水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <74> 作業

2019年02月12日 00時00分00秒 | #小説

 作業・・ひと言(こと)で言える言葉だが、分析すれば、なかなか意味のある内容が秘められていることが分かる。そんなことはどうでもいいっ! 昼までにちゃんと、やってもらえれば、それでいいんだっ! と言われる方もおありだと思うので、先に済ませておいた。^^
 さて、その作業だが、始めるにはまず、材料、道具を準備することから始まる。これが、なかなか出来ない人が多い。出したのはいいが、どこへ置いた? と、作業を終えたとき探す人には困り果てる。消耗品ならまだしも、道具の置き場まで忘れて探す人がいるが、これはまったく感心できない。道具や材料をすべて元へ戻し、やっと作業は終了を見るのである。この点は作業をするにあたり、肝(きも)に命じてもらいたいものである。そういう私も、朝から探し回っていた。^^
 とある高校の校庭である。一人の生徒が懸命に何やら探している。放課後、陸上部の部活が終わった部員らしい。
「おいっ! 何を探しとるっ?」
 陸上部の監督が訝(いぶか)しげに生徒に近づいた。
「いやぁ~、コンタクトを…」
「コンタクト? …目の中へ入れるガラスかっ!?」
「監督、ガラスじゃないんですが…」
「… そんなことは、どうでもいいっ! いったい、どの辺で落としたんだっ!」
「ははは…それが分かれば苦労しませんよ」
「偉(えら)い余裕だなぁ~、お前。もう、そろそろ暗くなるぞっ! どれ、俺も探してやろう」
「ありがとうございますっ!」
 二人はグラウンドの地面上を探し始めた。
「だいたい、作業の心構えが出来とらんっ!」
「…作業?」
「ああ、作業だっ! 練習は作業なんだ。それを始めるには、まず準備が大事だ。お前の場合、まず落としそうなレンズを外してするところから始める必要があるっ! あるいはメガネを一つ、誂(あつら)えておいて、それに変えて始めるとか。まあ、見えれば裸眼(らがん)でやればいい訳だが…。そうすりれば、こういう無様(ぶざま)なことにはならん・・という訳だ」
 二人とも地面を探しながらの会話である。そのとき、一人の生徒が部室から走り出てきた。
「監督~~っ!! これ、落ちてましたっ!」
「馬鹿野郎!! それを早く言わんかっ!!」
 飛び出してきた生徒は、起こられた原因が分からず、キョトンとした。飛び出すときから手渡すまでの作業の準備不足である。正解は、こうなる。
「何か探してるんですかっ?」
「いや、こいつがコンタクトを落としたと言うんでなっ!」
「そうですか…。僕も探します」
「おおっ、悪いなっ!」「ありがとっ!」
 出てきた生徒は、手に持っていたコンタクト・レンズを地面から拾った仕草をする。
「あっ! これじゃ、ないですかっ!!」
「おお、そうだ…。よかったなっ!」「ありがとう!」
 これが、手渡す作業の正解である。^^
 分析の結果、作業は始めから最後まで気が抜けず、用意周到(よういしゅうとう)が大事・・ということに他(ほか)ならない。^^

                                 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする