江戸♪」さんが続いて書いていた産地情報。

「東都歳事記によれば、能登産が最上に、次いで越中産だった」そうだ。

私の知る範囲では、当記事でもわかるように和歌山県産。

以前、山添村・桐山の大矢商店店主から聞いた話では、サシサバの仕入れ先は奈良県中央卸売市場であるが、作っている人は和歌山・新宮だったと・・。

また、後年になって天理商店街に商売するお店で知った仕入れ先は、北陸の福井県。

また、宝暦調書からわかった石川県羽咋郡・西海産もある。

江戸期とは違って、現代は産地文化に用をたす県民に、多様な流通経路も絡んでいるだけに、時代を遡り、調査するには限界を感じる。

また、「奈良の食文化研究会」によれば、同じく奈良県中央卸売市場の塩乾物卸売業者の奈良塩乾物㈱の仕込み。福井県丹生郡越前町の江戸時代の文書に「・・二尾一組の刺し鯖を供物・・」とあるから、『江戸の祭礼と歳事』の記載と同じだ。

民俗行事に登場する刺しさばもある。

事例は、お盆行事でなく、形態も違う島根県『津和野町史』にある鶴舞神事に頭屋儀式に添える刺鯖だが、これまで揚げていた生身魂(いきみたま)とはまったく異なる事例もある

また、刺鯖(さしさば) 初秋 – 季語と歳時記 - きごさい歳時記によれば、刺し鯖は、季語にもなるようだ。

※やっと登場した私が取材した刺し鯖ブログ記事に忘れていた「刺し鯖」は、冷たい茶粥で食べると云ったのは辻村商店の店主だった。

(H30. 8.15、19 SB932SH撮影)
(H30. 9. 8 SB932SH撮影)