靫蔓(うつぼかずら) 水本爽涼
第四十九回
「え~と、どこまで話したんかいな? また、忘れたがな、ははは…。…そうや、枕元に蒼白い幽霊…か、どうかは分からんけど、とにかく見たんや。そんで、布団に潜り込んだ。…この辺りやったな?」
「そや。そんで、そのあとは?」
「昨日(きのう)の今日やがな。朝一でここへ来たっちゅう訳でな」
「昨日の晩か…。なんか、生々しい話やなあ」
勢一つぁんが直助の顔を窺う。
「これが夏なら丁度、もってこいの話なんやけどな。ちょっと時期がずれとる」
鍵熊が笑って茶化す。一瞬、場の雰囲気が和んだ。
「皆、なんかええ手立てはないもんやろかな」
直助が全員に伺いをたてる。
「…、手立てっちゅうてもなあ…」「そうそう…」「ほやなあ…」と、直助以外は思案顔になるが、煮えきらず、解決策をすぐには出せない。それもその筈で、問題の相手は、この世のものではないし、だいいち、目に見えない妖しげなシロモノなのだ。