「どうも! 駒井さん」
「これは里山さん、久しぶりです! 小次郎君、元気だったかい?」
テレ京の玄関[エントランス]には、今日も決まりごとのように駒井が里山達を出迎えていた。オファーをレギュラー的に了承してもらっている手前、里山と小次郎は特別待遇なのである。
「ニャ~~!」
小次郎は大きめの猫語でニャゴった。通訳すれば、元気ですよっ! くらいの意味である。
里山と小次郎は駒井の先導で収録のスタジオへと向かった。通路の途中に制作部長の中宮が立っていた。やはり、出迎えである。特別待遇されている雰囲気が里山にヒシヒシと伝わった。
「これはこれは、里山さん!」
笑顔で片手を出し、中宮は握手を求めた。反射的に里山も手を差し出していた。
「部長もお元気でなによりです」
「お蔭さまで、相変わらず高視聴率を叩きだしておるようで、私もスポンサーに鼻高ですよ」
「お蔭(かげ)さまで、うちの小次郎も世帯主ですよ、ははは…」
「ああ、そのお話は駒井から聞いております。なんでも、みぃ~ちゃんとご一緒になられたようで…」
「ええ、そうなんですよ。それどころか、みぃ~ちゃんが近々、生みます」
「それは、それは…」
小次郎は里山が提(さ)げるキャリーボックスの中で会話を聞きながら照れた。