『はあ、そうなんでしょうが…。僕ら猫社会では生活が大変になるんですから、場合によれば死活問題になるんです』
「死活問題とは、捨て置けんな…」
里山は腕組みすると、何を思ったのか考え込んだ。そして、しばらくすると、里山は徐(おもむろ)に口を開いた。
「…思い切って、独立するか」
『はあ? どういうことです?』
「いや、なに…立国だよ、立国」
『立国?』
小次郎は里山が言った意味が理解できず、尻尾の先を右に左にと振った。人間だと、首を傾(かし)げた・・となる。
「そう、立国! まあ平たく言えば、一家を構える、もう少し分かりやすく言うなら、世帯主として生活する・・ということだ」
『あの…お言葉を返すようですが、今でも十分、世帯主だと思うんですがね』
「それはそうだが、心意気がまったく違う」
『どう違うんです?』
「そこは、それ…まあ、なんだ。口では言いにくいから…おいおい、言葉にしてメモっとくよ」
メモっとかれても…と小次郎は思ったが、口には出さず思うに留(とど)めた。
『それなら僕は、立国しましょう。どうしていいのか、よく分からないんですが…』
「いや、言った俺にも、こうしろ! とは言えんのだが…。とにかく、立国しなさい」
『はい、そうします』
話は中途半端に纏(まと)まった。