水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <69> 言葉(ことば)

2019年02月07日 00時00分00秒 | #小説

 人々が意思を伝える手段として語るようになったのが言葉(ことば)だ。この言葉は世界各地に多くの種類が存在し、使われている。頭のよい人は数ヶ国語を自慢げにペラペラと話されるのだろうが、その他の国の人にすれば意味不明で、?…と、まったく要領を得ないだろう。^^ それほど世界各地には多くの言葉が蔓延(はびこ)っているのである。これは国単位ではなく、地域や民族単位で根づいている。この言葉を分析すれば、地球人類の明るい未来が開けるのでは? と、思えてくる。
 西暦3520年、地球上の言葉は、もはや不要となっていた。長い星雲旅行を終えた一人の男が生命維持装置により解凍され、永い眠りから目覚めようとしていた。宇宙船の窓に映る地球は旅立ったときと同じで青かった。地球に降り立った男は、人々の妙な変化に驚かされた。それは科学の進歩だけではなかった。語りかけても誰一人として話さず、指先で妙な装置を指さすのである。その装置は共通していて、人々はどうもその装置を通じて互いの意思を伝達しているように男には思えた。よく見れば、どの人の口も小さくなっていた。それは進化したようにも見え、退化したようにも見えた。男が星雲旅行に旅立ったのは西暦2150年だったから、時はすでに1370年も経ったことになる。ふと、男はそれに気づいた。
「言葉は、もういらなくなったんだ…」
 男は、ポツリと呟(つぶや)き、誰もが身に装着している装置を購入すべく出かけた。
 分析の結果、遥(はる)か未来の地球は、どうも言葉が不要になる可能性が高い。ただし、口が小さくなるかどうか? までは不明である。^^

                                 


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