最近、人々が個々に持っている独自性(どくじせい)という人間的な個性が無くなりつつあるという。そういう時代なんだ…といえばそれまでだが、少し寂しい気持もする。この独自性というものの本質を分析すれば、いろいろなことが分かってくる。独自性・・英語でアイデンティティ~とか言うそうだが、人々の各個に備わった特徴的な個性を意味する言葉である。囲碁や将棋が上手(うま)いからプロとして有名だというのも、その人の独自性である。普通の者では、そうはいかないからだが、独自性があるからといって、その人が偉(えら)いのか? と問えば、少しもそうではない。将棋も囲碁も知らない人々にすれば、?…でお終(しま)いの話なのである。^^
とある飛行場で偶然、知り合いになった二人の旅行客が言い争っている。
「いやっ、私の考えは違いますっ! 私は小さい鞄(かばん)で最小限の荷物で出かける派ですねっ! 特に、この時期はっ!」
「ほう! と、言われますと?」
「大きな鞄ですと当然、重くなりますわなっ!」
「はあ、まあ…。しかし、鞄に車がついとるでしょ?」
「それはそうですが、なにせ引き摺(ず)らねばならない! そうすると、汗を掻くことになる。汗ビッショリは嫌(いや)ですからなっ! ははは…つまりは、そういう理由です」
「なるほどっ! 少し変わってらっしゃいますが、独自性ですかな、ははは…」
「まっ、そんないいものではないですがな、ははは…」
笑いあった二人だったが、二人とも他の旅行客とは異質の光り輝く頭で、見事に禿げ散らかしていた。ある種(しゅ)の独自性である。^^
独自性を分析すれば、小さなものから大きなものまで、ものすごく多いということだ。^^
完