靫蔓(うつぼかずら) 水本爽涼
第五十回
「なんか、思い当たることでも、ないんかいな?」
勢一つぁんは麻雀牌をケースに収納しながら訊ねた。
「まあ、今のところは、な…」
「とにかく、様子を見てみたらどないや?」
鍵熊が、ポツンと放つ。
「熊田はんの言うとおりや。そうしか、しゃあないがな」
勢一つぁんが追随し、他の者も何やら呟きながら頷いた。場が萎(しぼ)んでいる。
「これは関係あるんかないのか、よう分からんにゃけど、ひとつだけある…ような、ないような」
「なんやねんな、どっちや!」
直助の曖昧な言い回しに、勢一つぁんはジレた。有り得ない話と不信感を拭えない勢一つぁんだが、いつの間にか、直助の壺の中へ引き込まれている。
「枕元に立ったソレやが、どっかで会(お)うたような、ないような…」
「なんやいな、もう! どっちなんや?」
「まあ、そう急かさんと…」