猫内(びょうない)会長に促(うなが)され、ぺチ巡査は徐(おもむろ)に口を開いた。
『え~~…まあ、そのなんでございます。…長々と皆様に可愛がられお世話になりました私でございますが、本日をもちまして、無事、退職の運びとなりました。つきましては、かねがねお世話になりました皆さま方へ、甚(はなは)だ高いところからではありますが、ひと言、御礼(おんれい)の言葉を述べさせていただきます。長らくの間、皆さま方のご高配に浴し、誠に有難く思うところでございます。…え~~』
その後も、しばらく交番を去る名残りの挨拶をぺチ巡査は続けた。話し初(はじ)めは躓(つまづ)いたぺチ巡査だったが、どうにかこうにか無事、挨拶を終えた。冬陽の傾きは早い。ぺチ巡査が挨拶を終えた頃、公園内にはすでに夕陽が射(さ)し込もうとしていた。里山は椅子から立ち上がり、招待された猫達の後ろ姿を見ながらその話を聞いていた。
猫内(びょうない)会長に促(うなが)され、ぺチ巡査は徐(おもむろ)に口を開いた。
『え~~…まあ、そのなんでございます。…長々と皆様に可愛がられお世話になりました私でございますが、本日をもちまして、無事、退職の運びとなりました。つきましては、かねがねお世話になりました皆さま方へ、甚(はなは)だ高いところからではありますが、ひと言、御礼(おんれい)の言葉を述べさせていただきます。長らくの間、皆さま方のご高配に浴し、誠に有難く思うところでございます。…え~~』
その後も、しばらく交番を去る名残りの挨拶をぺチ巡査は続けた。話し初(はじ)めは躓(つまづ)いたぺチ巡査だったが、どうにかこうにか無事、挨拶を終えた。冬陽の傾きは早い。ぺチ巡査が挨拶を終えた頃、公園内にはすでに夕陽が射(さ)し込もうとしていた。里山は椅子から立ち上がり、招待された猫達の後ろ姿を見ながらその話を聞いていた。
その後、ぺチ巡査の退職送別会パーティも無事終わり、招待された猫達が思い思いに引き揚げると、里山と小次郎も公園から家へと戻った。
『これからは、ツボ巡査だけですが、大丈夫ですかね?』
玄関へ入った里山に、小次郎が脊中越しに声をかけた。
「俺には猫社会のことはよく分からんが、なかなか気概(きがい)がある若猫に見えるがね」
里山は靴を脱ぎながら小さくそう答えた。
『ええ、頼りにはなりそうなんですが、今一、経験値が…』
「ああ、新任だからなぁ~、それはあるだろうが、そのうち馴れるさ」
『だと、いいんですが…』
親身にはなっているのだろうが、小次郎には里山の言葉がやはり人ごと、いや、猫ごとに聞こえた。