靫蔓(うつぼかずら) 水本爽涼
第四十五回
「あっ! 上がってるわ…。イカサマやないでぇ~」
直助が牌を倒すと、全員から驚きの声が漏れた。視線は集中され、倒された上がり牌の十四枚へ一斉に注がれた。
「ふう~~。確かに上がっとる…。こんなことて、あるんやなあ~」
勢一つぁんの溜息の混じった声が放たれ、直助以外の全員は戦意を失くしてしまった。こうなっては、もう仕方がない。茶を啜る者、煙草を燻(くゆ)らす者、各自がそれぞれに別の動きをする。牌はそのまま卓上へ乱雑に放置された。
「もう、今日はやめとこか…。そより直さんの話、まだ途中までやったな。続きを皆で聞こかい」
「ほやな」「ああ…」と、直助は促される破目に陥った。麻雀は完全に頓挫して御破算となった。
「ええと、…どこまで話したんかいな。…、そうや、枕元に蒼い光があって振り向いた。そこに女性がいた。いや、そう見えたんやけどな…。もう恐ろしいのなんのって、布団を頭から被って震えてたんや」
「その女、いや、霊か…。に、声、かけられたんか?」
「そんなん、おまはん、声かけられてたら、飛び起きて逃げてるがな」