水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ⑤<3>

2015年06月05日 00時00分00秒 | #小説

 猫内(びょうない)会長に促(うなが)され、ぺチ巡査は徐(おもむろ)に口を開いた。
『え~~…まあ、そのなんでございます。…長々と皆様に可愛がられお世話になりました私でございますが、本日をもちまして、無事、退職の運びとなりました。つきましては、かねがねお世話になりました皆さま方へ、甚(はなは)だ高いところからではありますが、ひと言、御礼(おんれい)の言葉を述べさせていただきます。長らくの間、皆さま方のご高配に浴し、誠に有難く思うところでございます。…え~~』
 その後も、しばらく交番を去る名残りの挨拶をぺチ巡査は続けた。話し初(はじ)めは躓(つまづ)いたぺチ巡査だったが、どうにかこうにか無事、挨拶を終えた。冬陽の傾きは早い。ぺチ巡査が挨拶を終えた頃、公園内にはすでに夕陽が射(さ)し込もうとしていた。里山は椅子から立ち上がり、招待された猫達の後ろ姿を見ながらその話を聞いていた。
 猫内(びょうない)会長に促(うなが)され、ぺチ巡査は徐(おもむろ)に口を開いた。
『え~~…まあ、そのなんでございます。…長々と皆様に可愛がられお世話になりました私でございますが、本日をもちまして、無事、退職の運びとなりました。つきましては、かねがねお世話になりました皆さま方へ、甚(はなは)だ高いところからではありますが、ひと言、御礼(おんれい)の言葉を述べさせていただきます。長らくの間、皆さま方のご高配に浴し、誠に有難く思うところでございます。…え~~』
 その後も、しばらく交番を去る名残りの挨拶をぺチ巡査は続けた。話し初(はじ)めは躓(つまづ)いたぺチ巡査だったが、どうにかこうにか無事、挨拶を終えた。冬陽の傾きは早い。ぺチ巡査が挨拶を終えた頃、公園内にはすでに夕陽が射(さ)し込もうとしていた。里山は椅子から立ち上がり、招待された猫達の後ろ姿を見ながらその話を聞いていた。
 その後、ぺチ巡査の退職送別会パーティも無事終わり、招待された猫達が思い思いに引き揚げると、里山と小次郎も公園から家へと戻った。
『これからは、ツボ巡査だけですが、大丈夫ですかね?』
 玄関へ入った里山に、小次郎が脊中越しに声をかけた。
「俺には猫社会のことはよく分からんが、なかなか気概(きがい)がある若猫に見えるがね」
 里山は靴を脱ぎながら小さくそう答えた。 
『ええ、頼りにはなりそうなんですが、今一、経験値が…』
「ああ、新任だからなぁ~、それはあるだろうが、そのうち馴れるさ」
『だと、いいんですが…』
 親身にはなっているのだろうが、小次郎には里山の言葉がやはり人ごと、いや、猫ごとに聞こえた。


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