水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <76> 正解

2019年02月14日 00時00分00秒 | #小説

 1+1を足せば2となることは、3次元世界に生きる人々なら、お馬鹿でない限り、ほぼ誰にでも分かるだろう。それが、正解だっ! と言われれば、そうなんだ…と小学校の1年生なら肝(きも)に銘(めい)じることになる。^^ ところが、よくよく考えれば、この正解という定義は実に曖昧(あいまい)なのである。いったい誰がそう決めたんだっ! と開き直られれば、…? と、誰しも口篭(くちごも)ることだろう。そこで、この正解という定義を分析してみることにしたい。別にどうでもいいだろう…と思われる方は、適当に餅(もち)を喉(のど)に詰めないように食べながら寛(くつろ)いでいただくというのが、モチモチした、いつものパターンとなる。^^
 さて、正解を分析すれば、当然ながら不正解との比較となる。そんな一例のお話だ。
 とある衣料販売の店の中である。一人の客が困り顔で販売用に展示された一着の服を見つめている。
「お客さま、どうされました?」
 客の様子を遠目(とおめ)に見ていた店員が客に近づいて訊(たず)ねた。
「この服いいから、これにしようと思うんだが…」
「ええ、よくお似合いでございますよっ!」
「そうかい?」
「はいっ!」
「じゃあ、これに・・と、言いたいんだけどね。生憎(あいにく)、この前、来たときの値札(ねふだ)の額(がく)しか持ち合わせが無(な)いんだ。この額だと、昼抜きになるからなぁ~。普通は値下げするんだろっ?」
「はいっ! 通常は値下げをさせていただいております…」
「じゃあ、この服は?」
「この品は、当店の本店からの指示がございまして…」
「同じ服が、店の指示で値段が変わるというのは、どうなんだろうねぇ~」
「はあ…」
「この前の値段が正解だと思うけど、違うかな? 一度はあの値で売り出したんだからさぁ~」
「確かに…。いいでしょう! この前、展示させていただいた額で結構でございます」
「そうかい? 悪いなっ! それなら買うよ」
 客は以前に出されていた値札の額を支払い、服を買って去った。
 さて、ここでこの服の正解の価値は? ということになる。実(じつ)のところ、正解の価値は以前と同じなのだ。世の中の都合で1+1=1.8にも2.2にもなる・・というのが私達が住むこの3次元世界の姿で、実際の正解ではない訳だ。^^

                                 


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