昨日の「菊次郎とさき」は
「いかにして子供を突き放すか」の見本みたいなお話でした。
子供は親に反発するもの・・そして自立していくわけだけど・・・
親の敷いたレールを歩みたくないと思ったら
何が何でも自分で頑張らないといけないわけ
まさに「親の死に目に会わないつもり」でね
そして親の方も「子供は死んだ」と思って突き放すしかないのよ
昨日のさきさんの「半人前云々・・」のセリフには、血の滲むような「親心」が
隔されているわけで・・
(本当は甘やかしてやりたいけど、それをやると本人のためにならない
という決意ね)
それがわかるからタケシも敢えて何も言わずに出て行くのよねーー
さきさんは本当に「悪女の深情けタイプ」の女性で、
菊さんのために病院に夜に付き添ったり、タケシの親方にお願いに行ったり・・・
ある意味では相手をダメにしてしまう性格の人ですよ
ところで・・・・
大君を見ていると、我が家に下宿していた学生を思い出すのねーーー
うちは昭和40年代から東北大専門の下宿屋でした
昨日のタケシがフランス座にいた頃の昭和50年代というのは、いわゆる
「モラトリアム人間」が出て来た時代
うちでも学生の質が(悪い方向に)変わって行くのを目の当たりにして
随分悩みました
(なんたってマザコンで何事においても自分で決められない奴とか、
親におねだりばっかりする奴とか枕が変わると寝れないだの・・って
そんなのが増えて。そのくせ「大学生」というプライドが高い)
私達と同年代の昭和60年代になると、今度は勉強しないで遊んでばかり
なんていうのがザラでした(居酒屋のバイトが流行りだしたのがこの頃)
で・・・
ある学生は折角医学部に入ったのに「やっぱり京大を受けなおす」なんて
言い出して一ヶ月で大学を辞めちゃったし・・・・(アホか)
居酒屋でバイトしすぎて留年したのもいました・・・
一個下で一人っ子で甘えん坊の学生には何時間も説教したこともあるわーー
その中に一つ年上で大君みたいな顔の学生がいたのね
彼がある日私に言ったの。
「ふぶきさん。僕と一緒に写真館で写真を撮ってください」と。
へ?と驚く私に彼は一冊の本を見せたの。それは福沢諭吉の本で
扉に彼が外国人の女性と写っている有名な写真が載っていたのよ。
その女性が私にそっくりなので、これと同じスタイルで撮りたいというわけ。
悪い気はしなかったので、数日後、私はクリスチャン・ディオールのドレスに
身を包んで一緒に写真を撮ってあげたわよ
で、帰りの喫茶店で・・・・まさかそういう展開になるとは思わなかったけど
彼が「僕、留年しようと思ってるんです」ってしゃべり始めたの。
理由は「社会人になる自信がない」っていうのねーー
(何で年下の私に・・・?)
当時の私は自分で学費を払っていたし、奨学金も受けていたから
何が何でも4年で卒業しなければならず(チャヌとかジェホの心境よー)
人生の中で一番お勉強していた時期だし、バイトも必死に頑張ってました。
そんな私に「社会人になる自信がないから留年しようと思ってる」と
ぬけぬけという彼がものすごく許せなかったのねーー
思わず、珈琲一杯で2時間くらい彼と言い合いして、
仕舞にはこっちが説教していたっけ・・・
(どんな話をしたのか覚えてないけど、社会に出るのが恐くない人間なんて
いないよーとか、親にお金を出して貰ってるくせに言うことだけは一人前の
男ってさいてーとか・・
悔しかったらバイトでもしてみろ・・・とか、散々言いたい放題言いました)
そしたらそのいがぐり頭の世間知らずのおぼっちゃまは、かえって私に
好感を抱いたらしく「付き合ってください」とまで言ったけど・・・・
ごめんなさいでした
今だったらもっと優しく適切に何かを言ってあげられたかもしれない・・・
でも彼にとって多分、遠慮なく「これはいいけどこれはダメ」って言ったのは
私が最初だったのかもしれないなーーと思うの。
「東北大の工学部に入ったのだから」って彼を取り巻く環境は多分
「腫れ物にさわるような感じ」だったのかもしれないよね。
しかも親のプライドは満足するし、息子もいい気分・・・
でもいざ卒業の時期になったら「なんで大学に入ったのか、
大学で何を学んだのか、就職していいのかわるいのか」
さっぱりわからなくなってしまったというわけ。
その後彼は・・・大学院に入ってアパートに移っていったけど。
きっと延々と大学に残りつづけたかもしれないよねーー
そういう人生もまたいいのかもしれない・・と今は思います
私も学生時代に立ち止まって「本当にやりたい事はなんなのか」と
考える時間がほしかった・・・そんな境遇を許されている人がとっても
とっても羨ましいんですよーー
タケシもね・・・決して裕福な家ではないけど、末っ子で焦って働く必要も
なく、親の面倒を見る必要もなく、好きにしてもいい境遇で自分を発見できた
という事はとっても幸せな人なんだと思います
(40になっちゃあもうおしまいよーー)