靫蔓(うつぼかずら) 水本爽涼
第四十一回
「…。他の者(もん)も、恐らく作り話か錯覚したか、ぐらいに思うやろけどな…、ほんまの話なんやわ…」
直助の口調は真剣身を帯びた。
「まあ、ええがな…。あっ、それポンな」
「わしらには、なんのこっちゃよう分からんで、細こう話してえや」と、ポンされた白牌を見遣りながら鍵熊の熊田は、さりげなく言う。そして、徐(おもむろ)に、一筒(イーピン)牌を捨てた。
「ロン! 断平三色(タンピンサンシキ)ドラ一…跳ねたな」
リーチをかけていた河北屋の河北真造が嬉しそうな声で宣言した。少なからず、自慢気もある。
「やってもたなぁ~…。親でのうてよかったわ。ほい、一万二千や」
万点棒と千点棒二本を卓上に熊田は投げ入れた。少々、渋い顔をしている。
「すまんな、ちょいと大きかった…」
河北が笑いながら詫びるように呟き、リーチ宣言の百点棒など、卓上の棒の全てを自分の箱へ収めた。
「まあまあ…、東場(トンバ)で、まだ始まったばっかしや!」
慰め口調で笑顔の勢一つぁんが励ます。