ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

哀悼

2018-07-26 | アメリカ事情

 

Pinterestから

 

 

去る7月10日は、アメリカ人にとって非常に親しみのある声優Mel Blancの命日であった。日本では日本語に吹替されているので、あまり知られてはいないが、彼は、"The Man of 1000 Voices"(千の声を持つ男)として知られ、特にバッグス・バニーに代表されるハナ・バーベラ・プロダクションの漫画作品に登場するキャラクターの声として有名であった。彼の声は、バッグス・バニー、ダフィ・ダック、ヨセミテ・サム、猫のシルべスター、などLooney Tunes/Merrie Melodiesシリーズで使われ、その他にもオリジナルのウッド・ペッカー、トムとジェリー、The Flinstones原始家族フリンストーン、あるいは日本で放映時には『恐妻天国』)などでも声優として活躍した。こうした漫画動画は、現在の日本人にどれだけなじみがあるかわからないが、アメリカではいまだに人気がある。メル・ブランクは、特徴のある様々な声音を使い分ける器用な声優・俳優・歌手であった。彼は心臓関係の疾患のため1989年81歳で死去した。なんと9歳の頃から喫煙を始めたというから驚くが、それでも81歳まで生き永らえたのは興味深い。その彼が亡くなった時、新聞には、"SPEECHLESS"と言う漫画が載った。千の声を持つ人が亡くなって、残された者が言葉もなくなるほどの哀悼の意を表している。これを見て、この意に同感した人々は多い。当時たったの5歳だった長男さえ、悲しがった。

 

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セサミ・ストリートやマペット・ショウでおなじみの繰り人形師のJim Henson(ジム・ヘンソン)が、1990年、たった53歳の若さで、化膿レンサ球菌による感染症で、ふいに亡くなった。最初は感冒によく似た症状だったが、深刻な症状ではなかったのに、5日後逝去してしまった。そのニュースは信じがたく、これだけ医学が発達している時代に、とさえ皆思ったものだった。彼の葬儀は、彼の創造した人形たちが、「聖者の行進」でマーチするといういかにもハンソンらしい葬儀であった。その時新聞に載ったのが、下のミッキーマウスがカエルのカーミット(ヘンソンの代表作品)を慰めている図である。

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「人生は映画のようなもの、自分で自分の人生の終わりを書こう。信じ続け、なにか演じるふりをし続けよう。」

 

 

ほんの子供だった私にも、1966年12月15日ウオルト・ディズニーが肺癌から併発した肺炎で亡くなったというニュースは、衝撃的でさえあった。子供だった故、享年65歳というのが、「ああ、そんなお年だったんだ、それじゃあ仕方ないかもしれない」と思えたが、今思うと、まだまだ、のお年であろう。数々の漫画名画、テレビの番組、そしてディズニーランドが、どれだけ子供達に夢を与えてきただろうか。今でこそ、彼は生前人種差別者で性差別者だった、と様々にいわゆる「政治的に正しい」(politically correct)(差別的な言葉を交えない表現の仕方:看護婦は看護師・士、年寄は高齢者など)人ではなかった、と言われるが、彼の生きていた時代は、そうした風潮がノーマルであったのは、考慮に入れていないかのようだ。


余談だが、幼少時に私の好きな子供の話の一つは、ヘレン・バナマンの「ちびくろサンボ」(英The Story of Little Black Sambo)で、これはトラがぐるぐる回るうちにバターになってしまう話で、楽しかった。 私は、主人公のサンボが肌が黒いことなど、気にもかけなかったし、この話で、有色人種に対する蔑視や差別感など、ひとつも感じはしなかった。けれど、この本は、1988年以降どの出版社も出版しなくなり、既刊されていたものも、図書館は置かなくなった。それは「政治的に正しくない」という理由からだった。 ちなみにアメリカにはファミリー・レストランで「Sambo's」が47州にまたがってあった。これは1957年に Sam Battistone, Sr.とNewell Bohnettが開いたレストランで、二人の名前から、サンボと名付けられた。ところが1980年代に入って政治的に正しくないと騒がれ、名称を変更したりしたが、結局ファミリーレストランという風潮自体がアメリカでは下火になり、少なくとも1983年までには全店廃業している。

 

そうした風潮から、ディズニーの死後彼がいかに政治的に正しくなかったかについての本も多く出版されたものだ。けれど、彼が亡くなった時、下のような画が新聞や雑誌等に載せられ、世界中が悲しがったのも事実である。

 

 

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そしてもう一人、偉大な、と形容したいアメリカの漫画家は、Charles Monroe Schulz、チャールス・モンロー・シュルツである。ピーナッツシリーズのチャーリー・ブラウンやスヌーピーの生みの親である。彼は2000年2月12日結腸癌のため、こよなく愛したカリフォルニア州サンタロサで、77歳でこの世を去った。その作品は温厚で、キリスト教の下地を持ち、どの国の人々にも好まれていた。まさに彼の人柄そのままであった。彼自身は、「私はもう教会に行くことはありません...すべての人間や私たちが住む世界への世俗的人道主義に近づいていると言えるかもしれません。」と言ったように、晩年、特定の教会・教派には属してはいなかった。娘の一人がある教会に改宗して、18か月の英国伝道に赴いた時は、彼女に漫画付きの思いやり溢れる温かい手紙を毎週書き、励ました。そんな彼の訃報の後で、下の漫画が新聞に載った。シュルツも又国を問わずに多くの人に愛され、その逝去は惜しまれた。



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