水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 靫蔓(うつぼかずら) (第四十九回)

2012年06月13日 00時00分00秒 | #小説

  靫蔓(うつぼかずら)       水本爽涼                                     
 
   第四十九回 
「え~と、どこまで話したんかいな? また、忘れたがな、ははは…。…そうや、枕元に蒼白い幽霊…か、どうかは分からんけど、とにかく見たんや。そんで、布団に潜り込んだ。…この辺りやったな?」
「そや。そんで、そのあとは?」
「昨日(きのう)の今日やがな。朝一でここへ来たっちゅう訳でな」
「昨日の晩か…。なんか、生々しい話やなあ」
 勢一つぁんが直助の顔を窺う。
「これが夏なら丁度、もってこいの話なんやけどな。ちょっと時期がずれとる」
 鍵熊が笑って茶化す。一瞬、場の雰囲気が和んだ。
「皆、なんかええ手立てはないもんやろかな」
 直助が全員に伺いをたてる。
「…、手立てっちゅうてもなあ…」「そうそう…」「ほやなあ…」と、直助以外は思案顔になるが、煮えきらず、解決策をすぐには出せない。それもその筈で、問題の相手は、この世のものではないし、だいいち、目に見えない妖しげなシロモノなのだ。


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