人と人・・この繋(つな)がりが社会生活を始める第一歩となる。人と人は有史以来、言葉を交わすことで意思の疎通(そつう)を重ね、その輪を広げてきた。人と人の繋がりを分析すれば、「やあ、おはよう!」などと声をかけ合う軽いものから、「こ度(たび)襲名をば致しましてござりまするぅ~~。幾久(いくひさ)しく、お引き立て賜(たまわ)りまするよう、隅(すみ)から隅まで、ずずずい~~~ぃとぉ~! {チョンチョン!!}[拍子木(ひょうしぎ)の音] 御(おん)願い奉(たてまつ)りまするぅ~~! {チョンチョンチョンチョンチョンチョン…!!}[拍子木の音]」などと客に挨拶する歌舞伎の口上(こうじょう)のような重いものまで、多岐(たき)に及ぶことが分かる。最も軽い人と人の繋がりは、相手が見えない簡便な電話である。孰れ(いず)の場合でも、人と人が繋がる出発点であることは疑う余地がない。
とある町にあるテニスの練習場である。数人の部員が懸命(けんめい)に早朝練習をしている。
「やあ、おはよう!!」
「あっ、監督っ! おはようございますっ!!」
口々(くちぐち)に部員達が返す。ほぼ同じ言葉の返しだったが、一人だけ、妙な仕草で返す部員がいた。
「ははぁ~~っ!!」
その場に土下座(どげざ)してひれ伏す姿は、現代の人と人というより、目下(めした)の武士が時代劇でよく見せる殿様と家臣の会話に似通(にかよ)っていた。
「ははははは…お前は相変わらずだなっ!」
監督は笑ってその部員に返した。
「ははぁ~~っ!!」
部員は、ふたたび土下座した。
聞くところによれば、この挨拶をしないと、本来の力を出せないそうだ。縁起(えんぎ)を担(かつ)ぐ、いわばジンクスのようなものらしい。
分析の結果、人と人の繋がりにも、いろいろある・・という訳だ。^^
完